ご挨拶
代表取締役社長 大井 建史
新年おめでとうございます。
天寿酒造通信も、第二号を発行させて頂く運びとなりました。
酒蔵では、新年に入った現在、杜氏の威信をかけた大吟醸の仕込みの真っ最中で、造り蔵全体に清々しい緊張感が満ちております。
今年は、全ての酒の造り方を見直しており、精米の仕方(偏平精米を含む)・洗米・酵母選定・麹・酒質タイプなどをより鮮明にさらに向上させながらも、「あくまでも天寿らしいお酒を」、と蔵を上げ頑張っております。
昨年の米の作柄は、秋田県でも最も良い米の出来る地域であるにもかかわらず、一等米比率20%強と言う近年にない厳しい状態でありましたが、天寿酒米研究会は特上を含む99%が一等米以上と言う大変優秀な成績でした。しかし、それでも例年に比べますと高温障害(秋田県観測史上二番目の長期にわたる猛暑)の影響を受け、大変脆い米質となり精米や洗米時に異常に砕けやすく、緊張を強いられる状態が続いております。
現在、創業百二十五年目の天寿酒造ですが、昨年十一月二十三日には、六代目 大井永吉の「この厳しい時代だからこそ、若者の発想と行動力を」との思いから、経営陣の若返りを図り、私が社長を仰せつかりました。この思いを問われる時代に、六代目の思い・私の思い・社員全員の思いを、いかに皆様にお伝えするのか、又、皆様の日本酒に対する思い・天寿に対する思いに、いかにお答えして行くかが私の仕事と肝に銘じ、鋭意努力して参る所存でございます。
本年の皆様のご多幸をお祈り致しますと共に、私共への益々のご指導・ご鞭撻をよろしくお願い申し上げます。
蔵人のページ
吟醸酒の仕込み始まる
雪混じりの寒風吹く十二月一日、美山錦大吟醸の仕込みが始まりました。(山田錦大吟醸の仕込みは一月)
大吟醸の原料米は、蔵人の(もろみ担当)土田邦夫と(酒母担当)佐藤博美が栽培した美山錦。精米歩合40%まで磨き上げ4本仕込みます。アイガモ農法や社員総出の除草で無農薬栽培した美山錦は「ふりかえれば鳥海」、「矢島物語」としてそれぞれ精米歩合50%と55%まで磨き上げられ仕込みます。さらに、もう2本(開発コード1010)、未発表の◯◯吟醸酒「◯◯◯」用に仕込みが行われます。(精米歩合とは、精米後残った部分を%であらわします。例えば玄米を40%精米し、60%残った場合は精米歩合60%と言う。)
私たちが普段食べているご飯は7~8%、上白でも10%の精米(精米歩合90%)ですが、吟醸酒は、原料米をきわめて白く精米し、お込めの中心のより純粋な部分だけを使用する為、繊細で、緊張感を持った手作業が続く中、杜氏を初めとする蔵人の技が、すっきりした上品でふくらみのある味を醸し出すのです。
原料である米、米麹の白米総量の事を一仕込みの大きさと呼びますが、天寿の場合、蔵人が最も細やかな管理を行う事が出来る750Kgを選択しています。大手とは異なり、天寿最大の仕込みでも2000Kgです。その約三分の一の小さな仕込みですが、この750Kgを仕込む為に180Kgを超える玄米が使用され、およそ100時間の精米時間と秒刻みの米洗い、五十日を超える発酵期間を通じて杜氏、蔵人の総力の下、吟醸酒が誕生するのです。
吟醸酒とは本来、その蔵元と杜氏と蔵人が持つ最高の技術を試し、その向上を目指して挑戦され、販売されることのなかった技術開発の酒であり、まさに今、天寿の蔵人達はその誇りにかけ、お客様に喜ばれる酒の為、一生懸命頑張っております。
製造係長 佐藤俊二