吟味して醸す
代表取締役社長 大井建史
明けましておめでとうございます。旧年中のご愛顧に心から感謝申し上げます。
天寿の酒蔵では年初めから大吟醸の仕込が始まります。お陰様で昨今は純米大吟醸を含む大吟醸クラスの仕込数が増え、蔵人達の緊張が高まる酒造りが続きます。中でも全国新酒鑑評会出品酒の仕込ともなると、技術的な挑戦も加わるため、杜氏の号令のもと一丸となり、その年の集中のピークの時になるのです。
酒蔵は昔から吟醸造りにこだわって来ました。蔵の持つ最高の技術を発揮し、新しい技術的挑戦をする機会を毎年持つ事。これこそが日本酒史上最高の品質を作り上げた基だと思います。現在のような高精米は縦型精米機が出来てから可能になりました。全国にその精米機が普及したのは昭和に入ってから、思う存分高精米に挑戦できるようになったのは、戦争もあり昭和四十年代から一般的には五十年代に入ってからだと思います。
弊社は昭和四十七年から大吟醸の販売を開始しましたが、これはかなり早い方だったようです。さばけの良い蒸米を創るために無理な加熱で釜を割ってしまったり、米の統制時代に精米歩合を上げるために密かに米を買い足したり、吟醸香を出すため低温で酵母を攻めすぎて発酵が止まりタンク丸々一本ダメにしたりと、日本酒業界をあげて努力して参りました。私自身も過去に品質基準に達しなかった三本の大吟醸を、残念ながら本醸造(旧一級酒)にブレンドしたことがあります。自戒として強烈なインパクトが残った経験でした。
この頃、吟醸酒を「香りの有る酒」と表現する人がいます。その中には「生酛・山廃の純米こそ味わいの酒」と短絡的な考えで、吟醸は香りの出る酵母を使えば直ぐ出来ると思慮の浅い発言も見受けられます。ワインに例えるとどちらも素晴らしい酒なのに「赤ワインこそが本物で、白ワインは簡単でとるに足りないものだ」と言っている様なものです。日本酒の雰囲気がやっと良くなってきた気配が感じられるのに悲しく思います。
吟味して醸す究極の「大吟醸」を目指し、仕込(原料米・精米・浸漬・蒸米・酵母・酒母・麹・もろみ・上槽・火入れ・貯蔵)全ての細かい違いに血眼になって研鑽をかさねてきました。だからこそ全ての酒造りで使われる今の技術が出来、今の酵母が出来、今の味わいがあるのです。
日本酒に対する深い愛と理解を持って頂けるよう、微力ながら尽力して参ります。
今年もよろしくお願い申し上げます。
五造り目を迎えて
杜氏 一関 陽介
あけましておめでとうございます。旧年中は大変お世話になり誠にありがとうございました。今年も美味しい日本酒をお届けできるよう製造メンバー一丸となって頑張る所存ですので、何卒ご指導ご鞭撻の程宜しくお願い致します。
さて、前号では設備の更新により少し準備が遅れハラハラのスタートを切ったというようなお話を致しましたが、それから早いものであっという間に二ヵ月が経過してしまいました。平成二十八年度産の原料米は溶けが悪いという予測でしたので、新酒しぼりたてに関してはしっかりと味が乗るようにと考え仕込みを行いました。ご賞味いただけましたでしょうか?
私としては予想以上の米の難溶性に苦労し、仕込み開始時に頭で想い描いていたものよりキレイでスッキリと仕上がったという印象を受けています。それでも純米吟醸酒はキレよく華やかで、純米酒は爽やかな酸味と旨味の程良いバランスが表現できたと自負しておりますので、まだ飲まれていらっしゃらない方は是非お試しくださればと思います。
蔵の中はというと、既に仕込みは中盤戦に突入しており、間もなく最高峰である鑑評会用の大吟醸の仕込みも始まります。米の浸透方法が変わった事で造り序盤は吸水時間等に少々戸惑ったものの、会社から新設していただいた蒸米機に替わった事で外硬内軟で安定した蒸米になっていると感じています。天寿に入荷する原料米すべてが契約栽培米であり、一粒一粒に想いのこもった米を如何に良い酒にするかを蔵人全員で考え前に進もうと思います。
前にも書いた覚えがありますが、日本酒は人(私達)が造って人(お客様)が飲む物です。商品には私達の想いが良くも悪くも必ず反映されます。私達が米農家さんに感謝して毎日の酒造りを切磋琢磨し、飲み手の気持ちになって楽しんで造る。美味しい酒にはそれが必要だと感じていますし、その為に杜氏として良質な酒を醸す事は当然ながら、毎日の仕事の中でより良い商品にする為に相手を尊重し意見を出し合い向上しようと皆が努力するチーム作りが重要と考えています。
毎年同じ気持ちではありますが、残り約三ヵ月の酒造り。真剣に、また楽しい酒造りを心掛け、皆様に飲んで楽しんでいただけるような伝わる酒を目指し努力する事をお約束して新年のご挨拶とさせていただきます。





