さけの話
代表取締役社長 大井建史
酒の話と申しましても、造り方とか味わいの話ではありません。なぜ「さけ」と日本では言うのかという話です。ご存知の方がいらしたらごめんなさい。私自身はつい先日聞いたばかりの話です。
古事記や日本書紀より昔、日本に漢字が伝わる前の事になります。それ以前は日本には文字がありませんでした。慶応大学人文学の西岡先生のお話ですが、日本人はモンゴル・中国・ポリネシア・アイヌ等北方民族・アメリカインディアン等色々な人種の雑種だとのこと。調べるとそれぞれの民族の特徴が出ており、神話にも各地と同じような話があるようです。
ところで、歴史上人間が集まると、すぐ神様が出来るようです。日本でも、仏教や漢字伝来前の神を「さがみ」または「さのかみ」と言っていたそうです。今でも新潟から山形・秋田では山の神を実際にその様に言っているとの事? さの神=しゃの神=さい(才)の神。ハハナルホド。
このように、古代語?に類する言葉に漢字を当てていますので、ひらがなで考えるとかえって解かり易くなります。ここまでで思いつくことはありませんでしたか?相模の国は神の国と言う意味になるようです(さつま・とさ)。さか(坂)とは神のおりてくるところ。さかいは神と人間のいる所を分ける境。さいわい=さに祝ってもらう・さち=さの神に千も集まってほしい・さつき=さの神に降りてほしい時・さなぶり=さぬぶり=さのぼり(神の帰るとき)・さおとめがさなえを植える。その他にも、さばき・さかずき・さかき・さとり・さかえる・さまよう・さみだれ等色々ありました。さらに、さくらはさの居るくら=神の座と言うところだそうで桜の花が咲くのを見てお酒を飲みたくなるのは日本人だけ(日本人の証拠?)。それはさけと言うのは神(さ)への一番のおみやげ(け)と言う意味だからとのことでした。へ~
全国新酒品評会で入賞
去る五月三十日に全国新酒品評会の一般公開がありました。平成9年の金賞以来、毎年入賞する事が出来、大変うれしく思いました。
前にも一度品評会について少し書かせて頂いた事がありましたが、出品酒を一生懸命醸す事の重要な点は、半年間の酒造りの間に、杜氏の持つ尺度の最高の出品酒醸造のために、本人は勿論、蔵人全員が一丸となり、すべてにおいて今現在の最高を必死に造ろうとする、その目的と緊張感がベテランの蔵人の、さらなる技術向上と気合充実につながるからです。現在の入選酒のタイプが、味わう時に本当に良い物なのか、又入選する為のブレンド出品等、色々物議をかもしておりますが、その様な中でも、天寿らしく頑なに醸し続け、一つの達成感を得る事が出来る貴重な機会であるからこそ、杜氏を始めとする蔵人達と共に、嬉しく思うのです。
蔵のページ
無農薬田について
5月の半ばを過ぎる頃、「天寿」のお膝元、矢島の地では田植えが盛んに行われ、健やかに伸びた美山錦の苗達も無事デビューを果たしました。
これに先立ち、田起、代掻きといった農作業が行われ、乾いた田んぼが満々と水を張った水田となります。今年は春先の天候が良すぎるぐらいで、代掻きには例年よりも多くの水を必要とした程です。
又、この頃、いつもの年のように空と海からのお客さんがやって来ました。トンビ、ムクドリ、ウミネコなどの鳥たちの事ですが、今年は何故かカラスの集団も出没しました。鳥たちの目当ては、土の中から掘り出された虫達(ミミズ、カエル、オケラ等)です。特に代掻き直後にはオケラが追い出されて水面に浮く為、鳥たちの格好の餌食となります。鳥たちは、この餌を求めてトラクターに乗っている私の周りを常に旋回したり、間近で待っています。鋭い眼力を放つウミネコなどは、あまり近くを飛ばれると少々恐怖感を覚えます。
5月20日、無農薬田を管理していただいている、天寿酒米研究会会員、佐藤近美氏も美山錦の田植えを行いました。今後、水管理のし易さが雑草の繁茂を左右するため、前作業の代掻きは念入りに行われていました。一見どの田んぼも平らに見えますが、田んぼには少なからず高低差が有ります。田んぼに水を張ることにより、高いところは水面から露出し雑草が生えやすくなります。逆に低い所は水が深く、苗が水没してしまい、窒息又は藻に囲まれてしまいます。代掻き作業は、単に田んぼの土を捏なすばかりでなく、田んぼ全体を水平に修正出来る、一年の中で唯一の機会なのです。
通常栽培の場合、代掻き後と田植え後に除草剤を散布して雑草の繁茂を防ぎます。しかし、この無農薬田には除草剤や殺虫剤等の農薬は一切使用しませんから、田植え後2週間を経過した今、雑草が顔を覗かせてきました。雑草は生え始めるともの凄いスピードで成長し、すぐに稲を追い越しますので除草のタイミングとしては今頃が適期です。除草方法は人間の手でむしり取る方法で行われて来ましたが、それは筆舌に尽くしがたい重労働です。その除草作業の手助けをしてくれるのがアイガモ達です。田んぼの中を掻き回る事で、雑草の繁茂を防いでくれます。
これから田んぼにフェンスを張りアイガモ達を放す訳ですが、このフェンスは逃亡を防ぐだけではなく、外敵から守る為でもあるのです。アイガモを田んぼに放つとすぐに、上空にはタカが旋回し始めます。アイガモ達が溺れない事を祈りつつ、美山錦が成長し、アイガモ達が身を隠せるようになるまで心労は絶えることがありません。
製造課 佐藤俊二