発刊にあたって
専務取締役 大井建史
この度、日頃お世話になっている皆様に、私共天寿酒造がなにを考え・守り・求め・挑戦しているのか、その思いをお伝えし、御理解いただくために、稚拙ではありますが「天寿蔵元通信」として、お送りさせて頂くことになりました。
そのお酒はどのような狙いで造られたものなのか、季節や旬の食べ物に合うお酒・また飲み方は、そして鳥海山の登山口でもあるこの矢島町の様子や蔵の様子など、皆様が自分の酒蔵として親しみを持ち、お仲間にお話し頂けるような内容にするべく努力してまいります。
お気軽に、ご意見やご希望をお寄せ下さいますようお待ちしております。
蔵に活気
専務取締役 大井建史
十月二日、蔵元に新米が初入荷しました。依頼、着々と酒造りの準備は整い、今の時期もろみ仕込みの前段階である酒母仕込みが続いています。
今年の仕込み本数は大小合わせて102本を計画していますが、これまでにも増して要望の多い吟醸酒、純米酒等の比率が高まっています。これに加え今年は同じ精米歩合でも明らかに酒質の向上が確認された扁平精米(原料米の厚みを薄く削る精米方法)での仕込みや、マル秘新商品の仕込み等、盛り沢山の内容となっています。
夏の間に、昨年の造りシーズンに気になっていた釜場周りの床改修や導線の改良などをはじめとする細かな修繕や造りの検討を行い、昨年以上の酒を目指す為、準備してきました。
これまでも、小さな改善の積み重ねが酒質の向上へと繫がることを信じて歩んできました。
日本酒の消費動向を省みれば、絶対量は減少していても美味しいものを適量飲むという要求がますます強まっていることを感じます。
お客様の期待に応えるべく、今年も天寿の蔵は動き出しました。
地域と共に
思い
思いを込めること、それは・・・
希望であり、愛することであり、重い責任である。
私たちは、妻や子供を思い、生まれた町を思い、自分たちの人生を思い、仕事を思う。
酒屋の人間は、農家と似ている。
種籾を思うように原料米を思い、稲を思うように麹や酒母やもろみを思い、収穫を思うようにしぼった酒の出来に一喜一憂する。
それも、希望を持ち、愛し、責任を持って、
思いをこめるからこそである。
「製品に誇りを、顧客に感謝を」を、社是として来た。
製品に誇りを持つと言う事は、自分たちの仕事に誇りを持つと言うことである。
酒屋の表現は、一に売り出す酒の力のみである。そこに、まやかしやごまかしなど以ての外であり、自分が仕事に対し常に向上心を持ち続けているかという事である。
顧客に感謝をすると言う事は、我々は、その人たちに生かされていると言う事を肝に命じる事である。
「ありがとう」と言う言葉の意味は、有り難い(あるはずがない)嬉しい事が起こったから、心を込めて言う言葉と聞いた。
「誇りを持ってした仕事がお客様に評価され生かされる事に感謝しましょう。」と、言う事だ。
我々は、「ありがとう」と言う言葉を、日に何度使うだろう。
お電話を頂いてありがとう
ご来社頂いてありがとう
ご注文頂いてありがとう
蔵を見学頂いてありがとう
手伝って頂いてありがとう
ガンバッテくれてありがとう
本当に思いを込めて言っていますか?
我々は、生まれた町に、誇りを持っている。
独立した長い歴史を持つ町、優れた人材を生み出す町、そして、我々が、誇りを持って造る『天寿』がある。
120余年の伝統を持つ我が社も、その時代々々に変革をして来た。
先人の残してくれた知恵を生かしながら時代にあった革新をしてきたからこそ、歴史を積み重ねる事が出来たのだ。
今の時代、わが町が誇れるものは、すばらしい大自然、そして田園である。
その中で『天寿』が、日本国中を相手にも勝ち残る為には、その有利さを最大限に活用することだ。
酒屋は、大昔から農家と共存して来た。
米がなくては、酒は造れない。
今、米造りも生き残りをかけて頑張らなければいけない時に来ている。
農家が生き残れなければ、我が町は消えてしまうだろう。
これからの酒屋に求められるのは、造り手(素晴らしい米で素晴らしい酒を造り出す人たち)の思いが伝わること、さらに売り手(自分が出向き、直接お客様とふれあいながら、あるいは電話で顔の見えない人と話をしながら、「天寿」に込めた思いを伝える人たち)と飲み手の思いが通う関係を早急に造り上げることだ。
その関係を築き上げる事が出来れば、共に歩めるはずだ。
何故なら、テクニックなどではなく思いが問われる時代だからだ。
社員一人一人が、これからの需要の進化に対応すべく、常に自己改革を重ねて、次の時代にも選択される企業になる為に、お客様の喜びを目指し、自分の仕事に使命感を持って共に新しい時代を築き上げよう。