一歩一歩
代表取締役社長 大井建史
毎年の事ではありますが、今年も皆造(酒の搾りが全て終わる事)となり、大車輪で火入れ(熱殺菌)や酒蔵の片付けも終わりました。蔵人が田植えの準備に気忙しく家路につくと、その静寂に祭りの後の様な寂しさと、同時に満足して休息に入る蔵の充足感も感じます。百四十回目の酒造りが終わりました。
年末に品切れでご迷惑をおかけした純米大吟醸「鳥海山」を、今年は昨年より最大限増産に努め、四月はその瓶火入れと冷蔵倉庫収納に全力を尽くしました。それでも原料全体での玄米の使用量は増減の集計で3.4%増となりました。
今年の秋田県産米の品質は平年並みであり、昨年の高温障害による異常に融けない米とは違い、しっかりと味の出る米でした。一関杜氏は二造り目ですので昨年との大きな差に緊張したと思いますが、概ね満足の行く出来となりました。
また、秋田県企画の蔵付酵母も三年目でやっと分離され、今年から発売となります。他にも新酵母での醸造や醸造試験場との共同試験醸造で秋田生酛仕込にも挑戦いたしました。まだまだ商品化には早いものもありましたが、常に反省と改善の繰り返しです。何年たってもこれで良いと思う事無く、より上質を目指して挑戦です。
若手も一造り毎に成長し自信を深めていきます。四月からは東京農大短期大学から東京生まれの東京育ち高橋晶太君も新卒で入社し、意欲満々で仕事を始めました。百四十回目も収穫の多い酒造りになりました。
これらの新酒もPBを含め続々と出荷されております。是非お楽しみください。
話は変わりますが、天寿好きの農大ОBでヘリコプターの操縦をされている方から、何だかとてもうれしいお話を教わりました。以降がその文章です。
「ヘリコプターの操縦をしていますが、昨年の年末から、秋田の空のルールが変更になり、その際に「TENJU」という位置通報点が出来ました。添付ファイルでフライトチャートを確認して頂けるとわかると思いますが、秋田空港の西側海上に「TENJU」という三角形のポイントがあります。
特に航空会社のJALやANAの東京や大阪伊丹、名古屋セントレアなどからの秋田便は、風が東風の時にこのポイントを通過して着陸しています。
日常的に管制塔との交信では、管制塔から「リポートTENJU」との指示があった場合には、このポイントを通過し、上空で航空機側から「オーバーTENJU」と通報されます。」この通信を聞いていると天寿が飲みたくなるとおっしゃいますが…。
業界の方でないと判りませんし、なぜTENJUになったかはご本人も知らないようです。でも…なんかうれしいな!!今日の晩酌では一杯空ける度に「オーバーTENJU」なんてネ。
平成25年度の造りを終えて
杜氏 一関 陽介
ようやく雪も消え、矢島もいよいよ春の気配を感じられるようになりました。本年度の酒造りは四月十日をもって終了し、蔵の中は今期の後片付けを進めているところです。まず何よりも蔵人が健康で春を迎えられた事にホッとしているところですが、社内は吟醸酒の瓶詰め・瓶火入作業に追われております。
「お客様に飲んでいただくまでが酒造り」と社長にいつも言い聞かされており、お客様に美味しく飲んでいただく為、出来る限り最高の状態でお届けする為に社員一丸で取り組んでおりますので、今年のお酒にも期待していただきたいと存じます。
さて今年度の造りに関してですが、開始時は今年の米は良く溶けるといわれておりました。しかし天寿酒米研究会の米は溶けすぎる事はなく、平年通り良質で酒造りには非常に扱いやすく、昨年杜氏一年目での経験と、蔵人メンバーに支えられたおかげで原料処理から搾りまで順調で、天寿らしいキレイな作品に仕上がったのではないかと考えております。その年の天候によって米の出来は毎年違うわけですが、傾向は傾向として地元の農家の皆さんが安定した米作りをして頂いているおかげで、自分達も安定した酒造りができるという事を感じさせられました。
私自身、杜氏一年目の昨年はただ前を向いてただひたすら酒造りと向き合った一年でした。二年目も同じでした。ただ、言葉では言い表せない部分の経験値は上がっていると自負しております。今年経験したことを必ず来年度に活かすべくしっかりと反省し、一歩ずつ酒質と共にレベルアップして参りたいと思いますので、宜しくお願い致します。