暖 冬
代表取締役社長 大井建史
二月十三日の天寿蔵開放には多くのお客様にご参加いただき誠にありがとうございました。今回の受付は二千二百人に達し、特にお昼前後は満杯状態となり、様々なご不快をお掛けした事も有ったかと存じます。ご意見をお寄せいただき改善して参りますので、宜しくお願い申し上げます。
今年の暖冬は凄いです。雪解けの一番早い子吉地区ではありますが、三月の中旬に土が出るのですが、例年であれば厳冬期と言える二月の初めに土が出ていました。一時的にとは言え記憶にない現象です。除雪も非常に楽なのは良いのですが、蔵内温度の低温での安定が図れず、どうしても電力を使って機械で冷やす事が必要になります。
二年前に設備した夜間低額電気を使用した蓄冷型省エネ設備が大活躍しています。
秋田には冷蔵・冷凍倉庫業がほとんど無い為、生酒や瓶火入れしたお酒の貯蔵庫を自前で確保しなければなりません。その為今年は、製造計画分のお酒の貯蔵用に瓶貯蔵用冷凍・冷蔵倉庫を新設中で、工期がずれこみ雪中での工事を心配しておりましたが、これまでの所は暖冬の御陰で除雪負担も少なく順調に工事が進んでいます。
資材の高騰や人材不足で、建設費が非常に高くなっているうえ、冷蔵庫自体の壁は本来屋外用で囲いは要らないのですが、矢島の地は積雪が一メートルを超えるので囲う倉庫が必要になるのです。雪が降らない又は少ない地域では工事費が五分の二で済むのです。豪雪地帯ならではの非常に頭の痛い現実です。
それでもご愛顧頂いております「純米大吟醸鳥海山」をはじめ、瓶貯蔵商品の品質保持・品質向上・ご予約数量確保の為に建設に踏み切りました。
この所、純米吟醸系の冷やで美味しいお酒がご注目を頂いて参りました。天寿には燗酒コンクールで最高金賞等を頂いた「天寿純米酒」等、吟醸以外の常温や燗も美味しい自慢のお酒もあります。しかし、さらに進化を求めもう一つ上の美味しさを目指して、ここ三年程秋田県醸造試験場と協力しながら新型の生酛系酒母の研究をして参りました。遠くない将来に新しいご提案が出来るものと、ワクワクしているこの頃です。
常に「もう一つ上の味わい」を目指して今年も挑戦しております。酒蔵では大吟醸のしぼりが続き、二月の末は一関杜氏を先頭に蔵人一同が大わらわです。
是非ご期待下さい。
酒蔵開放を終えて
杜氏 一関 陽介
全国的に暖冬と予想された今年の冬でしたが、弊社のある矢島町もいつもより雪が少なかったように思います。例年この時期になりますと蔵内では鑑評会出品用酒を搾るのですが、気温がこれ以上あがらないよう願うばかりです。とは言っても自然には勝てませんので、自分達の技術と冷蔵設備を駆使し、ここから3月31日までの約一か月間は外気温に細心の注意を払い、徹底した品温・品質管理に努めて参りたいと考えております。
去る、2月13日に毎年恒例となりました酒蔵開放を開催し、二千人を超えるお客様にご来場いただき誠にありがとうございました。
弊社では蔵開放当日、酒造りに携わる蔵人がお客様を蔵の中に案内する企画がございます。昨年までは酒造りの現場(工場内)を入場者全員が自由に入退場できるスタイルをとって参りました。しかし、安全面(タンクへの転落防止など)や衛生面(商品への異物混入防止など)の観点から本年度より入場時間・人数・見学場所を制限し、案内人(蔵人)の目の行き届く範囲での企画とさせていただきました。食品を製造するメーカーとしては今までやっていなかったのが不思議な位当たり前の事。皆様にも理解していただけると思います。 ただ、数時間に二千人のお客様が来るわけです。見学時間・人数も先着順にしてしまったことで、「本当に蔵の中を見たかったお客様をご案内できなかったのではないか」「面白くない思いをしたお客様がいたのではないか」と感じた一日でした。実際、運営に関して当日多くのお客様からご意見を頂きました。貴重な御意見ですので、必ず次回に活かしていければと考えております。
これは一例で、毎年酒蔵開放は沢山のお客様がわざわざ矢島まで足を運んでくださる一年に一度の行事です。私は皆様に楽しんで帰っていただき、また来年も来たい!また天寿を飲みたい!と思ってもらいたい。その為には魅力的な企画や美味しいお酒を提供していくことが当然と考えています。今年の反省をふまえ、何を求められているのかしっかりと考え、来年は更に良いものになるように改善していければと思っております。最後に、これからの季節、出会いや別れ・花が咲く頃には、お酒の席も増えるでしょう。その際は是非、天寿・鳥海山で乾杯していただければと思います。様々な場面で皆様にご利用いただける商品を目指して、残り二か月の酒造りに励んでまいります。