目指すもの
代表取締役社長 大井建史
秋も深まり錦秋の鳥海山を愛でた後に、地元の契約栽培酒造好適米の新米が入荷し始めました。蔵人達も元気に勢ぞろいし、10月25日初蒸しが行われ、気合いっぱいで百四十二回目の酒造りが始まりました。
鳥海山の初冠雪が昨年より半月も早く、天気予測も暖冬で大雪に成る等いろいろ取り沙汰されていますが、今の所冷え込みも早いようです。
お陰様で今年もトータル的に、吟醸・純米酒は増産の計画です。本当に有難いことだと思います。ワイングラスでおいしい日本酒アワードとロンドン酒チャレンジで金賞受賞の「純米大吟醸 鳥海山」と、同じくワイングラスでおいしい日本酒アワードで金賞、スローフードジャパン燗酒コンテスト・プレミアム燗酒部門で最高金賞を頂いた「純米酒天寿」 それから限定流通の「縦書き鳥海山」も増産いたします。その他にも定番商品の品質向上の為に、新型の生酛仕込を試験的に応用実験を行いながら更なる進化を求めて仕込む予定です。
必要とされると言う事が如何に有難い事か…社長に成って十七年目、製造量が五分の一に激減していく経験をし、そのさなかも品質こそ選択の胆と信じて皆と頑張ってきましたが、未だに安定感は覚えません。酒蔵は必要とされないと無くなります。だからこそ飲んでいただくお客様、販売頂く酒販店様に必要とされる酒蔵であり続ける事。呑みたい美味しい酒と思われ続けるために「地元で出来る最高の酒」を目指して努力して参ります。
今後ともご指導ご鞭撻のほどよろしくお願い申し上げます。
百四十二回目の酒造り
杜氏 一関 陽介
朝晩の冷え込みが強く、日中との寒暖差が大きくなった矢島は木々の落葉も始まり、冬の気配を感じるようになってまいりました。昨年度の酒造りが終了した四月から早六ヶ月。本年度の仕込みがいよいよ始まりを迎え、蔵人メンバーが入蔵し、一気に蔵内が活気に満ち溢れています。また、約二十年間使用してきた蒸米機も先月から改良に出しておりましたが、使用する四日前に戻るという、ギリギリでのスケジュールでした。内心ハラハラしておりましたが、まるで生まれ変わったかのようにピカピカになって帰ってまいりました。設置後の調整を終え、昨年以上の蒸米に仕上がると思います。ご期待下さい!
造りの準備が始まる中で私は、昨年度の作業実績や酒質の反省を踏まえ、本年度新たにチャレンジする事や、効率的且つ安全に作業を進められるように黙々と作業計画を立てています。会社と相談して決めた製造計画を実際に造りの現場で実現する為に、具体的な計画にするのは結構な仕事量です。ただ、ここを疎かにするとスタートから躓くことに繋がり兼ねません。
杜氏の仕事は、社長の求める酒を実現する事。その為には杜氏としての「統率力」・「判断力」・「管理能力」。具体的には、
・蔵人を率いて目的を達成できる事
・技術面のエキスパートである事
・安全な作業環境を作れる事
これが杜氏としてあるべき姿であると私は思いますし、今立てている計画の中に自分がこれまで得てきたスキルをすべて注ぎ込まなくてはならないと考えています。
毎年の事ながら、今年も仕込み一本目から搾られるまで私のドキドキは止まりませんが、前述の三つの事を胸に刻み、社員全員で良質の製品をお届けできるよう、努力致します。まずはこの想いの詰まった計画で生まれる十二月の初しぼり。是非ご期待下さい!