限界は自分の心の中にある
代表取締役社長 大井建史
地元の稲刈りも終了し、138回目の酒造りが始まりました。今年は蔵に地元農家後継者の若手二人を迎え、新たな挑戦の始まりです。
米の作柄は平年並みと予測されていましたが、地元の状態は少し収量が落ち、米の状態も必ずしも良くないようですが、精米も開始し慎重に状態を見ているところです。
秋田県は今年の震災による原発事故の為、県全域で農産物の放射能検査を行い、安全宣言を致しました。米の方も収穫米の全域検査を行っており、心配な状況は出ておりません。仕込み水についても、「鳥海山自然水」も販売しておりますので自主検査いたしましたが、検出されておりませんのでご安心頂きたいと存じます。
昨年は米の高温障害の影響で原料処理には大変苦労致しましたが、その甲斐あってか賞には大変恵まれました。全国新酒鑑評会金賞受賞に始まり、世界的に権威のあるIWC(インターナショナル・ワイン・チャレンジ)でも純米吟醸鳥海山が金賞を受賞し、現在11の在外日本大使館からご注文を頂いております。在外公館でご使用いただく事を想像すると、何だかとても誇らしく思います。
九月初旬、出張で移動中に友人からの電話で「今ミヤネ屋見てる?凄いね新首相が天寿飲んでるんだぁ。」何の事かと確認したらテレビで新首相の特集をして、地元で良く行く秋田料理の「かまくら」さんで、天寿本醸造を来られる度に四合以上飲んで頂いている酒豪との報道だったとの事。
苦節12年の社長業ですが、「これで天寿も伸び始めるか!?」と思ってしまうほど、恵まれてきたと勘違いしたくなるようなサプライズが続きました。
4年におよぶ改善と設備投資により、杜氏も製造環境がかなり整い現況では納得の様子です。後は目指す方向がぶれない事と油断無く目標品質をキチンとクリアし続けること。だからと言って今の環境や酒質に満足はしておりませんが、今掴みかけている一つ上の品質が少し見え始めた気がしております。「これ以上は」とか「これで良し」と思った途端に自分の限界を作ってしまいますよね。
ある番組でもう駄目だと言ったとき、「それはあなたの心の中にあることでしょう」と言われ勇気を持ったというお話がありました。
50才を過ぎると30才の頃には予想しなかった色々な事が起きますね。又、びっくりする位に体力が落ち、中々疲れが取れなくなります。しかし、まだまだ日本酒業界は底が見えない状態ですし、弊社ももちろん道半ば。前に進み続けなければなりません。
ただ、自分は一人でやっているわけではありません。共に挑戦する社員と我社を支えて頂いている皆様と共に進んでいると考えると、勇気が湧いてまいります。
どうぞよろしくお願いいたします。
天寿の歴史
補遺―12
補遺―12
麹室営業申請
六代目 大井永吉
創業三年目の酒造を百石の見込みから、途中で約六十石にまで減石してはいるが、事業がどうやら軌道に乗ったと判断した二代目永吉は、明治九年八月「醔麹営業願」、「麹室営業願」など次々に申請し、何れも「書面願之趣聞届候事」で通っている。醔麹営業の税金は七拾銭で鑑札を得られたし、麹室営業には税金参拾銭を県税の係へ納めて鑑札を得たようだ。そして明治九年の酒造見込石は慎重に漸増策をとって八拾石としている。
醔 麹 営 業 願
是迄私儀 醔麹営業罷在候処、今般第弐百九拾弐番御触示ニ拠リ、一郡免許税金七拾銭即時上納仕候間、御許可之上営業鑑札御下渡被下度、此段奉願候 以上
第四大区三小区由利郡城内村
弐百拾弐番地
大 井 永 吉 ㊞
明治九年八月廿三日
秋田県権令 石 田 英 吉 殿
前書之通相違無之、仍而奥印仕候
戸長 竹 村 秀 高 ㊞
(朱書)
書面願之趣聞届候事、
但、税金七拾銭県税係へ相納、鑑札受取方税則係へ可申出候事
明治九年九月五日
秋田県権令 石 田 英 吉 ㊞
麹 室 営 業 願
私儀麹室営業罷在候処、今般弐百九拾弐番御触示ニ拠リ、営業税金参拾銭即時上納、室税之儀御規則之通年々八月中収納仕候間、連年営業許可之上鑑札御下渡被下度、依之坪数、器械員数調書相添此段奉願候 以上
第四大区三小区由利郡城内村
弐百拾弐番地
大 井 永 吉 ㊞
明治九年八月廿三日
秋田県権令 石 田 英 吉 殿
前書之通相違無之、仍而奥印仕候
戸長 竹 村 秀 高 ㊞
(朱書)
書面願之趣聞届候事
但、税金三拾銭県税係江相納、鑑札請取方税則係江可申出候事
明治九年九月七日
秋田県権令 石 田 英 吉 ㊞
製 酒 見 込 石 御 届
一清酒 八十石
但、新酒、夏酒共
右者当十月ヨリ来明治十年九月マテ一期間醸造製酒見込石数ニ御座候間、此段御届申上候 以上
第四大区三小区由利郡城内村
弐百五番地
営業人 大 井 永 吉 ㊞
明治九年十月廿六日
秋田県権令 石田英吉 殿
前書之通相違無之、依而奥印仕候
戸長 竹 村 秀 高 ㊞
(朱書)
書面之趣聞置候条、来十一月廿日迄槽掛日限見込可申出候事
明治九年十月廿日
秋田県権令 石田英吉代理
秋田県七等出仕 白 根 専 一 ㊞