「夏越えの・・・」
代表取締役社長 大井建史
まだまだ暑い日が続いておりますが、矢島の里はお盆頃の猛暑とは違う秋の気配が感じられるようになりました。
八月後半の大雨には私もいささか驚きました。軒の樋が雨水を飲み込めず溢れかえる状態に「おぉ、すごいなぁ」と見ていても中々その状態が終わってくれないのです。一晩も経った頃にはさすがに「これは拙くないか」と思っていると、増水により町の中を流れる荒沢川の護岸が崩れ140世帯に避難勧告が出たということで、全国版のニュースにもなりました。結局水は溢れず大きな災害にはなりませんでしたが、中小の被害はかなりの数になったようです。お陰様で弊社にはなんの被害もなくホッとした所でした。
8月28日に仙台の鑑定官や県醸造試験場の先生をお迎えし、呑み切りを行いました。60点を越える夏越えの酒をきき酒し、その順調な熟成を確認いたしました。先生方からも欠点の指摘はなく、貯蔵に一切炭素の使用が無い事を何度も確認され、そのキレイさに感心されました。もともとやわらかで軽快なタイプの蔵ではありますが、杜氏とは「もう少し押し味を出す為にはどうするか?タイプ別のメリハリを更に明確にするには?」という話題で話し合ったところです。
その後に県内の地酒小売店の方々や、弊社の蔵人そして夏休みで帰っていた私の長女も勉強の為に参加させ呑み切りの酒の確認を行いました。今回は初めて新購入の小仕込みタンクで一石仕込を行い、その酒が通常仕込みに負けない醸造が出来る事を確認できたのは、大きな成果でした。
その一つ一つの出来に一喜一憂し、比較試験(美山錦vs酒こまち・酵母の違い・麹の違い・蒸の違い等々)に緊張し、悔しがり、満足します。何の為にその仕込みの試験を行ったのか、弊社内の仕込みの常識を疑いながら、様々な試みを行うわけですが、この時期には反省が多々出てきます。あれほど理解しあっていると、目標は明確だと思っていても、目指していたもの・思っていた事のブレが呑み切りの時にはっきりと出てしまいます。判った積もり・言った積もり・行った積もり・出来た積もり。
目的の明確化・情報の共通化・同じ思いを抱いた全社一丸体制etc。わずか三十名弱の会社で、なぜこう道が遠いのかと反省しきりであります。
天寿の歴史
(六)ー4
新商品開発- 〔鳥海山自然水〕Ⅱ
代表取締役会長
六代目 大井 永吉
農水省の品質表示ガイドラインによれば、ナチュラルウォーター、ナチュラルミネラルウォーター、ミネラルウォーター、ボトルドウォーターに分類され、「鳥海山自然水」はナチュラルウォーターの分類に入る。
市販の水は多種多様で、今日ではデパート、スーパーやコンビニでも水のボトルの売り場スペースは広がって、どこでも3種類や4種類の水が並んでいる。国産だけでなくアメリカ産、ヨーロッパ産等、世界各国のミネラルウォーターが味わえるようになった。
人の顔が一人一人違うように、ミネラルウォーターもそれぞれ味も香りも風味も違うのである。フランスなどヨーロッパからの輸入品は、カルシウム、マグネシウムの含有率が高い硬水タイプが多く、ミネラル補給のためのストレート飲用に向いている。逆に日本の水は軟水タイプで、飲用は勿論のこと緑茶、紅茶、コーヒーや料理にも向いている。
「鳥海山自然水」はみちのくの霊峰鳥海山の高山植物やブナの原生林豊かな大自然に降り積もった万年雪が溶けて湧き出た地下水。硬度22㎎/㍑の軟水で、PH6,2の微酸性、適度のミネラルをバランスよく含み、安全で、おいしい水の要素を備えている。今では水を買って飲むことは、日本の一般家庭でもあたり前になっているが、当社が売り出した昭和五十六年頃は、まだ買って飲む人は少なく、大都市等、大量に動くところでないと商売にならないというのが実情だったが、矢島町の観光宣伝と造り酒屋の夏の仕事にしたく商品化したのだった。
時代とともに理解も広がって、秋田の【きりたんぽ】の老舗が鍋セット用袋詰を凍らせて保冷材として組み入れ、水そのものと、秋田名物の宣伝にも一役買ったり、手軽な500mlと、大容量の2㍑ペットボトルの商品も発売してお客さんの要望に応えている。
現在全国的にミネラルウォーター市場は伸長を続けている。好調の要因としては、飲料シーンの拡大や健康指向の高まりとともに、水そのものに価値を見出した結果、市場の裾野が広がった為と考えられる。
サントリーの調査では、日本の国民一人当たりの年間消費量は、二〇〇五年の14.4㍑から二〇〇六年の18.4㍑へと一年で4㍑も増加した。今後更に拡大し、現在の二倍程度の消費量まで伸びると推定している。
「鳥海山自然水」も販売力では大手に比すべくもないが、鳥海山という大自然の大きな恵みを受け、それを生かしながら地場産品として着実に伸ばしていきたいものである。