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蔵元通信

日頃お世話になっている皆様に、私ども天寿酒造が何を考え・守り・求め・挑戦しているのか、その思いをお伝えしご理解いただくために、「蔵元通信」を発行しています。
お酒はどのような狙いで造られたものなのか、季節や旬の食べ物に合うお酒、また飲み方、そして鳥海山の登山口であるこの矢島町の様子などをお届けいたします。

孫誕生
2023-03-21

孫誕生

代表取締役社長 七代目 大井永吉

二月十六日に初孫が誕生いたしました。大井家では五十三年ぶりの男の子です。初孫が成人を迎える頃は私は八十三歳かなどと思いながらも、聞いてはおりましたが孫とは可愛いものだとつくづく思います。家内もおばあちゃんアドレナリンが出っぱなしで、出張や宴会が有ると会わせてもらえなくオロオロする新おじいちゃんです。

今年の冬はニュースになる様な大雪もあったようですが、地元では私の六十三年の記憶にない雪の少ない冬でした。何しろ暖冬で雪が少ないと言っても、本荘矢島街道の田んぼに一月二月に土が見える事はあまり無いのです。しかし、この頃は一部に土が見えて「え!」と驚いていました。それが今年は一月からずっと広範囲に土が出ていたのです。

それでも会社周りの雪寄せは毎日のようにありましたが、大きな気候変動に不安を覚えてしまいます。

コロナ禍も新型ウィルスが次々と発生いたしますが、弱毒化して来たと言われております。後遺症の話も多々あり油断をしてはいけないとは思うのですが、社会・経済活動は活発化しており、弊社でも三年ぶりに蔵開放イベントを開催させて頂きました。

全く同じ形では密となりますので、コロナ対策を考え蔵案内は事前予約制とし、蔵の中に二十名×二グループ=四十名以上にならない様にしました。所要時間はトータル一時間で案内内容を充実させ唎酒も各商品の説明をしっかり聞いて頂き、お客様の満足度を上げる事を目標と致しました。また、ご好評の「朝しぼり」を含む限定酒は種類を増やし予約なしでもお買い求め頂けるフリーとし、購入時の密を防ぐため売り場の人数制限をさせて頂きましたが、待ち時間が発生しました事お詫び申し上げます。

その他にも社長・常務・杜氏がご案内するプレミアムコース等、初めての試みばかりで不行き届きの点が多々あったと思いますが、今後、コロナ以前と全く同じ形に戻すのは難しいだろうと考えています。これからも世情に合わせた企画を考えて参りますので、楽しみにお待ちいただければと思います。

再開された活動の第二弾として、海外への営業活動は四年ぶりとなる、香港へ行って参りました。六十三歳の四年のブランクは残念ながら大きなもので、現地で動き始めて不安になる記憶の曖昧なものが多々あり参りました。入国時に必要とされた健康チェックは無かったのですが、永吉名にした新パスポートが引っ掛かり襲名の事かと思いきや、理由は入国管理官側のコンピュータートラブルとの説明でした。一時間近く待たされトランクの引き取りが心配になりましたが係官は「ОK、ОK」だけで、急いでいくと止まったコンベアーの側にポツンと私のトランクが…ドキッとしたりホッとしたりと波乱の幕開けとなりました。

何で苦労するか判りませんね。ポケトークさまさまです(笑)その後もエアポートエクスプレスや地下鉄・タクシーに乗るたびに頭の緩んだネジが巻かれる感が有りました。

お取引頂いているシティー・スーパー様の活況や営業計画に、世界は大きく激しく動いている事に触れさせて頂き、日本もコロナ渦とはいえフリーズしている場合ではないと実感しました。

酒蔵開放

杜氏 一関 陽介

二月二十五日、三年振りに酒蔵開放を開催することが出来ました。しかしながら、例年二千人を超えるお客様を蔵内にお迎えしていたコロナ前と同様での開催は難しいという判断で、蔵内への入場は事前予約有料制をとらせていただきました。お客様の負担が増える形になってしまうことや、コロナ感染対策による今までと違った形式での利き酒・お酒の販売方法への変更があり、少し不安もありましたが、ご来場いただきました皆様には、ご理解いただいたうえに、終日ほぼ満員でのご案内ができましたこと、お礼申し上げます。

私が担当した蔵案内でも大きな変更がありました。わざわざお越しくださったお客様に、より天寿について知ってもらいたいという想いから、二十名×三回の六十名限定ながら通常の蔵見学コースに加え、お酒とおつまみを楽しみながら酒造りについての講話をお聴きいただき、プレミアムプランと名付け二時間の酒蔵見学をしていただきました。初めての試みでしたので集客に苦戦することも想定しておりましたが、募集開始早々に完売となってしまい、ご来場を諦められた方、コース変更を余儀なくされた方には大変申し訳なく思っております。同時に三年振りの開催でも酒蔵開放に注目してくださっていた方が多くいらっしゃったことは非常に嬉しく、身の引き締まる思いがいたしました。当日までお客様にとって「プレミアム」とは何か?私もいろいろ悩みましたが、会社の取り組み・目指す酒へのこだわり・杜氏十年で今思うこと等々・・・丁寧にお話させていただきました。

個人的に、「酒造り職人は多くを語らず、気候の変化を肌で感じ、ひたすらに原料と向き合い、出来上がった酒の品質で勝負する者」で良いと私は思っていますが、今回のような講話や講演依頼を受ける事で逆に相手の意見を聞くことができたり、自分一人では知り得なかった事を教わる機会になっていると気付きました。自分の仕事を実際に言葉で人に伝える事は容易ではありませんが、その事が自身のレベルアップにつながっているのであれば、今後も機会があれば続けていきたいと思います。

さて、触れるのが遅くなりましたが、天寿の酒蔵開放の目玉といえば「朝しぼり」ではないでしょうか。当日の朝方に搾って瓶詰めし、その日の内にお客様に届く、まさに「フレッ酒」の極み。今年の酒蔵開放でも販売いたしました。お酒の購入は事前予約なしでも可能でしたので、沢山のお客様にご購入いただき本当にありがとうございました。搾る日が決まっている杜氏泣かせの酒でもありますが、毎年この酒の為にわざわざ蔵へいらっしゃる、待っている人がいるお酒。なんとか美味しいものにしたいと社員一丸頑張りました。美味しかったという声がチラッと聞こえてきており、嬉しい限りです。来年もご期待頂ければと思います。

今年の酒造りもいよいよ終盤。皆造(全工程収終了)はゴールデンウィークになりそうですが、残り一か月少々。無事故・蔵人全員が健康で、「地元で出来る最高の酒を目指す」という目標にブレることなく最後まで頑張ります。これから夏に向けて生酒の発売も控えておりますので是非宜しくお願い致します。

令和5年を迎えて
2023-01-01

令和五年を迎えて

代表取締役社長 七代目 大井永吉

明けましておめでとうございます

本年も皆様にとりまして、良い年であります事をお祈り申し上げます。

天寿の酒蔵では一九三回目の酒造りが熱意と愛情をもって慎重に順調に推移しており、一関杜氏をはじめとする蔵人皆の活躍で、泉が溢れる如く美酒が生み出され皆様の元へと送り出されております。

年が明け、創業二百年まであと六年と言う事に成ります。昨年十一月一日に七代目永吉を襲名した事により、改めてその意義を明確に示しながら進みたいものと考えております。

私共の創業地であります矢島町は過疎化が凄い・大変を超えて酷いものとなってきました。

学力を上げる教育や世界に視野を広げる教育はもちろん大事ですが、故郷の素晴らしさと現状を理解し、更にその未来に使命感と夢を持ち、愛する気持ちを育てる事も大変重要な教育だと思います。

日本は東京だけでは成り立ちません。地方の自力が有っての東京です。地方が学校その他で大切に育てた人材や歴史・文化が育んだ資産の良い所だけを強力に東京へ集める事だけをやっていると、地方が崩壊し日本が持ちません。

国会議員や省庁の役人にも地方生まれの東京育ちも含めて、東京しか知らずに育った人たちの比率が高すぎます。一月十五日の小正月の文化的・コミュニティー的重要さを知らずに休日を廃止し、地方の膨大な数の行事を崩壊させたことがその象徴です。

政治的に地方への投資、施設や役所の移転を今真剣に考えないと間に合わなくなると懸念してしまうこの頃です。

現在、由利本荘市には大企業の工場施設・環境設備の大型化・鳥海ダムの建設・海上風力発電の送電線工事などの大型プロジェクトがあり急激に求人が難しくなりました。

なにしろ、過疎化してからの事ですから求人倍率がうなぎのぼりとなったのです。

言う事で、お酒を造る仕事をしたい方・お酒の営業・販売企画等に興味・意欲のある方は是非お声がけください。

本年私は天寿酒造入社三十八年目・社長になって二十四年目になります。

やらねばならぬ事は沢山あります。

一、この地で出来る最高の酒を造る

二、達成感を得られる仕事環境を目指す

三、やる気を誘引できる作業環境の改善(当面は瓶詰ライン・造り蔵の三季化)

四、人材の確保・育成を行い質の向上を図る

四、人材の確保・育成を行い質の向上を図る

五、次世代の基礎を創る

もちろんこれまで常に目指して来た事です。学校の卒業とは違いますから正確な表現にはなりませんが、大きな波で三世代目の育成となります。社長業が長すぎるのかもしれませんが、良くも悪くも七代続く家業的会社の宿命だと考えます。

七代目永吉襲名記念の年、皆様なお一層のご愛顧の程よろしくお願い申し上げます。

お取引頂いているシティー・スーパー様の活況や営業計画に、世界は大きく激しく動いている事に触れさせて頂き、日本もコロナ渦とはいえフリーズしている場合ではないと実感しました。

初志貫徹

杜氏 一関 陽介

あけましておめでとうございます。

昨年は四十歳になり、杜氏としても十年目と私にとって節目の年になりました。今まで健康が取り柄で生きてきましたが、人間ドックの結果で引っ掛かるなど、気持ちは若いつもりでも、身体は四十なんだなぁと実感させられる一年になりました。酒造りにおいては、クラマスターの生酛部門最高賞をいただくなど、国内外のコンテストでは様々な賞をいただくことができましたし、コロナ禍で落ちた消費量も底から少しずつ改善の兆しが見えてきた気配も感じられるようになりました。

十月から始まった今季の酒造りも早いもので中盤戦を迎え、全国新酒鑑評会出品酒の仕込みも始まっています。一年に一回しかない最高峰酒の仕込みを最高の物にしようと、ピーンと張りつめた空気の中で蔵人全員が緊張感のある仕事ができているように感じています。

昨年末の話になりますが、三年ぶりに東京農業大学より学生二名が遠路遥々、醸造実習にやってきてくれました。慣れない場所での二週間は大変だったでしょうが、これからの人生に役立つ有意義な時間になっていれば良いなと思います。私も自分が約二十年前に研修で天寿へ来た時のことを今でもたまに思い出しますが、一番は人とコミュニケーションをとることの大切さと楽しさと難しさを教わった時間だったと記憶しています。

酒造りの楽しさは、蔵人みんなで一つの美味い酒を造ることにあると思います。しかし毎日楽しくやる為には、当然個々の技術向上や自らの職責を果たすことがまず重要です。そして、一人では出来ないことも周りにいる人とお互いに助け合いながら高みを目指す事のできる人間関係があればこそだと思います。

新年となり冬本番。毎日の寒さと雪寄せ作業は身体に堪えますが、一緒に酒造りをする蔵人メンバーとお客様への感謝を忘れず、酒造りを志したあの時の気持ちを思い出しながら、「初志貫徹」頑張ります。

本年もご愛飲くださいますよう、宜しくお願いいたします。

襲名
2022-11-08

襲名

代表取締役社長 七代目 大井永吉(旧名 建史)

このたび令和四年十一月一日 七代目永吉を襲名いたしましたことを謹んでご報告申し上げます

コロナ禍中の六代目死去から一年半が過ぎ 業界を取り巻く環境が一段と厳しさを増す折からその責務の重大さを痛感いたしております。

大井家では初代永吉が文政十三年(一八三〇年)八月十六日分家創業以来代々永吉を襲名して参りました。二代目は羽後町佐藤平治家から婿入りし由利本荘矢島の地に根付かせました。酒蔵に布団を持ち込み奮闘した三代目、山形県大山で修業し酒蔵三軒の酒造りを請け負った四代目、東京滝野川醸造試験場で研鑽し酒質を大幅に改善した五代目、長男戦死により突然跡取りとなり広島大醗酵工学部・滝野川醸造試験場を経て約一万石まで大きくした六代目と、代々酒造りを生業とし、地域と共にその発展を目指し様々な活動に積極的に参画して参りました。

私も当家仏壇横にある「積善の家に必ず余慶あり」を精神に地域活動に勤しみ、社長就任以来二十三年目六三歳となり、環境の激変の荒波にもまれながらも、「酒屋の出来る事は良い酒を造る事」「この地で出来る最高の酒を造る事」を目指し、天寿酒米研究会を拡大し、原料米全量を契約栽培米とし、酒造り全工程を見直し品質の向上を図って参りました。

二年前に三女の婿として八代目予定者も迎える事が出来、家を継ぐ事の手応えを感じられる事が何とも有り難く、希望と力が沸いて参ります。

つきましては一九三年目の酒造りを迎えた本年も、 弊社一丸となって、社業発展のためさらに専心努力いたす所存ですので、なお一層のご支援を賜りますようお願い申し上げます。

W受賞

杜氏 一関 陽介

嬉しいことがありました。令和四年度秋田県清酒品評会にて、「秋田県産米の部」「吟醸酒の部」両方の部門で優等賞を受賞することができました。吟醸酒の部では昨年まで三年連続で知事賞受賞、特に一昨年は首席をいただくなど、ここ数年は好成績が続いておりましたので優等賞だったことは少し残念ではありますが、秋田県産米の部においては杜氏就任十年目で悲願の初受賞となり感激しております。以前にも書いたことがありますが、県内の酒蔵の品評会出品酒のレベルは非常に高く、特に純米酒の技術は全国でもトップクラスだと思います。ですから私にとって入賞への門は遠くて狭いものでありましたが、ようやく辿り着くことができました。

秋田県産米の部の出品規格は「秋田県産米を使用した純米酒」であること。今回受賞したお酒は秋田県が独自に新しく開発した酒造好適米「百田」を使用した純米大吟醸酒で、現在弊社の商品ラインアップには無いお酒ですが、技術向上や他商品との比較を目的に試験醸造し続けてきたお酒です。出来上がったものは、現行スペックで造った出品酒と比較しても甲乙つけ難いものであった為、どちらを出品するのか非常に迷いましたが、社長から「良いと思った方で勝負したらどうだ?」という後押しをもらい、出品を決めました。

また「吟醸酒の部」では、今まで山田錦仕込みのいわゆるアル添大吟醸を出品酒として選んできましたが、三年前から同スペックでの純米仕込みに取り組んでおり、今年はその純米大吟醸酒で出品し入賞することができました。本当は一番になりたい私ですが、どちらも今まで取り組んできた成果が形となり、杜氏就任後初の県鑑評会二部門ダブル受賞は非常に感慨深いものがあります。

弊社では毎年試験醸造が様々あり、今まで話してきた鑑評会出品酒に限らず、仕込み方法の変更や新しい酵母菌を試してみるなど様々な事に取り組み、最良の酒を生みだす為のスキルアップをし続けています。

今期の酒造りも既に始まり順調に進んでおりますが、契約栽培農家さんが丹精込めて育てたお米を少しでも良いお酒にして皆様へ届ける為に、いただいた賞を糧に蔵人一丸となって頑張ります!

夏の思い出
2022-09-01

夏の思い出

代表取締役社長 大井建史

コロナ禍で出張できない日々が三年近く続いていたが、この夏二つのイベントが有りました。

一つはフランスで開催された日本酒コンテスト「クラマスター」生酛部門最高賞・審査員賞を受賞し、去る七月六日表彰式出席の為パリの日本大使公邸まで行ってきた事。

受賞したのは大変光栄なのですが、正直還暦を超えた私には「コロナ禍の今か!!」感もありました。しかし、百九十三年目を迎える七代目蔵元として参加すべきと社員に勧められ、これまでは無かったワクチン接種証明等出・入国手続きに必要な数々の手続きをこなし、六十三歳の肝試しに行って参りました。

パリのホテルは古い建物をDIYで改装したような部屋で、一人しか乗れない様なエレベーターとすれ違いギリギリの螺旋階段の建物でした。一日目の午前三時頃に火災報知機が鳴るアクシデントが有り、時差ボケの上に眠れない一夜を過ごしました。その後はポケトーク使いに度胸が付き、グーグル翻訳も併用し現代の利器に感謝しながら、審査員のパリソムリエ協会メンバーの方々と日本酒の将来性や鳥海山生酛純米とのマリアージュの幅広さや評価等をお聞きする事が出来ました。ホテルクリヨンのタラのムニエルやチーズソムリエチャンピオンお勧めのチーズ「オッソー・イラティ」との相性は最高でした。言葉の壁でお相手にはご難儀をおかけしながらも有意義に楽しく過ごしました。

パリソムリエ協会の名誉会員になれたことや、パリのユネスコ大使館の尾池ユネスコ特命全権大使を始めとする皆様の日本酒へのサポート体制も素晴らしく、日本酒が世界遺産になれる日もそう遠くはないのではと感じました。

二つ目は「護衛艦ちょうかい」を訪問する機会に恵まれた事。

秋田と山形の県境に聳える麗峰鳥海山の麓に創業以来百九十三年目を迎えた弊社は、この母なる山に守られて酒造りを続けて参りました。

旧海軍の重巡洋艦鳥海からの伝統を受け継がれ、海上自衛隊のイージス護衛艦ちょうかいとして日本国の安全を守る為、日夜ご尽力されている乗り組みの皆様に感謝申し上げると共に、弊社の主力商品鳥海・鳥海山と同じ山を仰ぐものとして何かしら繋がり応援できないものかと思っておりましたが、この度ご縁が有り母港の佐世保市に機会を作ってくれた婿の将樹君と共に行って参りました。

ちょうかいでは乗艦に際し濵本先任伍長に大変お世話になり、艦長の小圷(こあくつ)一等海佐だけでなく飯ケ谷第八護衛艦隊司令にもご挨拶出来ました。

乗艦時はあいにくの雨で、海上で遮るものがなくずぶ濡れになりましたが、これも海上自衛隊ならではの体験と楽しませて頂きました。

艦の神棚には鳥海山大物忌神社のお札が有り、我が母なる山とのかかわりは感慨深いものが有りました。護衛艦への興味津々の私は艦橋の高さに感動し、艦長席に座らせて頂いたおりには感激のあまり大変興奮致しました。

長い航海の合間に弊社のお酒を通して、鳥海山の息吹をお届けすることで、心身ともに癒しを感じて頂く事が出来れば、醸造する我々も酒屋冥利に尽きるのですが…

楽しさを見出す

杜氏 一関 陽介

八月九日に山形県の酒造業界の若手の皆様を対象に講演させていただく機会をいただきました。私が入社した時の気持ちや、今現在杜氏として仕事ができていることの喜びの話、会社の方針や目指す酒の事、自分達が取り組んでいる事など、二時間に亘り話をさせていただきました。秋田県内では講演の経験はあったものの、他県では初めての経験でしたので慣れない場所でもあり非常に緊張いたしましたが、なんとか務めることができたように思います。若輩ながらこの数年、講師依頼をいただくことがあり、我ながら少しずつ要領を得てスムーズに人前で話ができるようになったように感じています。

どんなに経験年数が長くなろうが生涯勉強中の身であると思いながらも、杜氏歴も十年を超えてきますとただ人の話を聞いているだけではダメで、自分が経験してきたことを業界の為、次世代の方々の為に伝えていくことも必要になってくるのでしょう。

私は人前で話をすることに緊張しますし、極度の責任感から毎回物凄い覚悟の上で臨みます。また、自分の語彙力に自信がないので、相手に伝わらないのではないかという恐怖感が抜けません。それでも最近は、話が上手でなくても気持ちが相手に伝わると、有難いことにそれを聞いた相手が更にいろいろな話をしてくれるという楽しさも感じることができるようになりました。

相手が何を聞きたいのか、どう話したら分かりやすいのか。また相手に問うことも内容に必要な気がします。そんなことを考えていると、復習になるのと共に、自分に今足りない事が見えてきたりします。相手に伝えようと努力することが実は自分の為になっていることにようやく気が付きました。

話す内容が一番大切ではあるのですが、伝わらなければ意味がないので、最近は如何に伝えるかに重点を置いて話をするように心がけています。これは何も講演に限ったことではなくて、お客様へのお酒の説明であったり、酒造りの現場での指示や連絡、相談においても同じで、自分の発言における相手の理解度が深いほど仕事の質や効率にも影響しているように実感します。表に出るより、黙々と作業する事の方が好きな私ですが、苦手だと思っていてもいざやってみると上手にできなくても勉強になる事がきっとまだあるので、酒造りに支障がない範囲でいろんなことにチャレンジしてみたいと思います。

まもなく収穫の秋を迎えます。八月は大雨にみまわれるなど天候に恵まれず、弊社酒米研究会の原料米の質も心配されるところです。自然には勝てませんが、研究会メンバーそれぞれの努力で良質の米が一か月後に蔵に入って来ることを願い、それを万全の態勢で受け入れられるように社員一丸準備をしていきたいと思います。

会社のアンチエイジング
2022-06-29

会社のアンチエイジング

代表取締役社長 大井建史

秋田も梅雨入りをしましたが、今年も異常気象で田植え後日照時間が少なく低温、かと思うと平年より7度も高い天気が続いたりと、出穂前の農家には厳しい判断と迅速な行動が求められる状態です。

この度秋田県とトヨタ自動車東日本株式会社様の共催で県内企業の指導企画があり、弊社では5月から5S活動を中心とした改善活動を開始いたしました。

トヨタ自動車東日本株式会社様は東日本大震災以来地域への貢献を目指し、相互研鑽活動と称して共に活動しながら問題点を探し、共に解決の為の活動をするという形で、私共の会社の土俵に降り肩を並べて進めて頂ける、本当に身になる形のご支援を頂いております。

思い起こせば、私が社長になりたての頃、焼酎ブーム・ワインブームのあおりを受け、日本酒の消費状況が激減期で会社の存亡をかけての改革に挑まざるをえませんでした。同時期に廃業した製材所の債務も抱えメンタル的にも大変厳しい時期でしたが、未だ到底及びませんが曾祖母の「垂涎の的となる酒を造れ」との教えに向かう事。解雇をせずに適正人数になるまで耐える事。給料制度の改変。人事制度の変更。能力給制度の導入。製造方法の研究・改変。農大花酵母の研究・導入。1.8L3千円以内でどこまで良い酒が出来るかへの挑戦・新商品開発・5Sなど、コンサルタントも導入しながら必死に駆けずり回りました。

改革は一人ではできるはずもなく、右腕・左腕と必死に力を合わせ、また、社員全員がやめる事もなく協力してくれたのだと、今つくづく思います。

瓶詰ラインが老朽化し、コロナ前に計画を練っておりましたが、コロナ禍やウクライナ戦争等で見積もりが狂い売り上げも変わり、計画が二転三転しております。

コロナ禍で近年経験した事のない地球全体が非常時となる中、高度成長期以来なかった品不足、この日本でこんなに急に物が作れない様な事に成ると誰が想像したでしょう?

創業以来193年目に突入を前に、次代を担う社員たちが、自ら考え自分の仕事に対する姿勢を正し、能動的に会社の総点検をトヨタ自動車東日本株式会社様のご指導の下進められる事に心から感謝申し上げます。

さて、今年パリで開催された日本酒のコンテスト 「クラマスター2022」で「生酛仕込純米酒鳥海山」が生酛の部でトップの審査員賞を受賞いたしました。5部門のトップのみパリで発表される表彰式に招待されました。国内出張も控えてきた中パリまでの出張は腰が引けましたが、1.000点以上の出品酒のトップ5の蔵として参加して参ります。更に授賞式では、最高賞となる「プレジデント賞」が発表されます。乞うご期待です。

楽しさを見出す

杜氏 一関 陽介

八月九日に山形県の酒造業界の若手の皆様を対象に講演させていただく機会をいただきました。私が入社した時の気持ちや、今現在杜氏として仕事ができていることの喜びの話、会社の方針や目指す酒の事、自分達が取り組んでいる事など、二時間に亘り話をさせていただきました。秋田県内では講演の経験はあったものの、他県では初めての経験でしたので慣れない場所でもあり非常に緊張いたしましたが、なんとか務めることができたように思います。若輩ながらこの数年、講師依頼をいただくことがあり、我ながら少しずつ要領を得てスムーズに人前で話ができるようになったように感じています。

どんなに経験年数が長くなろうが生涯勉強中の身であると思いながらも、杜氏歴も十年を超えてきますとただ人の話を聞いているだけではダメで、自分が経験してきたことを業界の為、次世代の方々の為に伝えていくことも必要になってくるのでしょう。

私は人前で話をすることに緊張しますし、極度の責任感から毎回物凄い覚悟の上で臨みます。また、自分の語彙力に自信がないので、相手に伝わらないのではないかという恐怖感が抜けません。それでも最近は、話が上手でなくても気持ちが相手に伝わると、有難いことにそれを聞いた相手が更にいろいろな話をしてくれるという楽しさも感じることができるようになりました。

相手が何を聞きたいのか、どう話したら分かりやすいのか。また相手に問うことも内容に必要な気がします。そんなことを考えていると、復習になるのと共に、自分に今足りない事が見えてきたりします。相手に伝えようと努力することが実は自分の為になっていることにようやく気が付きました。

話す内容が一番大切ではあるのですが、伝わらなければ意味がないので、最近は如何に伝えるかに重点を置いて話をするように心がけています。これは何も講演に限ったことではなくて、お客様へのお酒の説明であったり、酒造りの現場での指示や連絡、相談においても同じで、自分の発言における相手の理解度が深いほど仕事の質や効率にも影響しているように実感します。表に出るより、黙々と作業する事の方が好きな私ですが、苦手だと思っていてもいざやってみると上手にできなくても勉強になる事がきっとまだあるので、酒造りに支障がない範囲でいろんなことにチャレンジしてみたいと思います。

まもなく収穫の秋を迎えます。八月は大雨にみまわれるなど天候に恵まれず、弊社酒米研究会の原料米の質も心配されるところです。自然には勝てませんが、研究会メンバーそれぞれの努力で良質の米が一か月後に蔵に入って来ることを願い、それを万全の態勢で受け入れられるように社員一丸準備をしていきたいと思います。

春爛漫
2022-05-18

春爛漫

代表取締役社長 大井建史

ゴールデンウィークも終り、今は田植えの真っ盛りです。新緑が一斉に力強く広がりながらも、その色に幼さや若々しさ、生命の息吹を感じる一年で最も魅力的な季節であり、酒造りにたずさわる私共には、やり遂げた解放感を感じる時でもあります。

東京で生まれ育った家内も田植えされたばかりの稲を見ると「水を張った田んぼの風になびくちょぼちょぼの植たばかりの苗が一番好き」と毎年言いますし、秋田でもこの地域しか食べない早春の山菜〝さし〟を食べると「秋田に嫁に来て良かったと思う」と言います。東京で過ごした期間の倍近く秋田で過ごして来たのに「そこ?」と思いながらも、芽吹く季節が好きと言っているのだなと理解しております。

4月23日の「花見酒まるしぇ」は、前夜の大雨・朝からは雨はほぼ止みましたが、風と低温で前日が桜満開を迎えた矢島でしたが、二割がた花は散ってしまいました。

にもかかわらず400名ものお客様にいらして頂き、共創開催して頂いた飲食店の皆様もコロナ禍での皆様のお買い上げと沢山の笑顔に大変感謝しておりました。天候の悪い中本当にありがとうございました。

六代目が亡くなってからちょうど一年が経ちました。

遺された物を一挙に整理し片付けるのは、中々難しく遅々として進みません(歳のせいも有りますが…)代を重ねた物・思い出のある物が多く、使えない物・使わない物として処分するのか、歴史的な物として保存するのか等々気力を貯めて立ち向かう日々が続きそうです。六代目に引退後たっぷり時間があったのだから等と思うのですが、同時に根気仕事は思いはありながらも進まなかったのだろうと同情したりで、家内と顔を見合わせながらまぁ頑張ります。

七代目となって最初の酒造りが5月2日に皆造(全ての酒を搾り終わる事)となりました。

1830年秋に初めての酒造りが始まり、1831年春に一回目の酒造りを終えて以来192回目の酒造りが滞りなく終わりました。

コロナ前と比べると製造量も減り、私が家に帰って以来37回目で一番少ない造り量となりました。それでも一関杜氏には十回目の記念すべき年であり、その分一本一本への思いと集中度も高まり、火入れもすべて終了し、冷蔵貯蔵用の冷蔵庫もパンパンでハチキレそうな状態です。今年の酒にもご期待ください。

コロナ禍に始まり、悲惨極まりないウクライナ戦争、独裁国の脅威、中国のロックダウン等々世界の平和や経済の安定は予断を許さない状況ではありますが、我々庶民が出来る事は明るい毎日を支える生活を自分達で守って行こうと意識し、何か出来る事を一つでもと思いをはせながら、大切な方と共に心を満たす一杯を傾ける事ではないでしょうか?

LET,S TRY IT!

杜氏 一関 陽介

四月十一日に今季の仕込み作業が終わり、冬期間一緒に酒造りをした蔵人チームも解散となりました。それから残るもろみの管理、搾り作業は製造社員で行い、五月二日に無事皆造を迎えることができました。とはいえ搾って終わりではなく、できるだけ早く火入れを行い商品特性に合わせた貯蔵管理が完了して本当の終わりを迎えます。

毎年大型連休前は商品の出荷量が多く、そこに皆造の時期が重なり、作業予定に変更が生じることもしばしば。注文をいただけることが有難い事と分かってはいても、搾りあがった新酒の瓶詰め・火入れ作業がなかなか思うように進まない事に、私にとっては非常にもどかしく頭を悩ませる時期なのです。

瓶詰めが遅れればタンクで低温貯蔵しておくことも可能ですが、お酒は時間の経過と比例して熟成が進んでしまいます。その為少しでも新鮮な状態で瓶貯蔵したいという想いから休日も交代制で作業をすることがここ数年の通例となっていましたが、今年は計画通りに作業が進み、ゴールデンウィークまでに搾り上がった全てのお酒が全工程終了することができました。お酒にとって良い事なのは当然ながら、何年振りか分かりませんが私もお酒の状態を深く心配することなく休暇をとることができました。

私の事はさておき、前号で少し触れましたが、「生酒は翌日・火入れ酒においても一週間以内に瓶詰めし、出来る限り早く火入れを行う」という搾った後の管理基準を定め、コロナ禍で消費が落ち込んでいる厳しい状況であるからこそ品質向上の為に自分達ができることを迅速に進めてきました。結果として予定通り終えることができたのは、その考え方が社内全体に伝わり、少しでも酒質を良くしようと社員各々が役割を果たした成果であるように思え、非常に嬉しく感じています。

今後この努力が酒質にどのように影響していくのか経過観察していきながら、来年度に向けて何ができるのかを今から考えていきたいと思います。

お酒の処理が終わり、蔵の作業はもろみ蔵と上槽室の清掃、道具類の後片付けを残すのみとなりました。どれも非常に重要な作業であり、物への感謝を込めて手入れする事と、来季の酒造りがスムーズにスタートできるようにする為の点検の意味も兼ねています。ゆっくりはしていられませんが、最後の最後まで気を抜かず次につながる丁寧な作業を心掛けたいと思います。

最後になりますが、六月に何年振りかで百貨店(東京都)での試飲販売に立たせていただくことになりました。あまりにも久々過ぎて緊張しておりますが、直接お客様にお酒をご紹介できる貴重な機会をいただきましたので、是非お立ち寄りください。沢山の方とお会いできるのを楽しみにしております。

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20歳未満のアルコール類の購入や飲酒は法律で禁止されています。