感動
代表取締役社長 大井建史
アテネオリンピック。皆さんもテレビの中継に夢中になった事だろうと思いますがいかがでしたか?日の丸・君が代がこんなに感動的な時はありません。子供達が祖国日本を最初に実感し誇りとするのは、こんな時なのかもしれません。
水泳・女子柔道・体操・女子マラソン等々すごかったですね。沢山の名勝負に私の血は騒ぎ、思わず目頭の熱くなる感動シーンを見ながら、ふと思った事があります。自分の子供の時代は「熱血漢」は「良い人」だったよな!と…。熱血・気合・感動・感涙・全力・積極果敢・突撃…!と最後は違うような気もしますが、なんだか最近身の回りではあまり聞かなくなった言葉であることに、とても寂しい思いがしました。
私共も、及ばずながらお酒でお客様に「感動して頂けるものを醸し上げたい」と何時も考えています。
この九月十日が131回目の創業記念日です。私が社長に就任してから、この冬が六回目の酒造りとなります。酒造計画ももちろんですが、その一本・一本にどのような目標を持たせるのかこれが大きな課題なのです。「熱血」と「気合」を込めて、「積極果敢」に「感動」の酒質を求めて「成せば成る」事を信じてがんばります。
これまでも、目標を定め、一つ一つ課題を越えて来たつもりではありますが、頂上到達には、まだまだ道のりは遥かな様です。
水源探索トレッキング
9月4・5日は水源探索イベントを実施致しました。ご参加頂きました皆様誠にありがとうございました。今回はほとんどが女性で東京からのご参加が多かったのですが、天候に恵まれ絶好のトレッキング日和でした。
最高齢は80歳の女性を先頭に、70代の方も3名いらっしゃいました。ゆっくり2時間のトレッキングコースですがコース整備されているとはいえ舗装はされておりません。石や木の根など沢山あり、上り下りももちろん有りますのでスタッフは心配しておりましたが、全員最後まで歩かれ、夜の天寿を楽しむ会でもしっかり楽しんでおられました。
私共はひたすら感心し、シルバー世代の実力を見せ付けられた思いが致しました。まさに「天寿」の百歳まで幸せに生きる意を体現されているのだと感動させられました。
秋田県は台風で、日本海沿岸部がかなりひどい塩害が出ました。山の広葉樹も茶色に成り田んぼの惨状には目を覆うばかりですが、幸い矢島町は内陸で、天寿酒米研究会のメンバーには被害がありません。今年の米には大変期待しているところです。
さて、秋の味覚の季節がやってきました。秋風や月の美しさが、お酒や料理のうまさを益々引き立てます。
天寿 ぬる燗 旨いですよ!
130周年を迎える 天寿の歴史(四)ー3
五代目永吉の飛躍その三
代表取締役会長
六代目 大井 永吉
五代目は原料統制・生産制限の時代にも酒質の維持改良に力を尽くしたが、近代酒造の技術的進歩は花岡正庸先生に負うところが大変多い。先生は秋田県醸造試験場退官後、昭和十八年から二十八年までの十年間ほとんど隔月に来社して醸造指導に当たられたが、二十八年二月十二日、天寿工場で指導中病に斃れ、不帰の客となられたのである。
「酒の秋田」と謳われるまで、わが県を全国有数の名醸地に育て上げられた花岡先生の偉大な功績は広く世人の知るところだが、五代目が如何に先生を敬慕していたか、秋田県酒造組合が二十九年に刊行した「花岡先生を偲ぶ」に登載された五代目の手記から伺い知られるので、その一部を抜粋する。
「先生は、ただに偉大なる技術者に止まらず、実に天分豊かな高度の文化人で、政治、経済、芸術、あらゆる方面に深い造詣と広い識見をお持ちで、私は醸造のご指導の外に社会各般のことをお聞かせいただくことをこよなく楽しみとし、常に先生のご光来を鶴首してお待ちしておったのであります。…
酒造については、毎秋、本年の醸造は斯く斯くの方針と一つのプランを立て、その方針に基づいて実に詳しく教えてゆかれたのであります。…
先生は、真に醸造界の巨匠でありました。打てば響くていの、この巨匠の胸の敲きかた如何によってわれわれの成否が分かれるので、此方の敲き方が拙いと、結局良い教えをうけられないという結果が生まれ、敲き方によっては如何なる難問も解決されたのでありまして、今更ながら先生の偉大さを感ずるしだいであります。…拙店の屋上の大看板(銘酒天寿醸造元青陽山人書)を仰ぐとき、ことさらに強く先生を想い、わが工場に立てば、在りし日の先生の面影がまざまざと浮かび、お教えの数々が思い出されるのであります。先生の尊霊が永久にわが工場に鎮まっている気が致すのであります。わたくしは勿論蔵人一同、尊霊を汚さぬよう一層努め励み、年毎に良い酒をつくって先生の御霊に供える覚悟でございます。…」
私はその時期学生だったので残念ながら警咳に接する機会はなかったが、父から間接的に先生についての話を聞いて、結果的に父による巨匠の胸の敲き方の真剣さ、上手さが天寿の酒質を向上させたのだと推測している。
実に因縁浅からぬ先生の教えは直伝として今に受け継がれ酒質に生かされているのである。
そして創業以来代々品質向上に真摯にとり組んできた姿勢は伝統となり、現在の「品質に誇りを、顧客に感謝を」の社是となっている。