栄誉
代表取締役社長 七代目 大井永吉
この度秋田県清酒品評会において吟醸酒の部・秋田県産米の部において県知事賞の中のトップである首席をダブルで受賞いたしました。秋田県でのダブル受賞は11年ぶり3回目の記録で、天寿酒造・一関陽介杜氏が樹立いたしました。大変な栄誉を賜り育てて頂いた皆様に厚く御礼申し上げますと共に、一関杜氏のこれまでの研鑽と蔵人一同の努力に心から感謝いたします。
2022年の生酛純米に続き大変光栄なことに、2025年クラマスターの古酒部門1位となる審査員賞をいただき、9月20日からパリの在フランス日本大使公邸での表彰式に行って参りました。この賞については前号でご紹介しましたが、パリソムリエ協会が審査員の母体となるクラマスターは、昨今の各国で行われる日本酒コンテストの中でも受賞の傾向が違います。料理とのマリアージュが大変重視され、味の幅や奥深さに注目度が高く、ホテルリッツのヘッドソムリエ フロリアン氏とも醸造酒の長期熟成酒であるシェリー・マデイラ・紹興酒の良い物には日本酒の古酒と共通のニュアンスがあり、時間だけが創ることのできる価値にも注目しているとのお話を頂きました。大変興味深く今後の古酒の可能性に胸を膨らませて参りました。
受賞蔵の希望者が参加したボルドーワイン見学ツアーでは、世界最高峰の貴腐ワインの造り手であるシャトーディケムを見学し、見識とプライドを学ばせていただきました。正に品質へのこだわりはすさまじい物があります。土地の環境・ブドウ畑へのこだわり・迷いのない作業・取らないこと捨て去ることへのプライド。ここにたどり着くまでにどれ程の苦悩があったのだろう…と。
イケムは100年の熟成が出来ると断言できる歴史。栄誉は我々のこれまでへの誇りではあります。しかし、物造りの中の酒造りという小さい部門にも、何とはるかな道があるのでしょう。おもしろい! さぁ 挑戦しましょう!
天寿196回目の酒造りが、本格的にスタートしました。
戒驕戒躁
杜氏 一関陽介
令和七年度秋田県清酒品評会において、秋田県産米の部・吟醸酒の部両部門で秋田県知事賞首席を受賞いたしました。分かりやすく言うと両部門で第1位です。そして天寿酒造初の快挙です。本当に今のチームで酒造りができることを誇りに思います。
口に出してはいませんでしたが、令和二年度に同品評会の吟醸酒の部で初めて首席をいただいた時から、いつか同時に両部門首席受賞を達成できる時を夢見て酒造りに勤しんでまいりました。あれから5年、杜氏13年目の酒で実現することができました。何よりも天寿の酒造りの技術の証明ができた事に胸が熱くなる想いです。
ありがたいことに過去国内外の様々なコンテストで沢山の賞をいただいてきましたが、私個人としては、やはり地元の品評会で高評価を得ることは特に嬉しいですし、全国新酒鑑評会でも好成績を誇る秋田の高品質な酒が並ぶ中でいただくこの1位だけは、何にも代え難いものがあります。この賞に恥じないよう、また驕ることなく今まで以上にひたむきに酒造りに向き合う所存です。
さて、喜びに浸っていたいところではありますが、酒造りの現況を少し話したいと思います。10月16日現在、収穫を終えた新米も無事納品され、精米、麹作り、酒母仕込みまで進んでおります。もう数日でもろみ工程に入り、順調に行けば11月中旬には新酒が搾られる予定です。
肝心の原料米については、9月号で7月の極端な高温少雨の話をいたしましたが、文章を書いた翌日から雨が降り続き、そこからお盆まで、1日の平均気温が3~4度ほど下がるなど異常気象が続きました。ちょうど米の品質を左右する出穂後の登熟期にあたってしまった為、異常気象がもたらす品質への影響が心配されますが・・・まだ全容をつかめていないので詳しくは次号にて。
何より今年度1番のトピックスは米価の上昇ではないでしょうか。私は造り手なので価格についての話はここでは控えますが、価格がどうであれ今まで通り農家さんに育てていただいた米を大切に使用し、微生物の力を借りて美味しい日本酒を造るという使命は変わりません。米に限らずあらゆる物の価格が上昇しておりますが、お客様にとって飲んで満足できる、また飲みたいという欲求が湧く商品を造りたいと常々思っています。そして、既に今年も昨年と同じメンバーで酒造りがスタートしていますが、一つ一つの作業に心のこもった丁寧な酒造りを志します。沢山の賞をいただけるのも日頃から愛飲いただいているお客様がいてこそ。酒造りに関わる全ての方への感謝を胸に杜氏14年目の酒造りに挑みます‼





