町に思う
代表取締役社長 大井建史
五月の最終土曜日に恒例の「天寿酒蔵寄席」と「利き酒会」を行いました。十二回目を迎えるイベントですが、この所鳥海山麓で開催される「菜の花祭」と同日となっておりました。今年はさらに「東北六魂祭」ともぶつかり集客に大変苦労致しました。小さい地域でも連絡が悪いと勿体ない事になりますね。
内閣府認定の地域産業おこしの会会員の佐藤晃一氏(前支所長)と、矢島の企業数社で町興し応援グループ「矢島未来ネット」を設立しています。グループ内での情報交換や議論がある訳ですが、町内の色々なグループが強い思いと手弁当で活動をしているのに、それを調整する機関がありません。どんなグループがどの様な意図を持ってどんな内容のイベントを何時行うのか?せめて把握している団体には行政絡みのイベントも含め、全体のスケジュール・情報(目的・内容・経緯・場所・日時等)を共有出来る様に、ネットで検索できれば良いのですから、小規模になった支所(元役場)の観光担当にお願い出来ないものでしょうか?
今回の例会における佐藤氏の視察報告で、中高関連校舎建設で存続した矢島高校ですが、また秋田県の見直しが行われており、今後三年間の生徒数で趨勢が決まる様との事。その解決策のヒントとして同じ状況だった隠岐ノ島海士町の島前高校のV字回復や矢島の産業モデルとして、日本最大のジャージー牛の里「蒜山高原」の産業化・「農業法人伊賀の里モクモク手づくりファーム」の企業化と人口の多さではなく、明確なコンセプトと企業化する強い意志を持った人であるとの大変貴重で示唆に富んだ講演を頂きました。
まずはこの三か所を勉強し、矢島出身の議員・役場支所職員・ユースプラトー職員・矢島の町づくりに思いのある市民がそれぞれに研修の機会があるなら一番に行ってみるべき場所と思いました。矢島高校の修学旅行も宜しいのではないでしょうか。それによって矢島の町造りや観光の向かうべき方向・コンセプトが定まるかもしれません。(興味の有る方は佐藤晃一氏に是非お問い合わせください)
この所お会いする皆様に確実に「太りましたね!」と言われる今日この頃ですが、人間ドックでも「あれもこれも病気にギリギリ半歩手前??全ては肥満からです。」とのお医者様の一言。とにかく旨い酒と肴を食べ続けられる為にと、さわやかな天気が続く矢島の里でウォーキングを始めました。
妻にも同行を頼み三日目をクリアし十日も過ぎました。野菜中心の食事になるよう努力し、炭水化物を減らしているつもりですが、今の所体重には大した変化はありません。町推奨の五キロコースを一時間弱で歩くのにも少し余裕が出て来た様な気がします。朝の光が当たる鳥海山は美しく雄大で、田植えが終わったばかりの田んぼも清々しく、我々が歩く励みになります。
運動の為にジャージをはくのも運動靴を履くのも随分久しぶりですが、「二人でだったら何とか続けられそうだね」と妻と仲良く歩くこの頃です。
『考える夏』
杜氏 一関 陽介
桜の花が咲き誇っていたのがつい先日のような気がしてならないのですが、あっという間に梅雨のジメジメした気候になり、いよいよ夏が来る気配すら感じるようになりました。
蔵の中は忙しかった瓶詰瓶殺菌が終わりホッと一息…といきたいところですが、品質管理を第一優先に考え製造部全員で取り組んだ結果、造りの方では一部まだ細部の機械整備・清掃等を残してしまっているのが現状です。
清掃は酒屋の仕事で一番大事と言える作業です。作業の遅れを反省するのは当然ですが、いつもよりさらに丁寧にやらなくてはいけません。秋が来ればまたその道具を使って酒造りをするのですから愛情を込めて手入れする心がけを忘れないようにしたいものです。
話は変わりますが、五月下旬に発表された全国新酒鑑評会にて入賞を果たしました。私が杜氏に就任して三年。三年連続三回目の入賞です。これに関してはクセの少ないキレイな吟醸酒が出来ている評価だと前向きに捉えております。出品するからには金賞を取りたい一心で取り組む訳ですが…金賞に届かない理由があるのでしょう。「来年こそは‼」頑張ります。
そして、その理由を考えたり来年はどんな事にチャレンジしてみようか等、最近は「考える時間」を意識的につくるようにしています。杜氏としてこの三年間は、今までの天寿の味を引き継ぐことをテーマにひたすらに走ってきました。百四十余年続く弊社の酒造りの歴史の中でまだ、たったの三年ではありますが心の中はプレッシャーに押し潰されそうで、悩む事は沢山あっても考えることは少なかった気がします。
仲間と一緒に歩んだこの三年で「自分は何をしてきたのか」「三年間の酒質はどうだったのか」「会社の造りたい酒・お客様に伝えたい酒はどんな酒質なのか」そんな事を毎日考えています。反省点は自分の中に書き留めるとして、今思う事を書かせていただくとすれば、自分の造った酒がいろんな人の為に力を添えるもので在って欲しい。一人で飲む安らぎの酒、大勢で飲む楽しい酒・悲しい酒でも良いと思います。ただ飲む人が必ず前向きになれる酒を醸せればと思います。
その為に自分達は何をするのか。「毎日反省をしっかりする事」「何事もベストを尽くす事」「一つ一つの作業に気持ちを籠める事」「飲む人の気持ちを考えて造る事」だと考えます。
酒米研究会メンバーの圃場を回ると順調に稲も生育しているようです。来期の造りが始まるまで有意義な『考える夏』にしたいと思います。