光陰矢の如し
代表取締役社長 大井建史
酒蔵開放のイベントも終了し、酒蔵には緊張感のある静寂が戻ってきました。今年の蔵開放にも千五百人を越える沢山の方々にご来訪頂き、加えてボランティアスタッフとしてご参加頂いた皆様へも、心から感謝申し上げます。
当日限定酒や伝統芸能の猿倉人形芝居、無農薬田圃で活躍した天寿名物アイガモ鍋、百宅蕎麦のももやさんが急遽参加できなくなりましたが、まるごと市場の魚屋古田さんの本マグロの解体ショーや鮪丼。酒グッズ・麹・仕込み水で入れたコーヒーなど新しい試みも喜んで頂きました。
今回はお昼前後に特にお客様が集中し、ご不便をお掛けしてしまいお詫び申し上げます。次回は催しの実施時間を分散し、混雑の緩和に努めて参ります。ともあれ無事に終了できましたのは、社員数より多くのボランティアスタッフにご参加頂いたお陰でございます。2000年以来13回目の開催になりましたが、打ち上げの会で皆様とともに味わうお酒に勝るものは無く、心から御礼申し上げます。
今回雪室に入れられた純米生酒の開封イベントは4月28日に行います。是非ご期待ください。
今年の酒造りは大小ありますが90本の仕込み。うち純米吟醸37%・吟醸・純米・本醸造を合わせて特定名称酒が約60%になります。お陰様で特定名称酒の割合が随分増えました。27年前に私が帰った時には県内比率が99%で特定名称比率も15%位でしたが、販売量は四倍・年商も三倍近くありました。そんな中で、吟醸や純米、本醸造も含めて地元の方々に味わって頂きたいと思い、始めた企画が頒布会でした。
しぼりたて生酒を当時始まったばかりの宅急便を使い販売を開始した所、プレジデント誌でやまやの辛子明太子と一緒に取り上げられた事も有ったのですが…。
9割以上が旧二級酒の市場・しかも一人当たりの清酒消費量が日本一の地元で、如何に特定名称酒をご理解いただくか? 300mlの本生酒も秋田県で一番早く発売し、古酒大吟醸は昭和47年に発売されておりましたが、仙台局出品酒の純米吟醸を一級純米酒・さばけの良い地元米ヨネシロ65%純米を二級純米酒・昭和62年には特産米のあきたこまちで仕込んだ本醸造・「地元で出来る最高に良い酒」を標榜し契約栽培グループの天寿酒米研究会を最大25町歩まで強化育成し、地元の契約栽培米で大吟醸・純米大吟醸・純米・本醸造まで比較基準である山田錦の大吟醸鳥海以外はほとんど契約栽培米となりました。
社長となって13年。日本酒の激減期に交代しその厳しい環境にもがきながらも、能力給制度を導入し、社員の多機能力化を図り、ワークシェア的な均衡縮小をじっと耐えながらも一丸体制を目指しつつ、皆で頑張ってまいりました。これも地元に根付いた歴史と社員の忍耐のお陰です。
私が帰ってきたときの父の年にあと2年。三女が四月から大学生となり遂に子供のいない生活に入ります。当時と体重で20キロ、胴回りが20センチ増えました。体力もキレも落ちましたが、知恵と年輪?でこれからも誠実な花を咲かせて参りたいと思います。
今年最初の酒コンテスト「ワイングラスでおいしい日本酒アワード」でも、幸先良く「純米吟醸 鳥海山」最高金賞受賞からのスタートです。今年の新酒にも是非ご期待ください。
天寿の歴史
補遺―14
補遺―14
酒相場書上
六代目 大井永吉
明治十年には、酒相場書上というものが出ている。第四大区小三区酒造営業惣代人須貝太郎蔵の名で出ているのは、地区内の蔵元が話し合いで相場を決め、代表の名で出したものと思われ、提出先が行政の事務処となっているので、指導があったものと考えられる。
酒 相 場 書 上
記
明治九年十月 小売拾円
卸売七円拾銭
一上酒壱石ニ付 代金七円八拾銭
同年十一月
一上酒壱石ニ付 代金同断
同季十二月
一上酒壱石ニ付 代金同断
明治十年一月
一上酒壱石ニ付 代金七円八拾銭
明治十年二月 小売七円
卸売五円六拾銭
一上酒壱石ニ付 代金五円六拾銭
明治十年三月
一上酒壱石ニ付 代金同断
同年四月
上酒壱国ニ付 代金同断
同年五月
一上酒壱石ニ付 代金同断
同年六月 小売八円
卸売五円九十銭
一上酒壱石ニ付 六円七十五銭
右之通相違無御座候 以上
第四大区三小区酒造営業惣代人
須貝太郎蔵
明治十年十月七日
第四大区三小区
事務処 御中
この届けから見ると、三~四か月毎に相場が動き、小売り値段と特に小売りマージンが25%~40%と大きく上下しているのは驚きである。
提出を義務づけられたのか、十一月と十二月に単独でだした相場書上があった。
明治十年十一月上酒相場書上
一卸売壱石ニ付 代金 六円
一小売一升ニ付 金 七銭
右之通、貞価書面之通相違無御座候、 以上
第四大区三小区城内村
明治十年十月 大井永吉㊞
秋田県権令 石田英吉代理
秋田県少書記官 白根専一殿
酒 相 場 書 上
明治十年十二月上酒相場書上
十一月一日ヨリ三十一日迄
一卸売壱石ニ付 金六円
一小売一升ニ付 金七銭
右之通、貞価書面之通相違無御座
候 以上
第四大区三小区城内村
明治十年十二月 大井永吉㊞
秋田県権令 石田英吉代理
秋田県少書記官 白根専一殿