思 い
代表取締役社長 大井建史
秀麗な鳥海山が毎日のように姿を現し、梅雨に入る寸前の落語を楽しむ会まで、夏のような暑い日も少々ありましたが、とても穏やかでさわやかな春の季節を過ごしました。
入梅と共に各地からゲリラ豪雨のニュースが相次ぎ、異常気象とは一時的な現象と言うより、地球が本格的に壊れて来たのではないかと、子供たちの為に心配になります。
今年創業百四十年を迎えた弊社ですが、代を繋ぐ為の立地条件が歴代で最も困難になっています。人口の流出及び減少・少子高齢化・農業人口の極端な高齢化と後継問題・空き家や空地の放置・野生動物による農作物被害・山林の荒廃、そのスピードは地元に住んでいても驚くほどです。私も町に対する思いはあっても中々思うに任せぬまま、酒蔵存続に奔走するこの頃であります。
そんな思いもあって、弊社のイベントは企画されています。矢島雪まつりに発展した天寿蔵開放、雪室開封や天寿を楽しむ会。鳳楽師匠を迎えての酒蔵寄席もその一つです。一席二十分程の通常の寄席に比べ、独演会であるこの会は、二時間かけて噺家が思う存分話芸を発揮してくれます。まして師匠の様な名人クラスの噺に、矢島の地でたっぷり浸る事が出来る非常に貴重な機会です。地元からの参加者は三分の一以下と少し残念ではありますが、他町や遠く県外からご参加下さる方も沢山で、いずれも天寿を楽しみたいと集まって下さる方々ですから大変うれしく大歓迎です。人が少なくなる程、人が集う場・晴れの場を創出し、活性化の一助となる事は大事ですよね。今年は小野新副市長(高校同期)や秋田市から浅利香津代さんも駆けつけて下さり、花を添えて頂きました。
6月13日「海中熟成酒プロジェクト」の引き揚げセレモニーが、南伊豆町中木地区で開催されました。昨年の11月から伊豆半島の先端の水がきれいで有名な海中15~18m・8℃~13℃に貯蔵され、その安定した温度と海中の揺れの中で熟成されました。瓶にはふじつぼ等が付着し、海中での長い時間の流れとロマンが感じられます。
このプロジェクトも人と人の繋がりや縁と、関係したダイバーの方々や商工会や役場の皆様のご努力、参加した15蔵、そして南伊豆町への思いで実行できました。本当にありがとうございました。
今後も地域の元気のもとに成れる様努力して参ります。ご指導ご鞭撻のほどよろしくお願いいたします。
新年度に向けて
杜氏 一関 陽介
梅雨も中盤、私としては原料米の生育状況が気になる時期になってまいりました。
もうすぐ夏本番と言いたいところですが、まだまだ寒暖の差が激しく、安定しない天候が続いております。そんな中、「天寿」の源となる天寿酒米研究会会員が育てる「美山錦」・「秋田酒こまち」の稲は少しずつ丈を伸ばし順調に成長を続けております。
昨年のこの時期は暑い日が続いたのも影響したのか、草丈が思ったより伸びて、後の収穫時の倒伏が予想された圃場もあったりと皆でいろいろと心配したのを思い出しました。本年度の現況は「五月中旬の田植えからこの間、若干気温が低温傾向ではあるものの、ひとまず順調に推移している様だ」との話をメンバーから聞き、少しホッとしているところです。
酒米研究会メンバーの日頃の努力への感謝はもとより、良質の米が地元にあるから酒造りが出来る事を有難く思い、私自身米についても今まで以上に勉強し酒造りに活かしていきたいと思います。
さて、蔵内では醸造期間中に使用した精米所の清掃がやっと終了致しました。言い訳になりますが、酒質の安定・向上を一番に考えて四月・五月は瓶詰・瓶火入作業を優先させた為、少々遅くなってしまいました。酒屋は清潔である事が不可欠ですので当然清掃は毎年丁寧に行うわけですが、前年度の反省点を踏まえた整備・改良を収穫期までに終了させ、万全の態勢で原料米の受け入れが出来るよう、これからの約三カ月で準備していきたいと思います。
六月三十日で平成二十五酒造年度も終わりです。しっかりスタートダッシュを決めて、新年度が良い一年になるよう頑張ってまいりますので今後ともよろしくお願い致します。