心機一転
代表取締役社長 大井建史
新年おめでとうございます。
昨年中はご愛顧を賜り篤く御礼申し上げます。
隠居した六代目が本家古文書を発見した事により創業が文政十三年と改められ、社歴が四十四年延びた事を発表した昨年は株式会社創立五十周年の年でした。
五十一年目となるこの冬は雪も早く降り始め、年末恒例に成りつつある爆弾低気圧来襲に、寒さの中皆の雪寄せ作業でコツコツと対抗を続けております。
弊社としては大事業の酒母室と釜場の改築も完了し、将来的な醸造環境にも対応できる体制へと一歩ずつ進んでいます。
蔵人は杜氏や社員も含め十四人中五人が三年以下の新人に代わりましたが、酒造りも新しい型に挑戦し続けております。長年休止していた生酛も五年前から純米を皮切りに純米吟醸・本醸造・精選・純米大吟醸と、精米歩合や酵母の違いも含めて、色々な生酛の可能性を求めた試験醸造を十数本行って参りました。
その他にも多酸系の酵母や、地元特産の鳥海リンドウの花を送り続けついに分離できた新花酵母「リンドウ」の醸造試験も行っています。
影鳥海山等で試験販売も一部行いましたが、それは完成形ではなく、まだまだ全てが発展途上です。更に良くなる事を信じて改善を続けております。
原料米は昭和五十八年から契約栽培グループ「天寿酒米研究会」設立を皮切りに、長い年月をかけて交渉を続け、今では兵庫県秋田村の山田錦を含めて、使用原料米の全てが契約栽培となりました。
「吟」の付く製品は全て、一年前に冷蔵庫型に改築された槽場で上槽されて直ぐに瓶に詰めそれ毎瓶殺菌し、冷蔵貯蔵庫で瓶貯蔵し低温熟成の後出荷されております。
新たに加わった設備と挑戦する姿勢、古くから続けてきた積み重ねの経験と努力。今年の我々にはその両方があります。
杜氏や蔵人も新たな年に心機一転、その環境の中で最善のバランスを模索しながら、更に進化した味わいに挑戦する百八十八年目の酒造りに邁進しております。
本年もどうぞ宜しくお願い致します。
六造り目を迎えて
杜氏 一関 陽介
あけましておめでとうございます。旧年中は大変お世話になり、ありがとうございました。本年も皆様方より沢山の「美味しい」が聞けますよう製造メンバー一丸となって頑張る所存ですので、どうぞご期待ください。
早いもので、乱文ながらも蔵元通信に文章を掲載するようになり五年が経ちました。さて今年も例年通り新年らしく新酒の話を・・・と考えたのですが、今年は敢えて少し昔の話をしようと思います。
年末恒例なのですが、昨年末、東京農業大学応用生物科学部醸造学科の学生さんが二週間の日程で矢島へはるばる研修に来てくれました。慣れない寒さの中、朝から晩まで蔵人と同様に蔵に泊まり込みで生活をしてもらいます。熱心に指導を受けている学生さんの姿を見ていると、自分が東京農大短大部在学中、天寿酒造へ研修に来た時のことを思い出すのですが、その当時(十五年前)の蔵人から言われた印象に残っている事があります。
「あなたは斜に構えている」
「理解しているのか理解してないのかが分からない」
「まず、動きが遅い」
どれも言われて嬉しくなる人はいないでしょう。しかし当時の私には仕方のない言葉ばかりでした。もちろん良い言葉も掛けていただきました。ただ、それが言われて悔しかったのは覚えています。今では、そのどの言葉も愛のある、自分にとって教訓になっているものだと思えます。
酒造りは一人でするわけではない事。自分が動けば周りの人も動き始める事。相手の気持ちにたって話をする事や分からないことがあった時、皆で知恵を出し合って解決する事の大切さをその時に先輩蔵人から学ばせていただいていたのだと思います。
また、研修生を受け入れる事は、指導しているようで教えられることもあるような気がします。入社してから今までの自分を振り返る良い機会であり、今年も頑張ろうと思わせてくれた母校の研修でした。本年度の研修生においても、天寿で学んだことを将来へ活かしてもらいたいと願っています。
本当に最後になりましたが、本年度の新酒はお楽しみいただけましたでしょうか。昨年度に比べ原料米が良く溶け、搾った段階での味乗りが良いような感触を持っています。
これから春まで、まだまだ酒造りは続きます。安全で楽しい酒造りに努め、皆様に満足していただける商品作りに励んでまいります。
本年もご愛飲の程、宜しくお願い致します。





