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蔵元通信

日頃お世話になっている皆様に、私ども天寿酒造が何を考え・守り・求め・挑戦しているのか、その思いをお伝えしご理解いただくために、「蔵元通信」を発行しています。
お酒はどのような狙いで造られたものなのか、季節や旬の食べ物に合うお酒、また飲み方、そして鳥海山の登山口であるこの矢島町の様子などをお届けいたします。

ひたむきに ひたすらに
2015-03-01

ひたむきに ひたすらに

代表取締役社長 大井建史

十二月・一月と例年通りの積雪量でしたが、二月はひと月飛ばして三月の陽気で雪も急速に消えて行きました。隣町の田んぼにはひと月早い雪解けで沢山の白鳥が飛来し、これまであまり見る事の無かった白鳥が編隊を組み飛行する姿が間近で見られます。これも嬉しいと言うよりは気候の変化に不安を覚える要素となっております。大吟醸の上槽は二月中に全て終えましたが、槽場の温度は品質に影響を与えますので神経を尖らせました。

それでも酒蔵は雪に囲まれ酒造りも順調に推移しており、甑倒し(米の蒸しを終了する事)まで残すところ一か月弱です。大吟醸の山を越えたとはいえ、これからも中吟クラスの仕込みは続きます。よく酒蔵で「和醸良酒」と言う言葉が使われます。この「和」はもちろんチームワークの良い事を指しますが、これは仲良しな事ではなく、目指すレベルを理解し共通のイメージを持つという事です。酒仕込み一本一本の目指す目標を明確にし、油断すること無く対応する事。終盤は異常な暖冬に対して緊張感を持った対応が重要となります。搾ったお酒の素早い冷蔵・早めの瓶火入れなど、急げ急げのダッシュ対応をどこまで出来るかが勝負です。

私が酒造組合原料米対策委員長となって八年が経ち、県産酒造好適米はもちろんですが、県産酒造米(法律の変更により、産地や品種を指定出来ない加工米から地域流通米として地域と品種を指定)も契約栽培と成し、県外の山田錦も全国初の酒造組合との村米制度に組み入れ秋田村を設立頂いた。今回、その五集落からなる秋田村山田錦生産者大会が行われた山田錦発祥の地 兵庫県多可町を訪れ、全量特等米を作って頂いたメンバーの皆様に五年目の山田錦生産をお願いして、昨日帰ってきました。

「地元で出来る最高の酒」を目指す弊社ですが、独りよがりに成らない様に山田錦の大吟醸も仕込み、地元産米での仕込みと比較を行っています。しかし、兵庫県の発祥でありその元となった町の方々の山田錦に対する技術や品種の保存努力に裏打ちされた誇りと、何処と比較されても自分達が作った米を最良な物にする情熱や秋田村と秋田の酒蔵に対す思いは大変なものがあり、使用させて頂く秋田県酒造組合各社も素晴らしいお酒を醸し出す事で恩返しをしたいものと思いました。みのり農協組合長上羅氏曰く「山田錦を皆さんにお出しすることを嫁に出すと言っています。こうして旨酒となって味わえる事を嫁に出した娘の里帰りと言っています。」また、多可町長は秋田酒銘柄の入った手拭いを壁に貼り、今回お持ちした酒瓶を全て部屋に飾るとおっしゃいます。生産者会会長も昨年秋田で蔵元たちと一緒に飲めた事を心から喜んでいただき、ひたすら品質の向上についてお話頂きました。

私どもは本当に色々な方々の思いを頂き酒造りを続けさせて頂いております。その気持ちにお応えする為にはひたすら良いお酒を醸し続ける事。未熟ではございますが私共の精一杯をお見せ出来ますよう精進致します。

ラストスパート!

杜氏 一関 陽介

冬の寒さが少し緩んで雪解けが一気に進み、日中は暖かく感じる日が増えて参りました。それでも朝晩は寒いので「まだまだ冬は終わらない」と思いながらも、すぐそこまで春が近づいて来ているような気が致します。

さて、蔵の中では出品用クラスの大吟醸の上槽が終わりホッと一息…つきたいところではありますが、三月二十四日の甑倒し(造り仕舞)に向けてラストスパートと言ったところです。「少し休みたい」と思うことはありますが、国内外での特定名称酒の移出数量は好調を維持させて頂いており、仕込みの最後まで純米吟醸・純米大吟醸の仕込みが目白押しです。最後まで気を抜かず突っ走ります!

話は変わりますが、本年度の新酒しぼりたて・生酒はお試しいただいたでしょうか?今までの商品ラインナップに、初槽純吟生酒と寒造純米生原酒が加わりました。

実はこの二つの商品には15度台の原酒であるという共通点があります。精神論かもしれませんがどんなに美味い酒でも「出来上がってしまった」商品ではお客様に想いは伝える事は出来ず、「いつ」・「どのように」飲んでいただくのかを含めた「商品設計」・「酒質目標」をしっかり持った酒造りをすることを徹底すればお酒が蔵人の気持ちを伝えてくれると私は信じています。

前出の二商品は、出来た酒を後で調整するのではなく、もろみ段階での発行経過・加水を工夫する事で、米から生まれた旨味を最後に出来るだけ薄める事のない、「ジューシーでアルコール分も飲みやすい度数に抑えたしぼりたて生酒」を目指しました。これを踏まえて是非お試しいただければと思います。

この他にもいろいろな取り組みをしながら私たちは酒造りをしています。春も近づく矢島に是非足をお運びいただき、蔵見学はいかがでしょうか?

謹賀新年
2015-01-01

謹賀新年

代表取締役社長 大井建史

明けましておめでとうございます。

天寿の里のお正月は酒蔵が雪でかまくら状態になり、酒仕込に好適な温度環境となる十分な量はありますが、ニュースで報道された大寒波は避けて通ってくれた様で、正月三箇日恒例の社長夫婦除雪も適度な運動レベル?で終えられました。

今年は五日が仕事始めとなりましたが、酒蔵の方はもちろん常に活動を続けております。三造り目になった一関杜氏も、「視野を広げて、もっと悩め!!」と叱咤されながら日々邁進しております。寒造りに最適の新年からは特に大吟醸系の酒造りが続き、気の休まらない日々が続きます。今年の原料米のやや溶ける状況も把握し、さらに踏み込んだ挑戦の始まりです。全て新米での仕込の為、十二月十日頃から次々と新酒を送り出して参りましたが、百四十一回目の酒造りで生まれた味わいは如何でしたでしょうか?

さて、そんな天寿の里ですが、町を車で走ると雪で所々道幅が狭くなります。実は道が狭くなっているのは住民の居なくなった空き家の前なのです。

五千人を切って益々人口減少が加速する矢島町では、行政としてはかなり良いレベルの除雪がなされていますが、それでも仕上げは住民の仕事です。文字通り出勤前・朝飯前の仕事ではありますが毎日の事、しかも空き家の除雪までボランティアで行うとなると大仕事です。秋田県の空家数は平成二十五年調査で五万六千六百戸、五年間で一千三百戸増加しています。先日も社員宅の隣の家屋が老朽化し、積雪による倒壊の恐れが出てきましたが、相続人は皆県外に居住していることが発覚する事案がありました。相続も未手続の上複雑で今後の方針を決める目処が立たず、かといって町では税金を使って雪下ろしを数度はしてくれたもののこれ以上は今の所何も出来ないとの返答で、隣の建物の倒壊で被害が出た場合誰が責任を取ってくれるのか…こんな事がざらに有る様です。地元で育った子ども達が都会に出て、残った親が亡くなり住宅が空き家になる。時間の経過に伴う仕方のない事ではありますが、地元の税金で保育園・小学校・中学校・高校を出て今がある人又はその子供たちには、せめて残って地元を支えている人達に安全な道を守るという、地元への恩返しを一度考えて頂くことをお願いしたい次第です。(空家対応策を役場に相談することも可能だそうです。) 矢島の町を安全な除雪の行き届いた美しい街にするため、悩める住民の一人として年始にもかかわらず一言申し上げました。

百四十一年目の酒造り。今年も酒造りに邁進出来ます事を、皆様に心から感謝申し上げますとともに、本年もご愛顧の程よろしくお願い申し上げます。

三造り目を迎えて

杜氏 一関 陽介

あけましておめでとうございます。本年も美味い酒をお届けできる様に精進して参りますので宜しくお願い致します。

さて、今年度のしぼりたてはご賞味いただけましたでしょうか?数種類あるしぼりたて商品は、全体的に米の溶け具合が昨年より良かった事で搾った時に残る粕が少なく、出来上がった酒は味乗りが良かった印象です。特に新商品「初槽純吟生酒」は原料米全量(めんこいな)を使用したお酒で、私自身酒造好適米を全く使用しない純米吟醸酒に初めてチャレンジしましたが、ナデシコ酵母の特性である華やかな香りと米から出る旨味が上手くマッチした仕上がりになっていると思います。おすすめです!!

仮にしぼりたてが飲み頃であるとするならば、新年を迎えた今ここでしっかり考えなければならない事があります。ここから春までの間は同じ造りをしていてはダメで、商品として一年間安定した品質を保って出荷ができる酒造りをしなければならない事です。近年、製成酒の熱殺菌・低温貯蔵管理をしっかりする事で一定の品質は保つことができるようになりましたが、やはり原点は造りであると思います。自分たちが造りあげる酒質目標に向かって蔵人全員の意思疎通はもちろん、原料処理から搾るまでどの工程が欠けてもいけません。

杜氏に就任して三造り目。「弊社に求められている酒質は?」「天寿の酒質の方向性は?」を社長と共にしっかりと考え、原料米生産者の想い・蔵人の想いをしっかり酒に乗せて、品質の安定した安心して飲める商品造りを継続して行くことをお約束して、新年のご挨拶とさせていただきます。

一意専心
2014-11-01

一意専心

代表取締役社長 大井建史

世間を騒がせた大型台風19号も、矢島の里は被害無く通り過ぎました。稲刈りも台風前に概ね終了し、量は例年より多い感触ですが、秋田の醸造試験場の先生は「今年の米は成長のバラつきが大きいため、割れやすく非常に溶ける可能性が高い。」と予想しております

山田錦の方は先月末に契約栽培の秋田村を原料米対策委員長として視察して参りましたが、その時点までは大変順調でした。「問題は台風…。」と言っていたのですが、稲刈り前に18・19号と大きいのが二つ来てしまいました。古い品種で茎が長く倒れやすいのです。被害が大きくなければ良いのですが…この時期は心配が絶えません。

秋田県最年少杜氏である一関は、非常に溶けない一年目、平年よりやや溶ける二年目、非常に溶けやすい予想の今年と、三回目の造りも前途多難と思われます。

前号発行後にロンドン酒チャレンジの結果発表がありました。

日本酒を扱う海外の飲食関係者がお客様に安心して勧められる高品質な日本酒を決める品評会です。ロンドン酒チャレンジの審査員は、世界で活躍するプロのソムリエたち三十四名で、内日本人審査員は二名、判定項目には風味の他にも洗練度や包装が含まれる珍しいコンテストです。

弊社は「大吟醸鳥海」金賞・「純米大吟醸鳥海山」銀賞・「天寿純米酒」銅賞という結果でした。インターナショナル・サケ・チャレンジに続いての受賞、誠に光栄の至りです。

杜氏とは盆過ぎから百四十一回目の酒造りの計画を検討して参りました。呑切りの結果も良く検討し、前回の試みは有効だったのか・選択した酵母は予想通りの味わいを生み出してくれたのか・熟成は順調なのか・新商品は期待通りの出来だったのかと細かくチェックいたしました。地元の主力商品精撰(旧二級酒)は品質改良も頑張り、賞も頂いているのですが、県内精撰のご多聞にもれず中々厳しい結果でした。しかし全体で見れば、お陰様で若干の増産をする事と成りました。機械の整備も終わりいよいよ酒造りが始まります。

本日(十月十四日)季節蔵人第一号が入蔵し精米を開始いたしました。蔵人で米作りの先生佐藤博美氏(新幹線のトランヴェール十月号に一緒に載りました)の美山錦です。初蒸しは二十七日の予定です。

百四十一回目の酒造り。四股踏んで頑張ります。

今季もよろしくお願いいたします。

百四十一回目の酒造り

杜氏 一関 陽介

最低気温が十度を下回る日が増え、鳥海山の紅葉も一段と色づき秋深まってまいりました。大型の台風が頻発し、連日の被害が報道されており酒造用原料米の品質にも影響があるのでは…と少々心配な状況です。

天寿酒米研究会産の米に関しては、十月十日頃には刈取りが終了し新米の入庫が始まりました。冬期蔵人メンバーも収穫期を終え、既に入蔵しています。精米所では美山錦の精米を開始し、米の香りが所内に漂い、いよいよ本番!といったところです。

弊社では「酒造りは米作りから」始まるという考えの下、天寿酒米研究会の農家の方が出来る限り最高の品質を目指して育てた米を今度は造りの現場でしっかり観察し、商品イメージを膨らませます。「どの米をどういう酒に仕上げるのか」を想像するための非常に重要な工程が精米であり、削り方一つで酒質すべてに影響を及ぼすものでもある技術的に重要な工程です。米の収穫からお客様に届くまでにある工程すべてが大切なのですが、「飲んでいただく事を想像した原料処理」を蔵人全員で徹底して行きたいと考えています。

良い酒を生みだして行くには良質の米・水を原料にする事と同等に人(チームワーク)が不可欠です。人間味が伝わるような温かい酒になるよう頑張りますので、今期の酒にもご期待下さいます様よろしくお願い致します。

感 謝
2014-09-01

感 謝

代表取締役社長 大井建史

前半は猛暑後半は長雨と、近年の異常気象の典型的な夏でしたが、地元の田んぼは今の所「やや良」と言う事です。穂を垂れた圃場を眺めてその成長を喜びながらも、稲刈り前の台風を警戒している今日この頃です。

酒蔵では西京漬け・奈良漬け・粕汁等に使う夏粕の袋詰めをしながら、蔵や機器の保守点検をし、百四十一回目の酒造りの計画を練っている所です。もうすぐ、呑切(のみきり・新酒を夏越えで貯蔵しその品質を確認する事)もあり、前造りの挑戦の成果に期待しつつも九月は会社の期末でもあり、気持ち的には慌ただしくなって参りました。

七月二十八日(月)、東京・港区のコンラッド東京ホテルにおいて、本格的な国際的日本酒コンテストとして海外の審査員も多数採用して発足した、第八回インターナショナル・サケ・チャレンジが開催されました。http://www.sakechallenge.com/results.html

このコンテストの目標は、国際市場における日本酒に対する理解および認識を向上させ、流通と販売を促進することにあります。

先日その結果発表があり、山田錦やその他有名酒造好適米を使用した有名銘柄の中で、「大吟醸鳥海」と共に契約栽培グループ「天寿酒米研究会」産美山錦で醸した定番「大吟醸天寿」が金賞五点に入り、その中の最高得点を得て「トロフィー」を受賞いたしました。

昔から有る全国新酒鑑評会は、その年造った大吟醸の最高の部分を出品しますが、その他の海外も含めたコンテストでは、実際に販売されている商品そのものが出品されます。従いまして受賞酒その物を皆様は味わう事が可能になるのです。

十六年前に社長に成って以来「地元で出来る最高の酒」を目指して来た弊社です。近年は純米大吟醸鳥海山(今回銀賞)が色々受賞してくれておりましたが、出品酒クラスが多数出展される大吟醸の部で、全て地元産で「トロフィー」を受賞出来た事は、その方針が認められた様で私としては二重に嬉しく有難いのです。

そして今回は、大吟醸天寿「トロフィー」・大吟醸鳥海「金賞」・純米大吟醸天寿「銀賞」・純米大吟醸鳥海山「銀賞」・米から育てた純米酒「銀賞」・純米吟醸天寿「銅賞」・天寿純米酒「銅賞」と出品七点全てが銅賞以上を受賞いたしました。

厳しい要求に挑戦してくれた一関陽介杜氏を頭とする蔵人達と、永年天寿の酒質を支えて来て頂いた天寿酒米研究会の皆様、ありがとうございました。

何よりも力強くご愛顧くださっております皆様に、心から感謝申し上げます。

三年目の意気込み

杜氏 一関 陽介

七月に新酒造年度を迎え、早いものであっという間に二か月が経過しました。日中の厳しい暑さも和らぎ蔵の中も朝晩はひんやりと肌寒くさえ感じるようになってまいりました。蔵の中では純米酒粕の出荷に向けてパック詰め作業を進めております。私も入社して十一年目を迎えますが、これが終わるといよいよ仕込みが始まるなぁ…と感じる初秋の風物詩になりつつあります。

さて、今年度の酒造りについてですが、今心配なのはやはり原料になるコメの状況です。酒米研究会の調査によれば、今のところ気候によってコメに障害を及ぼすような傾向は見られないとの事で、稲作勉強中の私には安心できる一言でした。良質のコメが育つ期待感が増し、十月のコメの入荷がいよいよ待ち遠しくなってまいりました。

今秋で杜氏として三回目の造りを迎えます。只今社長・営業と共に「どのお酒を・どのくらい造るのか」を決定するための計画案作成真っ最中ですが、造りが始まってからは、ただひたすらに打ち込むしかできなかったこの二年とは違い、計画を立てる段階ですでに「どうしたら、自分達の酒が楽しく飲んでいただけるのか」をしっかりと考える余裕をもって臨もうとする自分の(頭の中の)姿勢に自分でもビックリしています。これは酒造りに携わる人間なら当たり前に出来なければいけない事ですし、今までも当然考えながら酒造りをしてきましたが、少し成長したようです。

今年度のお酒には、自分を支えて下さる方、いつも天寿を飲んで下さる方、これから天寿ファンになって下さる方に気持ちが伝わるお酒が届けられるよう、さらに努力して参ります。新酒ができるのを楽しみにお待ちくださいますよう宜しくお願い致します。

思 い
2014-07-01

思 い

代表取締役社長 大井建史

秀麗な鳥海山が毎日のように姿を現し、梅雨に入る寸前の落語を楽しむ会まで、夏のような暑い日も少々ありましたが、とても穏やかでさわやかな春の季節を過ごしました。

入梅と共に各地からゲリラ豪雨のニュースが相次ぎ、異常気象とは一時的な現象と言うより、地球が本格的に壊れて来たのではないかと、子供たちの為に心配になります。

今年創業百四十年を迎えた弊社ですが、代を繋ぐ為の立地条件が歴代で最も困難になっています。人口の流出及び減少・少子高齢化・農業人口の極端な高齢化と後継問題・空き家や空地の放置・野生動物による農作物被害・山林の荒廃、そのスピードは地元に住んでいても驚くほどです。私も町に対する思いはあっても中々思うに任せぬまま、酒蔵存続に奔走するこの頃であります。

そんな思いもあって、弊社のイベントは企画されています。矢島雪まつりに発展した天寿蔵開放、雪室開封や天寿を楽しむ会。鳳楽師匠を迎えての酒蔵寄席もその一つです。一席二十分程の通常の寄席に比べ、独演会であるこの会は、二時間かけて噺家が思う存分話芸を発揮してくれます。まして師匠の様な名人クラスの噺に、矢島の地でたっぷり浸る事が出来る非常に貴重な機会です。地元からの参加者は三分の一以下と少し残念ではありますが、他町や遠く県外からご参加下さる方も沢山で、いずれも天寿を楽しみたいと集まって下さる方々ですから大変うれしく大歓迎です。人が少なくなる程、人が集う場・晴れの場を創出し、活性化の一助となる事は大事ですよね。今年は小野新副市長(高校同期)や秋田市から浅利香津代さんも駆けつけて下さり、花を添えて頂きました。

6月13日「海中熟成酒プロジェクト」の引き揚げセレモニーが、南伊豆町中木地区で開催されました。昨年の11月から伊豆半島の先端の水がきれいで有名な海中15~18m・8℃~13℃に貯蔵され、その安定した温度と海中の揺れの中で熟成されました。瓶にはふじつぼ等が付着し、海中での長い時間の流れとロマンが感じられます。

このプロジェクトも人と人の繋がりや縁と、関係したダイバーの方々や商工会や役場の皆様のご努力、参加した15蔵、そして南伊豆町への思いで実行できました。本当にありがとうございました。

今後も地域の元気のもとに成れる様努力して参ります。ご指導ご鞭撻のほどよろしくお願いいたします。

新年度に向けて

杜氏 一関 陽介

梅雨も中盤、私としては原料米の生育状況が気になる時期になってまいりました。

もうすぐ夏本番と言いたいところですが、まだまだ寒暖の差が激しく、安定しない天候が続いております。そんな中、「天寿」の源となる天寿酒米研究会会員が育てる「美山錦」・「秋田酒こまち」の稲は少しずつ丈を伸ばし順調に成長を続けております。

昨年のこの時期は暑い日が続いたのも影響したのか、草丈が思ったより伸びて、後の収穫時の倒伏が予想された圃場もあったりと皆でいろいろと心配したのを思い出しました。本年度の現況は「五月中旬の田植えからこの間、若干気温が低温傾向ではあるものの、ひとまず順調に推移している様だ」との話をメンバーから聞き、少しホッとしているところです。

酒米研究会メンバーの日頃の努力への感謝はもとより、良質の米が地元にあるから酒造りが出来る事を有難く思い、私自身米についても今まで以上に勉強し酒造りに活かしていきたいと思います。

さて、蔵内では醸造期間中に使用した精米所の清掃がやっと終了致しました。言い訳になりますが、酒質の安定・向上を一番に考えて四月・五月は瓶詰・瓶火入作業を優先させた為、少々遅くなってしまいました。酒屋は清潔である事が不可欠ですので当然清掃は毎年丁寧に行うわけですが、前年度の反省点を踏まえた整備・改良を収穫期までに終了させ、万全の態勢で原料米の受け入れが出来るよう、これからの約三カ月で準備していきたいと思います。

六月三十日で平成二十五酒造年度も終わりです。しっかりスタートダッシュを決めて、新年度が良い一年になるよう頑張ってまいりますので今後ともよろしくお願い致します。

一歩一歩
2014-05-01

一歩一歩

代表取締役社長 大井建史

毎年の事ではありますが、今年も皆造(酒の搾りが全て終わる事)となり、大車輪で火入れ(熱殺菌)や酒蔵の片付けも終わりました。蔵人が田植えの準備に気忙しく家路につくと、その静寂に祭りの後の様な寂しさと、同時に満足して休息に入る蔵の充足感も感じます。百四十回目の酒造りが終わりました。

年末に品切れでご迷惑をおかけした純米大吟醸「鳥海山」を、今年は昨年より最大限増産に努め、四月はその瓶火入れと冷蔵倉庫収納に全力を尽くしました。それでも原料全体での玄米の使用量は増減の集計で3.4%増となりました。

今年の秋田県産米の品質は平年並みであり、昨年の高温障害による異常に融けない米とは違い、しっかりと味の出る米でした。一関杜氏は二造り目ですので昨年との大きな差に緊張したと思いますが、概ね満足の行く出来となりました。

また、秋田県企画の蔵付酵母も三年目でやっと分離され、今年から発売となります。他にも新酵母での醸造や醸造試験場との共同試験醸造で秋田生酛仕込にも挑戦いたしました。まだまだ商品化には早いものもありましたが、常に反省と改善の繰り返しです。何年たってもこれで良いと思う事無く、より上質を目指して挑戦です。

若手も一造り毎に成長し自信を深めていきます。四月からは東京農大短期大学から東京生まれの東京育ち高橋晶太君も新卒で入社し、意欲満々で仕事を始めました。百四十回目も収穫の多い酒造りになりました。

これらの新酒もPBを含め続々と出荷されております。是非お楽しみください。

話は変わりますが、天寿好きの農大ОBでヘリコプターの操縦をされている方から、何だかとてもうれしいお話を教わりました。以降がその文章です。

「ヘリコプターの操縦をしていますが、昨年の年末から、秋田の空のルールが変更になり、その際に「TENJU」という位置通報点が出来ました。添付ファイルでフライトチャートを確認して頂けるとわかると思いますが、秋田空港の西側海上に「TENJU」という三角形のポイントがあります。

特に航空会社のJALやANAの東京や大阪伊丹、名古屋セントレアなどからの秋田便は、風が東風の時にこのポイントを通過して着陸しています。

日常的に管制塔との交信では、管制塔から「リポートTENJU」との指示があった場合には、このポイントを通過し、上空で航空機側から「オーバーTENJU」と通報されます。」この通信を聞いていると天寿が飲みたくなるとおっしゃいますが…。

業界の方でないと判りませんし、なぜTENJUになったかはご本人も知らないようです。でも…なんかうれしいな!!今日の晩酌では一杯空ける度に「オーバーTENJU」なんてネ。

平成25年度の造りを終えて

杜氏 一関 陽介

ようやく雪も消え、矢島もいよいよ春の気配を感じられるようになりました。本年度の酒造りは四月十日をもって終了し、蔵の中は今期の後片付けを進めているところです。まず何よりも蔵人が健康で春を迎えられた事にホッとしているところですが、社内は吟醸酒の瓶詰め・瓶火入作業に追われております。

「お客様に飲んでいただくまでが酒造り」と社長にいつも言い聞かされており、お客様に美味しく飲んでいただく為、出来る限り最高の状態でお届けする為に社員一丸で取り組んでおりますので、今年のお酒にも期待していただきたいと存じます。

さて今年度の造りに関してですが、開始時は今年の米は良く溶けるといわれておりました。しかし天寿酒米研究会の米は溶けすぎる事はなく、平年通り良質で酒造りには非常に扱いやすく、昨年杜氏一年目での経験と、蔵人メンバーに支えられたおかげで原料処理から搾りまで順調で、天寿らしいキレイな作品に仕上がったのではないかと考えております。その年の天候によって米の出来は毎年違うわけですが、傾向は傾向として地元の農家の皆さんが安定した米作りをして頂いているおかげで、自分達も安定した酒造りができるという事を感じさせられました。

私自身、杜氏一年目の昨年はただ前を向いてただひたすら酒造りと向き合った一年でした。二年目も同じでした。ただ、言葉では言い表せない部分の経験値は上がっていると自負しております。今年経験したことを必ず来年度に活かすべくしっかりと反省し、一歩ずつ酒質と共にレベルアップして参りたいと思いますので、宜しくお願い致します。

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20歳未満のアルコール類の購入や飲酒は法律で禁止されています。