祈り
代表取締役社長 大井建史
この度の九州地方の大震災に対し、衷心よりお悔みとお見舞いを申し上げます。
ニュース映像や新聞で被災地の様子を見るとどうしても5年前が思い出されました。3・11のあの日、私は輸出の仕事で香港に向かう飛行機の中でした。到着後ホテルのテレビで津波の映像に驚愕しながら、必死で電話やメールに挑戦しました。通じたのが意外にも携帯メールで、ガラ携の電話で家族・社員・会社の無事を確かめ、停電中の為蔵人と管理職以外は自宅待機を命じ、その他色々な指示をピコピコと一生懸命に入力した事を思い出します。3日後にたどり着いた羽田空港は、電気を落とし薄暗くて肌寒く売店にも食糧類はあまり並んでいなかったことを思い出しました。家にたどり着いた時、妻や子供たちの不安そうな顔が私を見て少し安心してくれた事と、携帯の警報音や余震で眠れぬ夜を過ごした記憶が蘇ります。
今は只、1日も早く地震が鎮まる事と、地域の復興が始まる事をお祈り申し上げます。
矢島の里は桜が5分咲きとなりましたが、気温が突然1℃まで下がったり大風が吹いたりと中々に異常な気象が続き、この通信の届く4月末には桜の花が残っているか心配です。うまく行きますと5月の連休が桜満開と成る年も有るのですが…。
お陰様で昨年より数本の増産で、季節社員の蔵人は一応予定通り15日に解散をしましたが、静寂を迎えるはずの酒蔵内は、まだまだ盛り沢山の作業に社員蔵人が忙しく仕事に励んでいます。
天寿では吟醸の文字が付いたお酒は全て瓶火入れ冷蔵貯蔵をしておりますので、3月20日に竣工した冷凍冷蔵倉庫にたっぷりと貯蔵しております。製造工程の最終部分の設備投資から始めましたので、何時までに出来るかは別として、いよいよこれまで我慢せざるを得なかった「連動する設備投資」を計画しはじめました。
蒸米のさらなる改善の為に、混入物質があると言われるボイラーの蒸気が一切直接入らず、100%間接蒸気となる古来からの和釜の蒸しを現代型にした蒸米機の導入。それに伴う釜場の改築。気温が上がっても菌汚染されない様に槽場の断熱と省エネ蓄冷機を使用した冷蔵化等々山積みですが、一つ一つ進んで参ります。
私が社長になった時に決めた方針全ては「地元で出来る最高の酒を目指す」為に!!
今年醸しました弊社のお酒がこれから続々と発売されて参ります。ご期待ください。
今やるべき事
杜氏 一関 陽介
4月5日に甑倒しを迎え、今年度の仕込みが終わりホッと一息。蔵人全員が健康で、事故もなくこの日を迎えられたことが何より嬉しく、長かった酒造りへの達成感でいっぱいです。とは言え、春が来て一気に暖かくなり、残っている醪や製成酒の品温管理に頭を悩ませております。
そのような中、4月12日・13日に東京都北区で行われた日本醸造協会主催の清酒製造技術セミナーに参加してまいりました。全国から技術者が集まり、今年度の酒の傾向や反省点についての意見交換や、新しい技術についての講義を受けました。仕込み期間が終わったばかりの私にとって、自分達が半年間取り組んできた事の反省や来年に向けて考えるべき課題は何なのかを見つめる良い時間を過ごすことが出来ました。思い起こせば、原料処理を向上させる為に、その肝である甑(米を蒸す機械)の修繕と改良を会社からしていただけることになった昨秋。仕込み開始数日前ギリギリに設置が完了し、仕込みが計画通り開始できるのかハラハラとした今期のスタートでした。来年度はそのような事にならぬよう、「何が良くて何がダメだったのか」「来年度の課題は何なのか」を今からしっかり考え、スムーズなスタートを切れるようにしていきたいと考えております。
4月15日を以て製造に関わる蔵人メンバーは解散を迎えましたが、年々増える特定名称酒の瓶火入れ作業の為に製造部総出で土日もフル回転状態です。これもすべてお客様に満足していただける商品作りの為であり、また酒造りができる私達の楽しさや喜びに変わると思えばありがたいことです。例年より少し早く矢島の桜も開花し、花見シーズンが終わると共に、夏向けの生酒商品も続々と発売になります。来年度に向けて今やるべき事を必死で考え取り組み、併せて皆様に安心して飲んでいただけるよう万全の品質管理で臨んでまいりますので、どうぞ宜しくお願い致します。