「雑 感」
代表取締役社長 大井建史
秋田も入梅はしましたが良い天気が続き、緑濃くきれいで生きいきとした季節を迎えています。天寿の無農薬田圃にも矢島小学校三年生により合鴨の雛が放たれ、元気に泳ぎまわっています。小砂川では岩牡蠣が捕れ始め、子吉川の鮎は7月1日から解禁となります。
最近のニュースとしては、全国新酒鑑評会は銀賞に終わり、東京プリンスホテル「和食 清水」でのお酒とお料理を楽しむ会「酒楽活菜」は88回を数え、盛会裏に終えることが出来ました。毎月開催で8年目に入ったという事で、酒楽の会構成6社(天寿・喜楽長・宝寿・八咫烏・八鹿・笹の川)とも大変感慨深いものがありました。来年の6月で100回開催となります。通常の月は2社づつ当番制で、私も三ヶ月に一回は担当しております。皆様も機会が有りましたら是非一度ご参加ください。
酒楽の会は十数年前に、地元を主市場とする小さい酒蔵の跡継ぎが集まり、計画・運営・企画とも会社に担当部署が有る訳も無く、自分の頭で全部やっているのなら、6人集まったら何か出来るのではないかと立ち上げた研究会でした。各社とも毎月東京に集まるのは大変な負担でしたが、不思議とこんなに長く続いた会なのです。「よくもまあ」とこれまた感慨深いのですが、先日滋賀で行った会での移動時の会話はこんな感じでした。「この辺は滋賀の穀倉地帯で、田圃が広いでしょ」「はぁ?すぐそこに家が見えるのに?穀倉地帯の割にはインフラに随分金が掛かってますね。合併前の人口が45000人の駅前じゃないね」「秋田は人口少ないからね」「本荘も合併前は45000人ですけど」「八日市は良い企業の工場が複数あるから内情が良かったんだよ」「… …。大体、関空作って神戸空港作って、伊丹空港も現役っておかしいを通り越してるよね。そんなに金使えるなら元々2500m滑走路で敷地の余裕もある秋田空港を拡幅して、シャトル便飛ばして国際空港にしてしまえば良かったのに。成田も未だに反対運動だし、雪は降るけどそんな空港世界中にあるし…。」「で、そっちの地元の小・中学校何クラスある?」「もうすぐ全部一クラス。大問題だよね。地方の崩壊だ。」「地方行政の予算じゃ人口減ったらおしまいだね。故郷納税の制度が良いかどうかは別にして、このままじゃ地方分権じゃなくて地方切捨てだ。」「その通り。地方でお金と情熱をかけて育てたのに、結果的に全部都会に貢いでいるようなもんだ。育てて出してくれたお礼と、国土保全や食料確保安心料は地方に払わなければいけない。」「しかし、年金問題は頭に来るな。団塊後の俺らが一番損か」「社会保険庁って何あれ。どうすりゃあそこまで腐れるんだ?」「腹を切れ腹を」「腐るといえばミート何とかってなんだありゃ。この時代に食料業界の国賊だ!!お客様をなんだと思って…思って無いか」「何か慎ましく、いじらしく、健気だよね我々は…」 (途中から会話を離れて私の主観に変わった様な… )たった一社の行いが、今までずっと真面目に真剣に丁寧に仕事を続けてきた人達の思いを踏みにじりました。給食にも使われたかもしれない?我が子に毒を盛られた気分になります。広義の食と考えれば私も同業界。日本の食の安全神話がまたも崩れる音に鳥肌を立てています。
天寿の歴史
(六)ー3
新商品開発- 〔鳥海山自然水〕- Ⅰ
代表取締役会長
六代目 大井 永吉
矢島の郷は鳥海山が北東に雄大な裾野を広げ子吉川が東西に貫流する盆地、鳥海山に降る雨は豊かな森林を育み、降り積もった雪は万年雪となり、永い年月を経て大地に濾過され裾野に湧き出る。
清酒の醸造においては、良質且つ豊富な水をしかも容易に得られることが必須条件である。その条件に恵まれた矢島は古くから酒造りの盛んな郷であった。
世界中には数限りないほど多くの民族がいるが、水の味を「甘い」とか「丸い」とかと賞味する民族は日本人だけかも知れないと東京農大の小泉教授は言っている。それは日本が世界の中で最も質の良い水を持つ国であり、この水が日本の様々な文化を創っている根源となっているからだろうと・・・。清酒も日本の優れた文化の一つなのである。
「名酒は良水から」というのは日本ばかりではなく万国共通のようであるが、外国は「水のタイプ、すなわち酒のタイプ」というように、はっきりした形で現れることが多いようだ。日本酒ではそれほどの切実さはない。水質のうちの硬度をとり上げてみても、一番高いとされる灘の宮水でも八〜九に過ぎないが、外国の三十〜七十とかの激しい値から見れば物の数ではない。また、日本の酒造りは、西洋のそれと違って大変複雑で、糖化と発酵が同じタンクの中で同時に進行する並行複発酵という世界でも珍しい醸造方法であるため、水質の影響が端的に現れにくいとも言われている。しかし、灘の男酒、秋田の女酒とも言われるように、硬水の宮水を使う灘は辛口で骨格のしっかりした酒質となり、軟水の多い秋田はやわらかできめ細かい酒質が特徴となっている。
では、良水とはいったいどんな水だろうか。日本酒にとってはまず鉄分が少ないことが一大要件であるが、一般に銘醸地と言われるところの水はカリ分の多いことが特徴である。そのほかの成分も酒の原料に占める成分量は微量である。しかし、酒質に大きな影響をもつ事は長い酒造りの経験から確かなことである。微量分析の進んだ今日でも良水の成分はまだ明確でない。名水にはまだまだ説明し尽くされない何かが残されているのである。ここに水の不思議さがあり、酒造りにおける永遠のテーマでもあろう。
人類は生活が便利になり、文化が発達すると同時にあまりにもたくさんの水を使うようになり、その水を汚し続けるようになった。そして自分たちの汚した水を「浄化」と称して塩素を入れて消毒し、「不自然」な水をつくり出してしまったのである。 日本は水の環境に恵まれていることから「水はタダ」の意識が根強く、ヨーロッパなどに比べ「買う」という感覚は薄かったが、大都市圏の水道水は水源の汚染、自然環境の悪化などで「不味い」「臭い」などから消費者が水に関心を持ち始めグルメブームや健康志向、自然志向なども追い風となって、家庭浄水器の普及と共に飲料用の水の需要が急速に高まった。
日本は水の環境に恵まれていることから「水はタダ」の意識が根強く、ヨーロッパなどに比べ「買う」という感覚は薄かったが、大都市圏の水道水は水源の汚染、自然環境の悪化などで「不味い」「臭い」などから消費者が水に関心を持ち始めグルメブームや健康志向、自然志向なども追い風となって、家庭浄水器の普及と共に飲料用の水の需要が急速に高まった。
昭和六十三年、当社では「天寿」の仕込み水ともなる鳥海山の伏流水を「鳥海山自然水」の商品名で飲料用として一リットルペット容器詰めで発売した。飲料水の商品化は秋田県では最初だったと思う。