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蔵元通信

日頃お世話になっている皆様に、私ども天寿酒造が何を考え・守り・求め・挑戦しているのか、その思いをお伝えしご理解いただくために、「蔵元通信」を発行しています。
お酒はどのような狙いで造られたものなのか、季節や旬の食べ物に合うお酒、また飲み方、そして鳥海山の登山口であるこの矢島町の様子などをお届けいたします。

家譜
2017-03-01

家譜

代表取締役社長 大井建史

今年は二月早々から雨が降る暖冬で、一月後半には雪の量も例年に追い付いたかに見えましたが、暖かい空気が何度も入ることで雪消えも急速に進んだようです。激しい寒暖差はありましたが、蔵は雪に覆われて低温で安定しており、蔵人の頑張りもあり、品質的にも順調に推移しております。

二月二十七日に発表された「ワイングラスで美味しい日本酒アワード二〇一七」で、大吟醸部門では純米大吟醸 鳥海山が最高金賞・大吟醸 鳥海が金賞、メイン部門(一・八L 二千六〇〇円/税別以下)で初槽純吟生酒が最高金賞・天寿純米酒が金賞を受賞いたしました。

このコンクールの審査に使用されているリーデル大吟醸グラスは、十三年前に発売されたのですが、実はその開発の審査員を私も務めておりました。百数十個のグラスの中から一つに絞り込む審査を一年以上かけて選ぶ中、グラスの形が如何に味や香りに影響するのかを、頭では判っていたつもりでしたが、この体験は良い意味でその影響の大きさを思い知った貴重な体験となりました。そのリーデル社が後援するコンテストで最高金賞を受賞できた事に大変感銘を覚えます。

さて、昔で言う隠居している六代目永吉が、地元の古文書研究会に所属しており、本家五代目大井幸左衛門光曙が記録した本家文書「本末親類帳」を読み解いたところ、初代永吉は本家二代目弟平兵衛の次男伴内を本家三代目が養子としたが相続ないまま病死、その子の栄吉を本家四代目が文政十三年(一八三〇年)八月十六日分家し、矢島藩御用達の酒屋だった本家で学んだ技で濁酒と麹の製造を生業としたと記されていたとの事。分家して名前を栄吉から永吉に変えたそうです。

これまで、清酒免許を取得した明治七年を創業年としてきた事も間違いありませんが、正式に分家の年が明確となり、どういう流れで分家したのかも(複雑ではありましたが)判りました。六代目は「濁酒ではあるが文政十三年創業とする方が妥当」と言っております。そうなると弊社は今年創業百八十八年となります。これまでは「清酒免許を取得したのは二代目永吉の晩年で、四代目は三代目より先に亡くなりましたが、その子(私の祖父)がしっかり仕事をしていた父親を四代目としたい為五代目を名乗りましたので、清酒業としては二・三・五・六・七代となり、私は実質五代目です」と説明が長~くなるのです。七代目と名乗る割には年数が短いのではなどと妙に詳しく突っ込まれても、これで年数的にも違和感なく説明が出来そうです。

と言う事で、皆さま百八十八回目の酒造りも終盤となりました。渾身の酒造りによる新酒が毎日のように生み出されています。ご愛顧のほどよろしくお願い致します。

2月のイベントを終えて

杜氏 一関 陽介

酒造りに集中していると時間が経つのも早いもので2017年も2ヶ月が過ぎ、まもなく春を迎えようとしています。最高峰である全国新酒鑑評会出品酒も数日前に無事に搾り上げ、私も少しホッとしているところです。杜氏就任から5年目の酒造り。そろそろ全国新酒鑑評会「金賞」が欲しいところですが…。

新年になり、日本名門酒会企画の立春朝搾り、また天寿酒蔵開放と2月はイベントが続きました。どちらもその日に搾ったお酒を当日出荷するのですが、その日に向けて酒を醸すのは良いとして、搾る日がイベント開催日に限定されるというのは造り手には難しい課題です。

立春朝搾りの参加は杜氏として5回目になりました。詳しい事は書きませんが、例年と同じスペックの中で何か「立春」の朝に搾った事をお酒の中に表現したいと思い、少し仕込み経過を変えてみました。結果としては味乗りも良く微発泡でフレッシュ&ジューシーに仕上げることができ、立春の朝の清々しさが表現できたと自負しております。来年は今年以上に色々な方に飲んでいただきたいと思っております。

話は変わりますが、これも毎年恒例になりました酒蔵開放は2千人を超えるお客様を迎え盛会に終えることができました。ご来場下さいました皆様には御礼申し上げます。この日もまた当日の朝に搾る「朝しぼり」の販売がありました。立春朝搾りと違うところは、当日蔵にいらっしゃったお客様がその場で試飲をしてお買い求めになるというわけですから造り手としては酒質がダイレクトに売り上げにつながり少し怖いものです。ただ、これの良いところは当日お客様の声・反応を私達が直に感じる事ができるところにあります。当日の「美味しい」という声に救われるのです…(笑)そして明日の励みになるのです。

この2つのイベントに限らずして、飲むシーンに合わせたお酒の提供をするために酒質設計があります。これからもお客様の声をよく聞いて自分の力に変えていけるように、また新しい発想というのも人との会話の中から生まれると感じますので、自分の造りに生かせるよう色々な人との会話を大事に生活したいと思います。

ともあれ、今期の仕込みもまだ1ヶ月残っています。一層気を引き締めて頑張る所存ですので、今後とも宜しくお願い致します。

吟味して醸す
2017-01-01

吟味して醸す

代表取締役社長 大井建史

明けましておめでとうございます。旧年中のご愛顧に心から感謝申し上げます。

天寿の酒蔵では年初めから大吟醸の仕込が始まります。お陰様で昨今は純米大吟醸を含む大吟醸クラスの仕込数が増え、蔵人達の緊張が高まる酒造りが続きます。中でも全国新酒鑑評会出品酒の仕込ともなると、技術的な挑戦も加わるため、杜氏の号令のもと一丸となり、その年の集中のピークの時になるのです。

酒蔵は昔から吟醸造りにこだわって来ました。蔵の持つ最高の技術を発揮し、新しい技術的挑戦をする機会を毎年持つ事。これこそが日本酒史上最高の品質を作り上げた基だと思います。現在のような高精米は縦型精米機が出来てから可能になりました。全国にその精米機が普及したのは昭和に入ってから、思う存分高精米に挑戦できるようになったのは、戦争もあり昭和四十年代から一般的には五十年代に入ってからだと思います。

弊社は昭和四十七年から大吟醸の販売を開始しましたが、これはかなり早い方だったようです。さばけの良い蒸米を創るために無理な加熱で釜を割ってしまったり、米の統制時代に精米歩合を上げるために密かに米を買い足したり、吟醸香を出すため低温で酵母を攻めすぎて発酵が止まりタンク丸々一本ダメにしたりと、日本酒業界をあげて努力して参りました。私自身も過去に品質基準に達しなかった三本の大吟醸を、残念ながら本醸造(旧一級酒)にブレンドしたことがあります。自戒として強烈なインパクトが残った経験でした。

この頃、吟醸酒を「香りの有る酒」と表現する人がいます。その中には「生酛・山廃の純米こそ味わいの酒」と短絡的な考えで、吟醸は香りの出る酵母を使えば直ぐ出来ると思慮の浅い発言も見受けられます。ワインに例えるとどちらも素晴らしい酒なのに「赤ワインこそが本物で、白ワインは簡単でとるに足りないものだ」と言っている様なものです。日本酒の雰囲気がやっと良くなってきた気配が感じられるのに悲しく思います。

吟味して醸す究極の「大吟醸」を目指し、仕込(原料米・精米・浸漬・蒸米・酵母・酒母・麹・もろみ・上槽・火入れ・貯蔵)全ての細かい違いに血眼になって研鑽をかさねてきました。だからこそ全ての酒造りで使われる今の技術が出来、今の酵母が出来、今の味わいがあるのです。

日本酒に対する深い愛と理解を持って頂けるよう、微力ながら尽力して参ります。

今年もよろしくお願い申し上げます。

五造り目を迎えて

杜氏 一関 陽介

あけましておめでとうございます。旧年中は大変お世話になり誠にありがとうございました。今年も美味しい日本酒をお届けできるよう製造メンバー一丸となって頑張る所存ですので、何卒ご指導ご鞭撻の程宜しくお願い致します。

さて、前号では設備の更新により少し準備が遅れハラハラのスタートを切ったというようなお話を致しましたが、それから早いものであっという間に二ヵ月が経過してしまいました。平成二十八年度産の原料米は溶けが悪いという予測でしたので、新酒しぼりたてに関してはしっかりと味が乗るようにと考え仕込みを行いました。ご賞味いただけましたでしょうか?

私としては予想以上の米の難溶性に苦労し、仕込み開始時に頭で想い描いていたものよりキレイでスッキリと仕上がったという印象を受けています。それでも純米吟醸酒はキレよく華やかで、純米酒は爽やかな酸味と旨味の程良いバランスが表現できたと自負しておりますので、まだ飲まれていらっしゃらない方は是非お試しくださればと思います。

蔵の中はというと、既に仕込みは中盤戦に突入しており、間もなく最高峰である鑑評会用の大吟醸の仕込みも始まります。米の浸透方法が変わった事で造り序盤は吸水時間等に少々戸惑ったものの、会社から新設していただいた蒸米機に替わった事で外硬内軟で安定した蒸米になっていると感じています。天寿に入荷する原料米すべてが契約栽培米であり、一粒一粒に想いのこもった米を如何に良い酒にするかを蔵人全員で考え前に進もうと思います。

前にも書いた覚えがありますが、日本酒は人(私達)が造って人(お客様)が飲む物です。商品には私達の想いが良くも悪くも必ず反映されます。私達が米農家さんに感謝して毎日の酒造りを切磋琢磨し、飲み手の気持ちになって楽しんで造る。美味しい酒にはそれが必要だと感じていますし、その為に杜氏として良質な酒を醸す事は当然ながら、毎日の仕事の中でより良い商品にする為に相手を尊重し意見を出し合い向上しようと皆が努力するチーム作りが重要と考えています。

毎年同じ気持ちではありますが、残り約三ヵ月の酒造り。真剣に、また楽しい酒造りを心掛け、皆様に飲んで楽しんでいただけるような伝わる酒を目指し努力する事をお約束して新年のご挨拶とさせていただきます。

百四十三回目の酒造り
2016-11-01

百四十三回目の酒造り

代表取締役社長 大井建史

稲刈りも終わり錦秋の見どころも過ぎて味覚の秋真っ最中の昨今、酒蔵ではいよいよ百四十三回目の酒造りが始まりました。

今年は設備更新に力を入れて参りました。三月の冷凍冷蔵倉庫の竣工後に、ものづくり補助金を獲得するべく努力しました。大規模な設備投資はなかなか厳しい酒蔵にとっては、ものづくり補助金制度(なんと費用の三分の二補助されます!)は本当にありがたい限りです。お陰様でその補助金を獲得する事が出来、試験してきた生酛造りの精度向上の為、頻繁に分析をするための機器を導入しました。また、蒸米もより上質な蒸しを行うために、『連続蒸米機』を和窯と同じ完全な『バッチ式間接蒸気型』とし、生酛の酒母がしっかり・じっくりと乳酸発酵出来る設備も導入、よりおいしい日本酒造りに邁進出来る設備としました。何回も自社改造してきた蒸米放冷機も完全オーバーホールを行いました。

酒造りの最終の工程である上槽(お酒を搾る事)は槽場(ふなば)で行われますが、春先に温度が高くなると様々な雑菌に汚染されやすい場所です。この度温暖化や酒造りの長期化に対応して冷蔵庫化し、槽場の温度の上昇を防げるようにしました。

醸造機械のメーカーは中小企業が多く、長年の低迷が祟り製造能力が小さいため、設備の納品がギリギリとなり、また、補助金制度の対象となる年内完全納品に間に合わず、断念せざるをえなかった大きな設備も有り大変残念な面もありました。

弊社としては大きな酒蔵改造となる為、慎重な検討をした結果、酒蔵の中枢である窯場の建物の改築も一年延期となってしまい、今期の酒造りは設備を仮置き状態で何とか進める事になりました。それでも、皆造(お酒を全て造り終わる事 )早々に改築工事にかかるため、高圧線の引き込みを地下埋設に直したり、工事通路を設置するなど着々と準備を進めております。

品質の維持・向上には「後で」という言葉は通用しません。一つ一つを積み上げて抜かりのない状況を作って初めて先に進む事が出来ます。

慌てず・騒がず・着々と百四十三年間日本酒を造り続けてきた誇りと伝統を糧に、より良きものを目指します。今期もご愛顧の程よろしくお願いいたします。

五期目の酒造り

杜氏 一関 陽介

最低気温が十度を下回る日が増え、鳥海山も山頂付近が薄っすら雪化粧し、いよいよ酒造り本番がやって来るのだと感じられる季節になりました。

蔵内では今期、品質・作業性向上の為に設備の新設・更新を行っていただいており、その関係で例年より造りの準備が若干遅れてスタート致しました。仕込み日程に間に合うのか・・・と自分で立案したはずの計画にハラハラしておりましたが、蔵人総出で清掃・機械メンテナンスに取り組んで、無事に今期の初蒸しを二十五日に迎えるところまで漕ぎつける事ができホッとしているところです。蔵のメンバーには本当に感謝です。

どんなに良い機械を持っていても、目的に合った使い方が出来なければ意味がなく、造る物が高品質でなければなりません。また機械がお酒を造るのではなく、私達が目指すお酒を造る為の手助けをしてくれる大切な仲間ですから、機械の特徴を一早く掴んでコミュニケーションをとることが重要です。十二月に発売になる新酒にいかに反映されているかご期待下さい!

さて、今期の酒造りがスタートし、概ね今期の製造計画は出来上がっております。所謂特定名称酒の仕込みが増え、春まで緊張が絶えない日々が続きそうです。 私が入社した十三年前は普通酒(精撰)の比率が高く、特定名称酒比率は30%程で、純米大吟醸の仕込みは数本だった記憶があります。私が杜氏を勤めさせていただいて四年になりますが、その間も精撰の製造量は残念ながら減少してしまっています。

ただ、私が天寿で学んだ酒造りの原点は紛れもなくこの精撰であり、天寿の味の基本だと考えています。何ひとつ手を抜く事なく、多くの繰り返しの中に醸される安定。そこに輝く何かが生まれる事を忘れてはいけないと思います。

酒類は違えども、皆様に美味しく飲んでいただく為の想いはどの商品一本とっても同じです。原点回帰ではありませんが、今までやってきた事をしっかりと忠実に、またそこからチャレンジする事も忘れずに社員一丸で今期も酒造りに取り組んでまいりたいと思います。

健気なるかな兵共よ
2016-09-01

健気なるかな兵共よ

代表取締役社長 大井建史

感動のオリンピックも終わりましたが、まだまだ暑い日が続いております。皆様お元気でお過ごしでしょうか?

天寿酒米研究会産契約栽培酒造好適米も、この一か月間ですっかり成長し収穫の時期が楽しみになって参りました。高温障害を心配した時期もありましたが、今年は早めに昼夜の寒暖差が大きくなり、高温時の水の掛け流しなど水管理も適切になされ、刈取りまでのあと一か月台風等で倒れないでくれると万々歳なのですが…。

昨今は私にも年寄り役が回って来る事が増え、腹囲や筋力からももう若者では無い事に気が付いてはおりましたが、オリンピック期間中の涙腺崩壊スピードには自分でも閉口してしまいました。それ程感動的な選手の皆さんの頑張りが、今回のオリンピックにも多かったと言う事ですよね。

長年の練習の積み重ね・戦って勝ち抜いての代表決定・国の代表である事のプライドとプレッシャー・その全てを背負って進み行く者、倒れる者。一途に賭ける清らかさ・清々しさ・溢れる思い。昔読んだ戦記物語にあった、進み行く勇壮な部隊を眺め「健気なるかな兵共(つわものども)よ」と感涙した将軍の言葉が頭を過ぎり又感涙です。

この数年お陰様で日本酒に対する注目度が上がって参りました。業界も四十年にわたる低落傾向に沈んでおりましたが、嗜好品である醸造酒の基本に返り、原料・製造方法の基本を見つめなおし、《吟味して醸すとは》を徹底的に問い直す事によって、現在の注目を頂ける酒に出来たと思っております。

ここにきて若手の蔵元のつわもの共が元気に台頭してまいりました。日本酒の業界は昔から他社の酒蔵見学等、自社の技術を隠す事無く公開し、共に研鑽する歴史を持っています。従って十年二十年かけてたどり着いた技術も、真似だけなら直ぐに出来ますし、紆余曲折の結果出来た設備もそのままなら直ぐ導入出来ます。しかし、そこにたどり着く技術開発の方向性と精神は、設備の導入だけでは簡単に習得出来ません。

味の流行りや、成功例の模倣は近道ではあるでしょうが《吟味して醸すとは》如何なる事かを大切にしないと、何処かで道を間違うことになりますし、吟醸を取り違えて「香りのある酒」などと言ってしまうことになります。吟味して醸した酒には風格が伴うと思います。

残り二か月で酒蔵の整備を大車輪で進め、百四十三回目の造りに備えます。

百四十三歩目の進化をご期待ください。

チームプレー

杜氏 一関 陽介

日中の暑さも少し和らぎ、秋がすぐそこまで迫ってきているような気候になってまいりました。盆が過ぎ、蔵内は純米粕詰とひやおろしの出荷にフル回転。仕事ができる喜びをかみしめている所です。

さて、この夏はリオ五輪が行われ、日本チームは過去最多の41個のメダルを獲得する等、日本中が大いに沸きました。私も30代前半で若いつもりでいましたが、五輪で活躍しているほとんどが10代~20代。世界一を目標に、自分より若い世代がこれまでの成果を発揮する姿に心を打たれ、自分も負けてはいられないと奮起致しました。

眠い目を擦りながら早朝からテレビの前で応援しましたが、団体競技を自分の環境に置き換えながら見ている事に気がついたのです。

体操競技のように、各自の得意種目の点数を積み重ねる事で技術力を競う競技や、リレー等各自の力を繋ぎ合わせて競う競技等がありますが「酒造りにはどちらの要素もあるな・・・」と感じました。

蔵の中で考えれば、精米から瓶詰までの様々な工程に人員が配属され、各々がベストを尽くして次工程へと繋ぎ、金メダルが獲れるお酒になるように願って瓶に詰めています。そのあたりが五輪の競技に似ていると思うと同時に、私達にとっての金メダルとは何だろうかと考えました。

弊社は国内はもとより海外で開催されるコンテストにおいても、これまで沢山の賞をいただいてまいりました。このような賞は励みになりますし嬉しい事ですが、何より、飲んだ人が美味しいと感じた時に出る笑顔が一番の金メダルだと改めて思いました。そして、その笑顔を続けてもらう事が大事だと考えました。その為にも必要であり、チームプレーにとって大切な次のような事も学んだ気が致します。

・皆が同じ目標を持つ

・高い技術力集団である

・仲間を信じ失敗・成功を共に分かち合える

・自分の力を信じる

・支えてくれる人への感謝を忘れない

迫りくる次期の酒造りに活かし、良好なチームプレーで美味しい酒を目指したいと考えております。ご期待下さい。

希望
2016-07-01

希望

代表取締役社長 大井建史

秋田も梅雨に入り田んぼの稲も徐々に背が伸び、鳥海山を中心に緑濃い季節となってまいりました。

今年も海外で開かれる最大かつ最難関のコンテストと言われるインターナショナル・ワイン・チャレンジ(IWC)の審査が行われました。本年は日本酒審査部門の十周年と言う事で山田錦の産地・兵庫県が誘致し、ロンドンから神戸へ審査会場を移しての開催でした。

弊社では純米酒の部の「天寿 米から育てた純米酒」金賞 秋田トロフィーを先頭に「大吟醸鳥海」「天寿大吟醸」が銀賞、「天寿純米大吟醸」「純米大吟醸鳥海山」が銅賞とお陰様で五点が入賞致しました。今年のお酒も評価を頂き安堵しております。

また、商品の審査ではありませんが、国内で最も古く権威の高い全国新酒鑑評会入賞酒の一般公開が行われる、日本酒フェア(於サンシャインシティ)に今年も行って参りました。入賞酒一般公開は今年も沢山の方が来場されており、酒蔵関係者以外の方々の参加も多く有り難いことだと思いました。

一方、併設で開催されている各県や団体などがPRの為に出店している日本酒フェアも大変な人出で、始めた頃の人集めに必死だった事など想像もつかない活況でした。日本全国、各県の各銘柄の皆さんがとても元気で、業界として大変有り難い事だと思いました。我々世代が苦闘していた、ひたすら落ち込む明りの見えない時代に、お酒の本質を伝えきれなかった事を自分達の責任と考え、自分の銘柄を売り込む前に日本酒の魅力とその姿をひたすらアピールする事に尽力しました。こうして地盤を固めた上で個々に品質の向上に取り組み、その成果を全て公開しながら、業界の発展を目指して来た世代にはまぶしい感じがいたします。

これ程改善例を社秘にせず、非常に判りやすく開示されている業界も珍しいと思います。何よりも違うのは今までの「良いものを造っても売れるとは限らない」と言う状況からSNS等情報ツールの発達や個人の発信力の増大等により「良い酒を造れば売れる」と強く思えること。輸出面でも可能性を疑い、売れない期間と経費の心配をしながら出かけた時代から、「頑張れば売れる」と言う確信を持って挑戦できる事が、如何に業界の元気の元になっているかと言う事です。理解してくださるお客様がいると言う事が如何に幸せな事か痛感しております。

皆様のご期待に応えるべく、只今も次の造りの品質向上・品質安定の為の仕込計画・設備更新を進めております。

今後ともよろしくお願い申し上げます。

『伝える』

杜氏 一関 陽介

梅雨に入り、ジメジメして天候の冴えない日が続いておりますが、皆様如何お過ごしでしょうか。蔵内は新酒の貯蔵作業も終わり、いよいよ夏の商戦へ向けて出荷準備に追われているこの頃です。非常にありがたい事に日々の作業が追い付かない程のご用命をいただき忙しい毎日ではありますが、商品が出荷されていく楽しさや自分達の造った商品を飲んでいただける嬉しさを当たり前と思わず努力して参りたいと思っております。

話は変わりますが、皆様は酒蔵を見学された事はありますでしょうか?天寿酒造では通年酒蔵見学を受け付けており、平日のみならず土日・祝日もご予約を頂ければ対応致します。ご家族連れやグループで、また各種研修やお取引先、取材の方々を含めると大変多くのお客様にお越し頂いております。大半は私を含め製品課員がご案内致しますが、それ以外の社員がご案内する場合もございます。ですから必ず正確に伝えなければならない事(会社の歴史や製造工程等)以外は案内人によって説明の仕方は多少異なります。その人が酒造りの現場で実際に体験した苦労話や、やりがい等を自分の言葉で伝える事が大切と考えます。それは私自身も工場見学が好きでお客様側の立場になる事がよくあるのですが、全てマニュアル化された案内はどこか心に響くものが無く感動を覚えないからです。

弊社では約1時間の見学時間を設定致しております。短時間ではありますが、自分達がどういう気持ちで酒造りに取り組み、商品にどういう背景があるのかをアピールさせていただけるという私達にとって最高の場です。ですから私達にはそれを完全にお客様に伝え、且つ楽しんでいただく義務があると考えています。「単なる説明」ではダメということです。

私は入社3年目頃から蔵見学を受け持つようになりましたが、今まで沢山の方にお会いしました。お客様によって利き酒したい・話を聞きたい等いらっしゃる目的が若干違うような気が致します。しかし、わざわざ弊社へ来ていただいているのは皆様同じですので、そのお客様にとっても、楽しんでもらえるように自分達に何ができるかを考え「また来たい」と思ってもらえるような楽しいひとときを提供したいと考えています。

人に物事を伝える事は大変難しい事だと実感していますが、これからも印象に残る説明と心に染みる日本語をご準備してお待ちしておりますので、初夏の鳥海山が綺麗な矢島まで是非足をお運びください!

祈り
2016-05-01

祈り

代表取締役社長 大井建史

この度の九州地方の大震災に対し、衷心よりお悔みとお見舞いを申し上げます。

ニュース映像や新聞で被災地の様子を見るとどうしても5年前が思い出されました。3・11のあの日、私は輸出の仕事で香港に向かう飛行機の中でした。到着後ホテルのテレビで津波の映像に驚愕しながら、必死で電話やメールに挑戦しました。通じたのが意外にも携帯メールで、ガラ携の電話で家族・社員・会社の無事を確かめ、停電中の為蔵人と管理職以外は自宅待機を命じ、その他色々な指示をピコピコと一生懸命に入力した事を思い出します。3日後にたどり着いた羽田空港は、電気を落とし薄暗くて肌寒く売店にも食糧類はあまり並んでいなかったことを思い出しました。家にたどり着いた時、妻や子供たちの不安そうな顔が私を見て少し安心してくれた事と、携帯の警報音や余震で眠れぬ夜を過ごした記憶が蘇ります。

今は只、1日も早く地震が鎮まる事と、地域の復興が始まる事をお祈り申し上げます。

矢島の里は桜が5分咲きとなりましたが、気温が突然1℃まで下がったり大風が吹いたりと中々に異常な気象が続き、この通信の届く4月末には桜の花が残っているか心配です。うまく行きますと5月の連休が桜満開と成る年も有るのですが…。

お陰様で昨年より数本の増産で、季節社員の蔵人は一応予定通り15日に解散をしましたが、静寂を迎えるはずの酒蔵内は、まだまだ盛り沢山の作業に社員蔵人が忙しく仕事に励んでいます。

天寿では吟醸の文字が付いたお酒は全て瓶火入れ冷蔵貯蔵をしておりますので、3月20日に竣工した冷凍冷蔵倉庫にたっぷりと貯蔵しております。製造工程の最終部分の設備投資から始めましたので、何時までに出来るかは別として、いよいよこれまで我慢せざるを得なかった「連動する設備投資」を計画しはじめました。

蒸米のさらなる改善の為に、混入物質があると言われるボイラーの蒸気が一切直接入らず、100%間接蒸気となる古来からの和釜の蒸しを現代型にした蒸米機の導入。それに伴う釜場の改築。気温が上がっても菌汚染されない様に槽場の断熱と省エネ蓄冷機を使用した冷蔵化等々山積みですが、一つ一つ進んで参ります。

私が社長になった時に決めた方針全ては「地元で出来る最高の酒を目指す」為に!!

今年醸しました弊社のお酒がこれから続々と発売されて参ります。ご期待ください。

今やるべき事

杜氏 一関 陽介

4月5日に甑倒しを迎え、今年度の仕込みが終わりホッと一息。蔵人全員が健康で、事故もなくこの日を迎えられたことが何より嬉しく、長かった酒造りへの達成感でいっぱいです。とは言え、春が来て一気に暖かくなり、残っている醪や製成酒の品温管理に頭を悩ませております。

そのような中、4月12日・13日に東京都北区で行われた日本醸造協会主催の清酒製造技術セミナーに参加してまいりました。全国から技術者が集まり、今年度の酒の傾向や反省点についての意見交換や、新しい技術についての講義を受けました。仕込み期間が終わったばかりの私にとって、自分達が半年間取り組んできた事の反省や来年に向けて考えるべき課題は何なのかを見つめる良い時間を過ごすことが出来ました。思い起こせば、原料処理を向上させる為に、その肝である甑(米を蒸す機械)の修繕と改良を会社からしていただけることになった昨秋。仕込み開始数日前ギリギリに設置が完了し、仕込みが計画通り開始できるのかハラハラとした今期のスタートでした。来年度はそのような事にならぬよう、「何が良くて何がダメだったのか」「来年度の課題は何なのか」を今からしっかり考え、スムーズなスタートを切れるようにしていきたいと考えております。

4月15日を以て製造に関わる蔵人メンバーは解散を迎えましたが、年々増える特定名称酒の瓶火入れ作業の為に製造部総出で土日もフル回転状態です。これもすべてお客様に満足していただける商品作りの為であり、また酒造りができる私達の楽しさや喜びに変わると思えばありがたいことです。例年より少し早く矢島の桜も開花し、花見シーズンが終わると共に、夏向けの生酒商品も続々と発売になります。来年度に向けて今やるべき事を必死で考え取り組み、併せて皆様に安心して飲んでいただけるよう万全の品質管理で臨んでまいりますので、どうぞ宜しくお願い致します。

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20歳未満のアルコール類の購入や飲酒は法律で禁止されています。