一意専心
代表取締役社長 大井建史
世間を騒がせた大型台風19号も、矢島の里は被害無く通り過ぎました。稲刈りも台風前に概ね終了し、量は例年より多い感触ですが、秋田の醸造試験場の先生は「今年の米は成長のバラつきが大きいため、割れやすく非常に溶ける可能性が高い。」と予想しております
山田錦の方は先月末に契約栽培の秋田村を原料米対策委員長として視察して参りましたが、その時点までは大変順調でした。「問題は台風…。」と言っていたのですが、稲刈り前に18・19号と大きいのが二つ来てしまいました。古い品種で茎が長く倒れやすいのです。被害が大きくなければ良いのですが…この時期は心配が絶えません。
秋田県最年少杜氏である一関は、非常に溶けない一年目、平年よりやや溶ける二年目、非常に溶けやすい予想の今年と、三回目の造りも前途多難と思われます。
前号発行後にロンドン酒チャレンジの結果発表がありました。
日本酒を扱う海外の飲食関係者がお客様に安心して勧められる高品質な日本酒を決める品評会です。ロンドン酒チャレンジの審査員は、世界で活躍するプロのソムリエたち三十四名で、内日本人審査員は二名、判定項目には風味の他にも洗練度や包装が含まれる珍しいコンテストです。
弊社は「大吟醸鳥海」金賞・「純米大吟醸鳥海山」銀賞・「天寿純米酒」銅賞という結果でした。インターナショナル・サケ・チャレンジに続いての受賞、誠に光栄の至りです。
杜氏とは盆過ぎから百四十一回目の酒造りの計画を検討して参りました。呑切りの結果も良く検討し、前回の試みは有効だったのか・選択した酵母は予想通りの味わいを生み出してくれたのか・熟成は順調なのか・新商品は期待通りの出来だったのかと細かくチェックいたしました。地元の主力商品精撰(旧二級酒)は品質改良も頑張り、賞も頂いているのですが、県内精撰のご多聞にもれず中々厳しい結果でした。しかし全体で見れば、お陰様で若干の増産をする事と成りました。機械の整備も終わりいよいよ酒造りが始まります。
本日(十月十四日)季節蔵人第一号が入蔵し精米を開始いたしました。蔵人で米作りの先生佐藤博美氏(新幹線のトランヴェール十月号に一緒に載りました)の美山錦です。初蒸しは二十七日の予定です。
百四十一回目の酒造り。四股踏んで頑張ります。
今季もよろしくお願いいたします。
百四十一回目の酒造り
杜氏 一関 陽介
最低気温が十度を下回る日が増え、鳥海山の紅葉も一段と色づき秋深まってまいりました。大型の台風が頻発し、連日の被害が報道されており酒造用原料米の品質にも影響があるのでは…と少々心配な状況です。
天寿酒米研究会産の米に関しては、十月十日頃には刈取りが終了し新米の入庫が始まりました。冬期蔵人メンバーも収穫期を終え、既に入蔵しています。精米所では美山錦の精米を開始し、米の香りが所内に漂い、いよいよ本番!といったところです。
弊社では「酒造りは米作りから」始まるという考えの下、天寿酒米研究会の農家の方が出来る限り最高の品質を目指して育てた米を今度は造りの現場でしっかり観察し、商品イメージを膨らませます。「どの米をどういう酒に仕上げるのか」を想像するための非常に重要な工程が精米であり、削り方一つで酒質すべてに影響を及ぼすものでもある技術的に重要な工程です。米の収穫からお客様に届くまでにある工程すべてが大切なのですが、「飲んでいただく事を想像した原料処理」を蔵人全員で徹底して行きたいと考えています。
良い酒を生みだして行くには良質の米・水を原料にする事と同等に人(チームワーク)が不可欠です。人間味が伝わるような温かい酒になるよう頑張りますので、今期の酒にもご期待下さいます様よろしくお願い致します。