希望
代表取締役社長 大井建史
秋田も梅雨に入り田んぼの稲も徐々に背が伸び、鳥海山を中心に緑濃い季節となってまいりました。
今年も海外で開かれる最大かつ最難関のコンテストと言われるインターナショナル・ワイン・チャレンジ(IWC)の審査が行われました。本年は日本酒審査部門の十周年と言う事で山田錦の産地・兵庫県が誘致し、ロンドンから神戸へ審査会場を移しての開催でした。
弊社では純米酒の部の「天寿 米から育てた純米酒」金賞 秋田トロフィーを先頭に「大吟醸鳥海」「天寿大吟醸」が銀賞、「天寿純米大吟醸」「純米大吟醸鳥海山」が銅賞とお陰様で五点が入賞致しました。今年のお酒も評価を頂き安堵しております。
また、商品の審査ではありませんが、国内で最も古く権威の高い全国新酒鑑評会入賞酒の一般公開が行われる、日本酒フェア(於サンシャインシティ)に今年も行って参りました。入賞酒一般公開は今年も沢山の方が来場されており、酒蔵関係者以外の方々の参加も多く有り難いことだと思いました。
一方、併設で開催されている各県や団体などがPRの為に出店している日本酒フェアも大変な人出で、始めた頃の人集めに必死だった事など想像もつかない活況でした。日本全国、各県の各銘柄の皆さんがとても元気で、業界として大変有り難い事だと思いました。我々世代が苦闘していた、ひたすら落ち込む明りの見えない時代に、お酒の本質を伝えきれなかった事を自分達の責任と考え、自分の銘柄を売り込む前に日本酒の魅力とその姿をひたすらアピールする事に尽力しました。こうして地盤を固めた上で個々に品質の向上に取り組み、その成果を全て公開しながら、業界の発展を目指して来た世代にはまぶしい感じがいたします。
これ程改善例を社秘にせず、非常に判りやすく開示されている業界も珍しいと思います。何よりも違うのは今までの「良いものを造っても売れるとは限らない」と言う状況からSNS等情報ツールの発達や個人の発信力の増大等により「良い酒を造れば売れる」と強く思えること。輸出面でも可能性を疑い、売れない期間と経費の心配をしながら出かけた時代から、「頑張れば売れる」と言う確信を持って挑戦できる事が、如何に業界の元気の元になっているかと言う事です。理解してくださるお客様がいると言う事が如何に幸せな事か痛感しております。
皆様のご期待に応えるべく、只今も次の造りの品質向上・品質安定の為の仕込計画・設備更新を進めております。
今後ともよろしくお願い申し上げます。
『伝える』
杜氏 一関 陽介
梅雨に入り、ジメジメして天候の冴えない日が続いておりますが、皆様如何お過ごしでしょうか。蔵内は新酒の貯蔵作業も終わり、いよいよ夏の商戦へ向けて出荷準備に追われているこの頃です。非常にありがたい事に日々の作業が追い付かない程のご用命をいただき忙しい毎日ではありますが、商品が出荷されていく楽しさや自分達の造った商品を飲んでいただける嬉しさを当たり前と思わず努力して参りたいと思っております。
話は変わりますが、皆様は酒蔵を見学された事はありますでしょうか?天寿酒造では通年酒蔵見学を受け付けており、平日のみならず土日・祝日もご予約を頂ければ対応致します。ご家族連れやグループで、また各種研修やお取引先、取材の方々を含めると大変多くのお客様にお越し頂いております。大半は私を含め製品課員がご案内致しますが、それ以外の社員がご案内する場合もございます。ですから必ず正確に伝えなければならない事(会社の歴史や製造工程等)以外は案内人によって説明の仕方は多少異なります。その人が酒造りの現場で実際に体験した苦労話や、やりがい等を自分の言葉で伝える事が大切と考えます。それは私自身も工場見学が好きでお客様側の立場になる事がよくあるのですが、全てマニュアル化された案内はどこか心に響くものが無く感動を覚えないからです。
弊社では約1時間の見学時間を設定致しております。短時間ではありますが、自分達がどういう気持ちで酒造りに取り組み、商品にどういう背景があるのかをアピールさせていただけるという私達にとって最高の場です。ですから私達にはそれを完全にお客様に伝え、且つ楽しんでいただく義務があると考えています。「単なる説明」ではダメということです。
私は入社3年目頃から蔵見学を受け持つようになりましたが、今まで沢山の方にお会いしました。お客様によって利き酒したい・話を聞きたい等いらっしゃる目的が若干違うような気が致します。しかし、わざわざ弊社へ来ていただいているのは皆様同じですので、そのお客様にとっても、楽しんでもらえるように自分達に何ができるかを考え「また来たい」と思ってもらえるような楽しいひとときを提供したいと考えています。
人に物事を伝える事は大変難しい事だと実感していますが、これからも印象に残る説明と心に染みる日本語をご準備してお待ちしておりますので、初夏の鳥海山が綺麗な矢島まで是非足をお運びください!