挑戦
代表取締役社長 大井建史
お盆が過ぎ、7月22~23日の秋田県内の豪雨被害総額二二六億円超で未だに一部道路では通行止めが続いておりますが、耐え難いほどの暑さは一段落したような気候が続きます。晴れても日陰で風が吹くと気持ちの良い感じになってきました。契約田の酒造好適米もお陰様で花をつけ、強風でもまれた痕も見えますが順調な生育をしている様です。
今年は「山の日」が出来たせいか、盆休みが早く始まった感がありました。11日は10年に一度の高校同期会を幹事長として開催し、皆で高校時代に?戻ったつもりではしゃぎました。その光景を眺めながら、地元住民比率が低い事と、久しぶりに故郷に戻った友のうれしそうな顔、親の新盆で帰省した人も数名、実家の始末の為という人もあり、それぞれに様々な事情がある訳ですが、だからこそ地元を守る者がこの様な会も進んで行いながら、ゴーストタウンとならない為に、気張る必要があるのです。
都会との時間的距離は非常に短くなり、ⅠT系の環境も劇的に向上して来ました。しかし、秋田県は人口の減少率日本一を走っており、我が町も老齢人口が40%を超え、開墾に汗と涙を流した父祖の土地は山野へ戻り始めました。日本鹿・日本カモシカ・猿・熊等も天敵である猟師の激減により急増し、自然環境も目立って変わって来た感があります。なにしろ過疎の町とは言え、駅前を日本カモシカが散歩していたりするのですから。
しかし、最大の人口・最高の成長の時代と比べて儚んでも仕様がありません。百年前と比べると人口も多く遥かに恵まれた環境にあるのです。
確かに生活環境を落とす事は非常に困難な事ですし、不便で不安な所に縛り付けられるのは、将来的に楽しい事ではありません。しかし、食料自給率も過去最低の記録を伸ばし、国の機能中枢の偏った集中を放置した状態の国の有り様が正しいとは思いません。
この地に立ち未来を思う時、新しい開拓が求められる時代なのだと思います。昨日見た雨の中行われた鳥海高原花立牧場フェスタでも、大きな農業機械が並び大変な環境の中で少数の若者が協力して汗を流す姿に、困難な中でもそれに立ち向かうフロンティア精神と彼らのタフさを感じました。
さて、今・これから・ここで・私達に何が出来るか。その為の準備もここ数年出来る限りやってきました。天寿酒造188回目の挑戦の時が近づいています。
ご期待ください!
思いを馳せる
杜氏 一関 陽介
盆が過ぎ、朝晩は涼しい風が吹くようになりました。毎年夏季休暇は墓参りに行くのですが、自分が今元気に生活できる事への感謝の気持ちを墓前でしっかり伝えられました。また、なかなか会えずにいた祖母と食事したり、家族と過ごす充実した時間を持つことができたような気がします。そんな夏の余韻をもう少し噛みしめていたい私の気持ちを無視するかのように季節は一気に秋へと移り行くわけで…。そろそろ心身共に酒造りモードへ切り替えていかないといけない時期になってきました。
そんなお盆期間中に行われる、全国高等学校野球選手権大会。甲子園を目指して地方大会を勝ち抜いた球児たちの熱い眼差しには毎年感動させられます。ある程度一定の打順やポジションはあるものの、仲間の体調や相手によって試合に出場できたり、できなかったり。時には裏方に回ることも。応援も含めて試合中にそれぞれが持つ能力をチームの為に出し尽くそうとする姿は美しいものです。当然勝敗はあるわけですが、その中身はチームの方針や監督の指示に従うだけでなく、自分で判断する部分や先を読む力など、細かい個々の力が試合を左右するように思います。
酒造りもチームプレー。方向性がブレていたり、誰か一人でも違う方向に進んだりしてもダメ。ミスしたい人などいないのだから、ミスした人を責めたりせず、全員で挽回し、できるならミスをした前よりも良くする。これがチームプレーの鉄則なのでしょう。時には持てる力を出しきれずに納得のいかないことがあるかもしれない。でもその時は全員で反省し、また努力すれば良い。大切なことを高校球児に再認識させられた私の夏季休暇でした。
さて、釜場の工事も佳境を迎え、自分達が作業する絵が想像できるようになってきました。何かが新しくなると、すべて新しくすれば良いような気持ちになってしまうのですが、大切なのは自分達が目指すところに到達する為に何が必要で何が足りないのか。それは道具ではなく技術も然りです。機械化は進んでいるものの、酒造りの基本スタイルは昔から変わっていません。変わっているところは、なぜ・何の為にそうしていたのか、今一度先人達に思いを馳せてみたいと思います。昔に戻るのではなく、前へ進む為に。