残暑お見舞い申し上げます
代表取締役社長 大井建史
本当に暑い日が続いております。皆様お見舞い申し上げます。
ロンドンオリッピックの興奮もやっと落ち着いてきた感がありますが、皆様はいかがでしたでしょうか?多くの感動的な場面に、私の涙腺は全く弱くなり、我が祖国日本がこんなに誇らしく・いとおしく思う瞬間はオリンピックが最高ですね。国民不在の国政の無様さの中で、すばらしい清涼効果を発揮してくれました。結果的に一番ではなくても、心の持ち様で豊かな気持ちには十分になれます。プライドや品格もその人間の持つ香りの様なものなのですね。良いものを見せて頂きました。
8月に入ってからの秋田の暑さは異様でした。秋田県の原料米対策委員長と言う事で、県内の圃場視察に行って参りましたが、一昨年の最悪の高温障害を越える事態になるかもしれないと、農業試験場の先生が心配されていました。圃場の水管理によりますが、この日照り続きでその水もほとんどが不足している状態です。
ぶどうの出来で味が決まるワインと違い、米の出来だけで清酒の味は決まりませんが、米の出来が良いに越した事はなく、一昨年は米の状況を掴むまで大変苦労致しました。そろそろ雨や涼風が欲しいのですが、予報では当分無理なようです。
さて、今年の造りから杜氏が交代することになりました。
この度、弊社杜氏佐藤俊二が一身上の都合により退職する事になりました。
佐藤は最初から弊社の社員として入社し、私の代の杜氏と成る事を目標とし、杜氏就任の二年前から私と共に原料処理の改善を目標に定め、毎年売り上げが減少する中、弊社としては多額の設備投資を行い、数々の試験・試行錯誤を繰り返し、ベテランの蔵人に支援され一丸となって、特に精米・洗米・浸漬・蒸米の改善を行って参りました。また、花酵母仕込みの研究等で全体の評価が出てきたところでございました。
やっとここまでと思えた時に杜氏の退社希望は、私にとって正に青天の霹靂であり、慰留に努めましたが、本人の意志は固く、9月25日に退社する事となりました。
これまでの改革・改善の内容は蔵人全員が良く理解しておりますので、簡単にぶれることは無いと承知しております。又、これまで農大短期大学部醸造学科を卒業後、10年近く杜氏の下で勤めて参りました一関陽介を杜氏として進めて行く事に決定し、ベテラン蔵人達も了解しております。
この体制で、これまで通り蒸米の目標水分は0・01%以下の誤差で原料処理のクオリティーは保たれます。会社は人が動かしますし、会社の財産はこれまで積み重ねた技術と誠意を持った人材に尽きます。
一関の杜氏としての匙加減は初めての事とはなりますが、その若い感性に是非ご期待頂きたいと思います。
今後ともご指導・ご鞭撻賜りますよう、宜しくお願い申し上げます。
天寿の歴史
補遺―17
補遺―17
明治十一年ー其の三
六代目 大井永吉
六月に上酒相場書上を差出し、引き続き七月に「酒価書上御引換願」という文書が出ているが、これは四・五・六、の三ヶ月分の酒価相場書上げが、全くの心得違いから計算を間違えたので、改めて届書を出すから先の御届書と引き換えてもらいたいというもの。その後、五月一ヶ月の日々の上酒売出石代届というものを出している。小売平均一石五円二拾五銭三厘とある。
酒 価 書 上 御 引 換 願
酒価相場書上之儀、過般第百九拾五番ヲ以御達ニ付、本年四・五・六、三ヶ月分取調書上仕候処、最前月々取調書上候相場ニ引合不申ニ付、尚清算仕候処、其節全心得違之計算ヲ以書上仕候ニ相違無之、依而今更奉願候者甚恐入候得共別紙取調奉書上候間、何卒相成儀ニ御座候ハヽ、前御届書御引換被成下度此段奉懇願候 以上
第四大区小三区由利郡城内村
明治十一年七月一七日
大井永吉㊞
秋田県権令 石田英吉代理
秋田県少書記官 白根専一殿
明治十一年五月上酒売出石代御届
卸 売 小 売
一日 売出ナシ 金五円五銭六厘
~ 〃 〃
六日 同上 金五円廿四銭
~ 〃 〃
十一日 同上 金五円拾壱銭
~ 〃 〃
十六日 同上 金五円廿銭壱厘
〃 〃
廿一日 同上 金五円四十四銭壱厘
~ 〃 〃
三十一日 同上 同上
合 計 金百六十弐円八十四銭
平 均 三十一日割
壱石代金五円廿五銭三厘
小売平均 壱石代金五円廿五銭三厘
右之通相違無御座候 以上
明治十一年七月
第四大区小三区城内村
醸造人 大井永吉㊞
商売が繁盛に向い販路拡大のためと思われるが、八月に酒類行商御鑑札下付の申請をしている。当時の行商とはどんな形で行ったのか分からないが、三代目当時下口と言った旧由利町方面さらには本荘まで「こだし」(あけびの蔓などで編んだ腰に着ける篭)に見本酒を入れて営業に歩いた話を父から聞いたことがある。十月には醸造見込石を百石に増して届出している。
酒類行商御鑑札御下付願
私儀
予テ清酒醸造営業罷在候ニ付、行商兼業仕度奉存候間、行商鑑札弐枚御下付被成下度、依之、御鑑札料金廿銭相添此段奉願候 以上
秋田県第四大区三小区
由利郡城内村 大井永吉㊞
明治十一年八月廿八日
秋田県権令 石田英吉代理
秋田県小書記官 白根専一殿
清酒醸造見込石御届
玄米 百石
此醸造石 百石
内 新酒二十五石
夏酒七十五石
右者、本年十月ヨリ明治十二年九月迄一期造高見込石御申上候 以上
第四大区三小区城内村
明治十一年十月
大井永吉㊞
秋田県権令 石田英吉殿
前書之通相違無之、依而奥印仕候也
戸長 石田勝良
朱書
書面之趣聞置候事
明治十一年十月七日
秋田県権令 石田英吉代理
秋田県大書記官 白根専一㊞