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蔵元通信

日頃お世話になっている皆様に、私ども天寿酒造が何を考え・守り・求め・挑戦しているのか、その思いをお伝えしご理解いただくために、「蔵元通信」を発行しています。
お酒はどのような狙いで造られたものなのか、季節や旬の食べ物に合うお酒、また飲み方、そして鳥海山の登山口であるこの矢島町の様子などをお届けいたします。

町に思う
2015-07-01

町に思う

代表取締役社長 大井建史

五月の最終土曜日に恒例の「天寿酒蔵寄席」と「利き酒会」を行いました。十二回目を迎えるイベントですが、この所鳥海山麓で開催される「菜の花祭」と同日となっておりました。今年はさらに「東北六魂祭」ともぶつかり集客に大変苦労致しました。小さい地域でも連絡が悪いと勿体ない事になりますね。

内閣府認定の地域産業おこしの会会員の佐藤晃一氏(前支所長)と、矢島の企業数社で町興し応援グループ「矢島未来ネット」を設立しています。グループ内での情報交換や議論がある訳ですが、町内の色々なグループが強い思いと手弁当で活動をしているのに、それを調整する機関がありません。どんなグループがどの様な意図を持ってどんな内容のイベントを何時行うのか?せめて把握している団体には行政絡みのイベントも含め、全体のスケジュール・情報(目的・内容・経緯・場所・日時等)を共有出来る様に、ネットで検索できれば良いのですから、小規模になった支所(元役場)の観光担当にお願い出来ないものでしょうか?

今回の例会における佐藤氏の視察報告で、中高関連校舎建設で存続した矢島高校ですが、また秋田県の見直しが行われており、今後三年間の生徒数で趨勢が決まる様との事。その解決策のヒントとして同じ状況だった隠岐ノ島海士町の島前高校のV字回復や矢島の産業モデルとして、日本最大のジャージー牛の里「蒜山高原」の産業化・「農業法人伊賀の里モクモク手づくりファーム」の企業化と人口の多さではなく、明確なコンセプトと企業化する強い意志を持った人であるとの大変貴重で示唆に富んだ講演を頂きました。

まずはこの三か所を勉強し、矢島出身の議員・役場支所職員・ユースプラトー職員・矢島の町づくりに思いのある市民がそれぞれに研修の機会があるなら一番に行ってみるべき場所と思いました。矢島高校の修学旅行も宜しいのではないでしょうか。それによって矢島の町造りや観光の向かうべき方向・コンセプトが定まるかもしれません。(興味の有る方は佐藤晃一氏に是非お問い合わせください)

この所お会いする皆様に確実に「太りましたね!」と言われる今日この頃ですが、人間ドックでも「あれもこれも病気にギリギリ半歩手前??全ては肥満からです。」とのお医者様の一言。とにかく旨い酒と肴を食べ続けられる為にと、さわやかな天気が続く矢島の里でウォーキングを始めました。

妻にも同行を頼み三日目をクリアし十日も過ぎました。野菜中心の食事になるよう努力し、炭水化物を減らしているつもりですが、今の所体重には大した変化はありません。町推奨の五キロコースを一時間弱で歩くのにも少し余裕が出て来た様な気がします。朝の光が当たる鳥海山は美しく雄大で、田植えが終わったばかりの田んぼも清々しく、我々が歩く励みになります。

運動の為にジャージをはくのも運動靴を履くのも随分久しぶりですが、「二人でだったら何とか続けられそうだね」と妻と仲良く歩くこの頃です。

『考える夏』

杜氏 一関 陽介

桜の花が咲き誇っていたのがつい先日のような気がしてならないのですが、あっという間に梅雨のジメジメした気候になり、いよいよ夏が来る気配すら感じるようになりました。

蔵の中は忙しかった瓶詰瓶殺菌が終わりホッと一息…といきたいところですが、品質管理を第一優先に考え製造部全員で取り組んだ結果、造りの方では一部まだ細部の機械整備・清掃等を残してしまっているのが現状です。

清掃は酒屋の仕事で一番大事と言える作業です。作業の遅れを反省するのは当然ですが、いつもよりさらに丁寧にやらなくてはいけません。秋が来ればまたその道具を使って酒造りをするのですから愛情を込めて手入れする心がけを忘れないようにしたいものです。

話は変わりますが、五月下旬に発表された全国新酒鑑評会にて入賞を果たしました。私が杜氏に就任して三年。三年連続三回目の入賞です。これに関してはクセの少ないキレイな吟醸酒が出来ている評価だと前向きに捉えております。出品するからには金賞を取りたい一心で取り組む訳ですが…金賞に届かない理由があるのでしょう。「来年こそは‼」頑張ります。

そして、その理由を考えたり来年はどんな事にチャレンジしてみようか等、最近は「考える時間」を意識的につくるようにしています。杜氏としてこの三年間は、今までの天寿の味を引き継ぐことをテーマにひたすらに走ってきました。百四十余年続く弊社の酒造りの歴史の中でまだ、たったの三年ではありますが心の中はプレッシャーに押し潰されそうで、悩む事は沢山あっても考えることは少なかった気がします。

仲間と一緒に歩んだこの三年で「自分は何をしてきたのか」「三年間の酒質はどうだったのか」「会社の造りたい酒・お客様に伝えたい酒はどんな酒質なのか」そんな事を毎日考えています。反省点は自分の中に書き留めるとして、今思う事を書かせていただくとすれば、自分の造った酒がいろんな人の為に力を添えるもので在って欲しい。一人で飲む安らぎの酒、大勢で飲む楽しい酒・悲しい酒でも良いと思います。ただ飲む人が必ず前向きになれる酒を醸せればと思います。

その為に自分達は何をするのか。「毎日反省をしっかりする事」「何事もベストを尽くす事」「一つ一つの作業に気持ちを籠める事」「飲む人の気持ちを考えて造る事」だと考えます。

酒米研究会メンバーの圃場を回ると順調に稲も生育しているようです。来期の造りが始まるまで有意義な『考える夏』にしたいと思います。

秋田の酒米の話
2015-05-01

秋田の酒米の話

代表取締役社長 大井建史

百四十一回目の酒造りもいよいよ皆造となり、瓶火入れも休みなく猛然と進めていて、連休直前に酒蔵は静寂を迎えます。

また一造り達成いたしました。総数量としては若干の増石ですが、純米吟醸・純米大吟醸の造りはここ数年大きく増加して来ました。その分蔵人達も気を緩める時が無く、三造り目を終えた一関杜氏も「あっという間でした」との感想、心から慰労したいと思います。

今期の反省会でも色々な話題が出ましたが、若手が増えてくると私やベテランの話が増えて来ます。半年を超える酒造り期間中の油断をしない心構え・一本一本の仕込の大切さ・一本の酒造りの中で自分の仕事がその酒にどの様に影響したかを継続的に呑切りや市販商品を通じて思い知る事等々、最終的には天寿の酒蔵の精神の置き所・心意気までの話となり、その後の飲み会まで延々と続きました。その他にも甑倒し・皆造・和泉会(社員親睦会)と宴会が続きます。本日(四月十二日)矢島の里で最も早く咲き始める天寿前の庚申さんの桜が咲き始めました。心にしみる季節です。

前号でも秋田県の酒米について触れましたが、秋田県酒造組合から酒造好適米の契約栽培をされている湯沢市酒米研究会が最も大きな集団で歴史も長く大変お世話になっています。その他弊社も含め個々の酒蔵との契約栽培グループもあります。

酒造好適米は字の如く酒にしか使えませんので酒蔵の製造計画に合わせて栽培されます。農家が勝手に栽培しても契約がなければ買ってくれるところがありません。ですから全てが契約栽培でなければ成立しませんが、稲刈りが終わり酒蔵が酒造りを始める段階で翌年の契約をしないと契約分の種もみの確保が出来なくなります。翌年に販売する酒造りを始める時に翌々年の酒造りの為の原料米を発注しなければならないと言う難事となる訳です。三十年にわたり減産を余儀なくされた日本酒業界ですから、全体的に弱気の発注になりますし、減産を強いられてきた農家側でも増産には懐疑的になります。そんな三年前の状況ですが、純米大吟醸等の予想以上の好調により増産に対応できず、二年前に酒米不足の騒ぎになった訳です。

酒米は基本的に契約栽培である事を軽視し、発注すれば買える物と勘違いしている酒蔵に大騒ぎしている所が多かったように思いますし、翌年の米不足を恐れ自社のリスク回避のために大量発注し、必要量が確保されると過剰分の数千俵の信じ難い大量のキャンセルを入れた大迷惑メーカーも現れました。

日本酒は原料米が無ければ造る事が出来ません。米価が高く、頼んでも生産性の悪い酒米の栽培が難しく、粘り強い説得で契約栽培集団を作り上げた、三十数年前の天寿酒米研究会立ち上げの頃とは違い、現在は米価の下落で酒米生産を希望する農家は急増しています。しかし、減産と米価の下落が続いても、手間のかかる酒米を造り続けて頂いた酒米農家を犠牲にして、自社の急造酒米グループ作りに走る事無く、今こそしっかりと酒蔵が協力し合って信頼される行動をしていかないと、逆に県内の酒米の生産体制が崩壊する可能性があると警鐘を鳴らしているこの頃です。

皆造を迎えて

杜氏 一関 陽介

雪が例年より少なかった冬も終わり、気が付けば桜の枝の蕾も膨らんで今にも開きそうな気配すら感じる気候になりました。

今期の酒造りも三月二十四日に無事仕込みが終了し、四月十二日に皆造(全て搾って終わる事)を迎える事が出来ました。最後まで事故無くやり抜けた事は、毎日共に酒造りに向き合った蔵人各々がチームワーク良く楽しく仕事に取り組んでくれた事にあると思います。また、今期は仕込みの大きさに大小はありますが、百十七本もの仕込みをする事が出来ました。私達の造る商品を日頃から御愛飲いただいている皆様方のおかげと、本当にありがたく思っております。

振り返ると今年の原料米は良く溶けるという予測で酒造りが始まりました。「良い蒸米にしよう」「どうにか溶け過ぎを防ごう」と原料処理の担当者と毎日蒸米を見ては相談したのを覚えています。

「イメージ通り、天寿らしい酒になるだろうか…」一本目を搾るまで毎年ドキドキのスタートな訳ですが、今期の初めに搾った純米吟醸酒「初槽純吟生酒」がワイングラスでおいしい日本酒アワードで最高金賞を頂くという結果を出す事が出来ました。運もあったのでしょう。しかし、手前味噌になりますが出来る事をしっかりとやり遂げた成果でもあると思います。

今年度の新酒でこのような結果を出す事が出来ましたが、当然喜んでばかりもいられず、四月に入り搾り上がった純米吟醸酒の瓶詰・殺菌作業、今年酒造りに使用した道具の手入・清掃と社員総出で忙しい毎日を送っております。これも皆様に「美味しい」を届ける為。「お客様にお届けするまでが酒造り」を忘れない様、走り続けます!

ひたむきに ひたすらに
2015-03-01

ひたむきに ひたすらに

代表取締役社長 大井建史

十二月・一月と例年通りの積雪量でしたが、二月はひと月飛ばして三月の陽気で雪も急速に消えて行きました。隣町の田んぼにはひと月早い雪解けで沢山の白鳥が飛来し、これまであまり見る事の無かった白鳥が編隊を組み飛行する姿が間近で見られます。これも嬉しいと言うよりは気候の変化に不安を覚える要素となっております。大吟醸の上槽は二月中に全て終えましたが、槽場の温度は品質に影響を与えますので神経を尖らせました。

それでも酒蔵は雪に囲まれ酒造りも順調に推移しており、甑倒し(米の蒸しを終了する事)まで残すところ一か月弱です。大吟醸の山を越えたとはいえ、これからも中吟クラスの仕込みは続きます。よく酒蔵で「和醸良酒」と言う言葉が使われます。この「和」はもちろんチームワークの良い事を指しますが、これは仲良しな事ではなく、目指すレベルを理解し共通のイメージを持つという事です。酒仕込み一本一本の目指す目標を明確にし、油断すること無く対応する事。終盤は異常な暖冬に対して緊張感を持った対応が重要となります。搾ったお酒の素早い冷蔵・早めの瓶火入れなど、急げ急げのダッシュ対応をどこまで出来るかが勝負です。

私が酒造組合原料米対策委員長となって八年が経ち、県産酒造好適米はもちろんですが、県産酒造米(法律の変更により、産地や品種を指定出来ない加工米から地域流通米として地域と品種を指定)も契約栽培と成し、県外の山田錦も全国初の酒造組合との村米制度に組み入れ秋田村を設立頂いた。今回、その五集落からなる秋田村山田錦生産者大会が行われた山田錦発祥の地 兵庫県多可町を訪れ、全量特等米を作って頂いたメンバーの皆様に五年目の山田錦生産をお願いして、昨日帰ってきました。

「地元で出来る最高の酒」を目指す弊社ですが、独りよがりに成らない様に山田錦の大吟醸も仕込み、地元産米での仕込みと比較を行っています。しかし、兵庫県の発祥でありその元となった町の方々の山田錦に対する技術や品種の保存努力に裏打ちされた誇りと、何処と比較されても自分達が作った米を最良な物にする情熱や秋田村と秋田の酒蔵に対す思いは大変なものがあり、使用させて頂く秋田県酒造組合各社も素晴らしいお酒を醸し出す事で恩返しをしたいものと思いました。みのり農協組合長上羅氏曰く「山田錦を皆さんにお出しすることを嫁に出すと言っています。こうして旨酒となって味わえる事を嫁に出した娘の里帰りと言っています。」また、多可町長は秋田酒銘柄の入った手拭いを壁に貼り、今回お持ちした酒瓶を全て部屋に飾るとおっしゃいます。生産者会会長も昨年秋田で蔵元たちと一緒に飲めた事を心から喜んでいただき、ひたすら品質の向上についてお話頂きました。

私どもは本当に色々な方々の思いを頂き酒造りを続けさせて頂いております。その気持ちにお応えする為にはひたすら良いお酒を醸し続ける事。未熟ではございますが私共の精一杯をお見せ出来ますよう精進致します。

ラストスパート!

杜氏 一関 陽介

冬の寒さが少し緩んで雪解けが一気に進み、日中は暖かく感じる日が増えて参りました。それでも朝晩は寒いので「まだまだ冬は終わらない」と思いながらも、すぐそこまで春が近づいて来ているような気が致します。

さて、蔵の中では出品用クラスの大吟醸の上槽が終わりホッと一息…つきたいところではありますが、三月二十四日の甑倒し(造り仕舞)に向けてラストスパートと言ったところです。「少し休みたい」と思うことはありますが、国内外での特定名称酒の移出数量は好調を維持させて頂いており、仕込みの最後まで純米吟醸・純米大吟醸の仕込みが目白押しです。最後まで気を抜かず突っ走ります!

話は変わりますが、本年度の新酒しぼりたて・生酒はお試しいただいたでしょうか?今までの商品ラインナップに、初槽純吟生酒と寒造純米生原酒が加わりました。

実はこの二つの商品には15度台の原酒であるという共通点があります。精神論かもしれませんがどんなに美味い酒でも「出来上がってしまった」商品ではお客様に想いは伝える事は出来ず、「いつ」・「どのように」飲んでいただくのかを含めた「商品設計」・「酒質目標」をしっかり持った酒造りをすることを徹底すればお酒が蔵人の気持ちを伝えてくれると私は信じています。

前出の二商品は、出来た酒を後で調整するのではなく、もろみ段階での発行経過・加水を工夫する事で、米から生まれた旨味を最後に出来るだけ薄める事のない、「ジューシーでアルコール分も飲みやすい度数に抑えたしぼりたて生酒」を目指しました。これを踏まえて是非お試しいただければと思います。

この他にもいろいろな取り組みをしながら私たちは酒造りをしています。春も近づく矢島に是非足をお運びいただき、蔵見学はいかがでしょうか?

謹賀新年
2015-01-01

謹賀新年

代表取締役社長 大井建史

明けましておめでとうございます。

天寿の里のお正月は酒蔵が雪でかまくら状態になり、酒仕込に好適な温度環境となる十分な量はありますが、ニュースで報道された大寒波は避けて通ってくれた様で、正月三箇日恒例の社長夫婦除雪も適度な運動レベル?で終えられました。

今年は五日が仕事始めとなりましたが、酒蔵の方はもちろん常に活動を続けております。三造り目になった一関杜氏も、「視野を広げて、もっと悩め!!」と叱咤されながら日々邁進しております。寒造りに最適の新年からは特に大吟醸系の酒造りが続き、気の休まらない日々が続きます。今年の原料米のやや溶ける状況も把握し、さらに踏み込んだ挑戦の始まりです。全て新米での仕込の為、十二月十日頃から次々と新酒を送り出して参りましたが、百四十一回目の酒造りで生まれた味わいは如何でしたでしょうか?

さて、そんな天寿の里ですが、町を車で走ると雪で所々道幅が狭くなります。実は道が狭くなっているのは住民の居なくなった空き家の前なのです。

五千人を切って益々人口減少が加速する矢島町では、行政としてはかなり良いレベルの除雪がなされていますが、それでも仕上げは住民の仕事です。文字通り出勤前・朝飯前の仕事ではありますが毎日の事、しかも空き家の除雪までボランティアで行うとなると大仕事です。秋田県の空家数は平成二十五年調査で五万六千六百戸、五年間で一千三百戸増加しています。先日も社員宅の隣の家屋が老朽化し、積雪による倒壊の恐れが出てきましたが、相続人は皆県外に居住していることが発覚する事案がありました。相続も未手続の上複雑で今後の方針を決める目処が立たず、かといって町では税金を使って雪下ろしを数度はしてくれたもののこれ以上は今の所何も出来ないとの返答で、隣の建物の倒壊で被害が出た場合誰が責任を取ってくれるのか…こんな事がざらに有る様です。地元で育った子ども達が都会に出て、残った親が亡くなり住宅が空き家になる。時間の経過に伴う仕方のない事ではありますが、地元の税金で保育園・小学校・中学校・高校を出て今がある人又はその子供たちには、せめて残って地元を支えている人達に安全な道を守るという、地元への恩返しを一度考えて頂くことをお願いしたい次第です。(空家対応策を役場に相談することも可能だそうです。) 矢島の町を安全な除雪の行き届いた美しい街にするため、悩める住民の一人として年始にもかかわらず一言申し上げました。

百四十一年目の酒造り。今年も酒造りに邁進出来ます事を、皆様に心から感謝申し上げますとともに、本年もご愛顧の程よろしくお願い申し上げます。

三造り目を迎えて

杜氏 一関 陽介

あけましておめでとうございます。本年も美味い酒をお届けできる様に精進して参りますので宜しくお願い致します。

さて、今年度のしぼりたてはご賞味いただけましたでしょうか?数種類あるしぼりたて商品は、全体的に米の溶け具合が昨年より良かった事で搾った時に残る粕が少なく、出来上がった酒は味乗りが良かった印象です。特に新商品「初槽純吟生酒」は原料米全量(めんこいな)を使用したお酒で、私自身酒造好適米を全く使用しない純米吟醸酒に初めてチャレンジしましたが、ナデシコ酵母の特性である華やかな香りと米から出る旨味が上手くマッチした仕上がりになっていると思います。おすすめです!!

仮にしぼりたてが飲み頃であるとするならば、新年を迎えた今ここでしっかり考えなければならない事があります。ここから春までの間は同じ造りをしていてはダメで、商品として一年間安定した品質を保って出荷ができる酒造りをしなければならない事です。近年、製成酒の熱殺菌・低温貯蔵管理をしっかりする事で一定の品質は保つことができるようになりましたが、やはり原点は造りであると思います。自分たちが造りあげる酒質目標に向かって蔵人全員の意思疎通はもちろん、原料処理から搾るまでどの工程が欠けてもいけません。

杜氏に就任して三造り目。「弊社に求められている酒質は?」「天寿の酒質の方向性は?」を社長と共にしっかりと考え、原料米生産者の想い・蔵人の想いをしっかり酒に乗せて、品質の安定した安心して飲める商品造りを継続して行くことをお約束して、新年のご挨拶とさせていただきます。

一意専心
2014-11-01

一意専心

代表取締役社長 大井建史

世間を騒がせた大型台風19号も、矢島の里は被害無く通り過ぎました。稲刈りも台風前に概ね終了し、量は例年より多い感触ですが、秋田の醸造試験場の先生は「今年の米は成長のバラつきが大きいため、割れやすく非常に溶ける可能性が高い。」と予想しております

山田錦の方は先月末に契約栽培の秋田村を原料米対策委員長として視察して参りましたが、その時点までは大変順調でした。「問題は台風…。」と言っていたのですが、稲刈り前に18・19号と大きいのが二つ来てしまいました。古い品種で茎が長く倒れやすいのです。被害が大きくなければ良いのですが…この時期は心配が絶えません。

秋田県最年少杜氏である一関は、非常に溶けない一年目、平年よりやや溶ける二年目、非常に溶けやすい予想の今年と、三回目の造りも前途多難と思われます。

前号発行後にロンドン酒チャレンジの結果発表がありました。

日本酒を扱う海外の飲食関係者がお客様に安心して勧められる高品質な日本酒を決める品評会です。ロンドン酒チャレンジの審査員は、世界で活躍するプロのソムリエたち三十四名で、内日本人審査員は二名、判定項目には風味の他にも洗練度や包装が含まれる珍しいコンテストです。

弊社は「大吟醸鳥海」金賞・「純米大吟醸鳥海山」銀賞・「天寿純米酒」銅賞という結果でした。インターナショナル・サケ・チャレンジに続いての受賞、誠に光栄の至りです。

杜氏とは盆過ぎから百四十一回目の酒造りの計画を検討して参りました。呑切りの結果も良く検討し、前回の試みは有効だったのか・選択した酵母は予想通りの味わいを生み出してくれたのか・熟成は順調なのか・新商品は期待通りの出来だったのかと細かくチェックいたしました。地元の主力商品精撰(旧二級酒)は品質改良も頑張り、賞も頂いているのですが、県内精撰のご多聞にもれず中々厳しい結果でした。しかし全体で見れば、お陰様で若干の増産をする事と成りました。機械の整備も終わりいよいよ酒造りが始まります。

本日(十月十四日)季節蔵人第一号が入蔵し精米を開始いたしました。蔵人で米作りの先生佐藤博美氏(新幹線のトランヴェール十月号に一緒に載りました)の美山錦です。初蒸しは二十七日の予定です。

百四十一回目の酒造り。四股踏んで頑張ります。

今季もよろしくお願いいたします。

百四十一回目の酒造り

杜氏 一関 陽介

最低気温が十度を下回る日が増え、鳥海山の紅葉も一段と色づき秋深まってまいりました。大型の台風が頻発し、連日の被害が報道されており酒造用原料米の品質にも影響があるのでは…と少々心配な状況です。

天寿酒米研究会産の米に関しては、十月十日頃には刈取りが終了し新米の入庫が始まりました。冬期蔵人メンバーも収穫期を終え、既に入蔵しています。精米所では美山錦の精米を開始し、米の香りが所内に漂い、いよいよ本番!といったところです。

弊社では「酒造りは米作りから」始まるという考えの下、天寿酒米研究会の農家の方が出来る限り最高の品質を目指して育てた米を今度は造りの現場でしっかり観察し、商品イメージを膨らませます。「どの米をどういう酒に仕上げるのか」を想像するための非常に重要な工程が精米であり、削り方一つで酒質すべてに影響を及ぼすものでもある技術的に重要な工程です。米の収穫からお客様に届くまでにある工程すべてが大切なのですが、「飲んでいただく事を想像した原料処理」を蔵人全員で徹底して行きたいと考えています。

良い酒を生みだして行くには良質の米・水を原料にする事と同等に人(チームワーク)が不可欠です。人間味が伝わるような温かい酒になるよう頑張りますので、今期の酒にもご期待下さいます様よろしくお願い致します。

感 謝
2014-09-01

感 謝

代表取締役社長 大井建史

前半は猛暑後半は長雨と、近年の異常気象の典型的な夏でしたが、地元の田んぼは今の所「やや良」と言う事です。穂を垂れた圃場を眺めてその成長を喜びながらも、稲刈り前の台風を警戒している今日この頃です。

酒蔵では西京漬け・奈良漬け・粕汁等に使う夏粕の袋詰めをしながら、蔵や機器の保守点検をし、百四十一回目の酒造りの計画を練っている所です。もうすぐ、呑切(のみきり・新酒を夏越えで貯蔵しその品質を確認する事)もあり、前造りの挑戦の成果に期待しつつも九月は会社の期末でもあり、気持ち的には慌ただしくなって参りました。

七月二十八日(月)、東京・港区のコンラッド東京ホテルにおいて、本格的な国際的日本酒コンテストとして海外の審査員も多数採用して発足した、第八回インターナショナル・サケ・チャレンジが開催されました。http://www.sakechallenge.com/results.html

このコンテストの目標は、国際市場における日本酒に対する理解および認識を向上させ、流通と販売を促進することにあります。

先日その結果発表があり、山田錦やその他有名酒造好適米を使用した有名銘柄の中で、「大吟醸鳥海」と共に契約栽培グループ「天寿酒米研究会」産美山錦で醸した定番「大吟醸天寿」が金賞五点に入り、その中の最高得点を得て「トロフィー」を受賞いたしました。

昔から有る全国新酒鑑評会は、その年造った大吟醸の最高の部分を出品しますが、その他の海外も含めたコンテストでは、実際に販売されている商品そのものが出品されます。従いまして受賞酒その物を皆様は味わう事が可能になるのです。

十六年前に社長に成って以来「地元で出来る最高の酒」を目指して来た弊社です。近年は純米大吟醸鳥海山(今回銀賞)が色々受賞してくれておりましたが、出品酒クラスが多数出展される大吟醸の部で、全て地元産で「トロフィー」を受賞出来た事は、その方針が認められた様で私としては二重に嬉しく有難いのです。

そして今回は、大吟醸天寿「トロフィー」・大吟醸鳥海「金賞」・純米大吟醸天寿「銀賞」・純米大吟醸鳥海山「銀賞」・米から育てた純米酒「銀賞」・純米吟醸天寿「銅賞」・天寿純米酒「銅賞」と出品七点全てが銅賞以上を受賞いたしました。

厳しい要求に挑戦してくれた一関陽介杜氏を頭とする蔵人達と、永年天寿の酒質を支えて来て頂いた天寿酒米研究会の皆様、ありがとうございました。

何よりも力強くご愛顧くださっております皆様に、心から感謝申し上げます。

三年目の意気込み

杜氏 一関 陽介

七月に新酒造年度を迎え、早いものであっという間に二か月が経過しました。日中の厳しい暑さも和らぎ蔵の中も朝晩はひんやりと肌寒くさえ感じるようになってまいりました。蔵の中では純米酒粕の出荷に向けてパック詰め作業を進めております。私も入社して十一年目を迎えますが、これが終わるといよいよ仕込みが始まるなぁ…と感じる初秋の風物詩になりつつあります。

さて、今年度の酒造りについてですが、今心配なのはやはり原料になるコメの状況です。酒米研究会の調査によれば、今のところ気候によってコメに障害を及ぼすような傾向は見られないとの事で、稲作勉強中の私には安心できる一言でした。良質のコメが育つ期待感が増し、十月のコメの入荷がいよいよ待ち遠しくなってまいりました。

今秋で杜氏として三回目の造りを迎えます。只今社長・営業と共に「どのお酒を・どのくらい造るのか」を決定するための計画案作成真っ最中ですが、造りが始まってからは、ただひたすらに打ち込むしかできなかったこの二年とは違い、計画を立てる段階ですでに「どうしたら、自分達の酒が楽しく飲んでいただけるのか」をしっかりと考える余裕をもって臨もうとする自分の(頭の中の)姿勢に自分でもビックリしています。これは酒造りに携わる人間なら当たり前に出来なければいけない事ですし、今までも当然考えながら酒造りをしてきましたが、少し成長したようです。

今年度のお酒には、自分を支えて下さる方、いつも天寿を飲んで下さる方、これから天寿ファンになって下さる方に気持ちが伝わるお酒が届けられるよう、さらに努力して参ります。新酒ができるのを楽しみにお待ちくださいますよう宜しくお願い致します。

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