謹賀新年
代表取締役社長 七代目 大井永吉
明けましておめでとうございます。
今年の秋は暖冬で、今の所非常に雪は少ないです。
心配された猛暑による米の発育不良につきましても、杜氏になり十一造で中堅の安定感を発揮し始めた一関陽介杜氏が、1本目の酒粕の多さにはギョッとしてはいましたが、いち早く米室の特徴をつかみ対応したため、皆様にすでにお届けした「純米吟醸初槽」や「天寿霞純米」等の絞り立て新酒が順調に醸造されたことをご理解いただけたと思います。
スパークリングの中では価格が安いのですが賞をよく頂いている「スパークリング鳥海山」をクリスマス前に発売する為、新発売当時より10月から酒造りを始めました。杜氏をはじめ蔵人には難儀をかけておりますが、今回はこれまで最高のガス圧になり、酸味と甘みのバランスも良くキレが良い最高の仕上がりとなりました。
今年の天寿にも是非ご期待ください。
コロナ禍以降厳しい環境の中、何とか(何もない)ではなく、少しでも可能な限りみなさまとの交流と、お酒を軸とした楽しさ・豊さを共有しようと、ドライブスルーや規模を縮小した可能な限りの蔵開放を開催してまいりました。今年も5類とはなりましても感染予防の観点から蔵案内は予約・人数限定方式ですが、試飲やグッズ販売、食べ物の販売は以前のように開催致します。
これまでと全く同じにとはできず、会場の関係で猿倉人形は出来ません。また、瓶詰工場も洗瓶機や充填機・ジュール熱殺菌機等のセイン説により、試飲の会場もかなり狭くなります。スタッフも5年の間に入れ替わり不慣れな者も多いのですが、一生懸命頑張りますので、ご理解を賜ります様、よろしくお願い申し上げます。
世の中は大変な人手不足ではありますが、今回もボランティアスタッフ大募集です。打ち上げの懇親会でご一緒に充実感に浸りましょう(笑)
昨年11月10日に7代目永吉襲名披露宴を開催させて頂きました。文政13年以来大井家の当主になり次第永吉の名を継いで参りました。
明治以降は先代が亡くなってからとなりましたので、社長になって25年目の襲名であります。あと数年で創業200年を迎える天寿酒造の新たな覚悟をと考えました。しかし、7代目として襲名しての1番の感慨は家を継ぐという事でした。
都会とは違い相続した土地と山林はたいした財産にはなりません。コロナ禍に過疎化はさらに加速度的に進み始めましたが、首都圏のみの発展で地方の発展をなくして、日本は成立しないと思います。急に声高になった食料安全保障も既に農家に後継ぎは無く、一度途切れた農家や農地は蘇らないというすぐそこにある危機に気が付いていない感じです。
襲名披露で8代目・9代目と共に皆様にまみえることが出来ましたのは、誠に有り難く皆様のお陰と心から感謝申し上げます。
この様な時代であるからこそ、200年の信用と伝統を背に、足元を見つめ今できることをしっかりと固め、「この地で出来る最高の酒」を醸し、和食と共に広く社会を見つめながら、「世界に通用する酒蔵」を目指してまいります。今年もよろしくお願い申し上げます。
一意専心
杜氏 一関 陽介
あけましておめでとうございます。今年も皆様方より沢山の「美味い!」がいただけますように製造メンバー一丸で良酒を醸す所存ですので、是非ご期待いただければと思います。
今期の酒造りも予定しているもろみ本数の4割が終わろうとしており、早いもので中盤~後半戦に入ろうとしているところです。今年の酒造りのトピックスとしてはやはり前号でも記しましたが、秋田県産の原料米が災害級の天候不良によって収量が悪いこと、加えて夏の猛暑によって顕著な不溶性障害が出ていることでしょうか。搾られてくる新酒の傾向としてはその不溶性によって粕歩合が予想通り全体的に高いですが、上品でキレイな酒質に仕上がっていると思います。
年末ギリギリまで机の前では最終的な原料米の数量確保に頭を悩ませ、現場に出れば米と向き合いどういう原料処理をすれば自分達の酒のベストを出せるのか考える毎日でした。
「量が足りない」「質が良くない」という「ない」という言葉はマイナスの意味に捉えてしまいがちです。しかし、都合の良い考え方かもしれませんが、「来年はもっと沢山造ることができる」「自分達のスキルを存分出すことができるJという「できる」という言葉に変換することで、私は自分のモチベーションを上げることにしています。
絶対的に起こらない方が良いのですが、近年は毎年のように全国どこかで異常気象による自然災害が起きているように思います。災害とまではいかなくても、豪雨や酷暑による雨など原料米の栽培にとって厳しい気象条件が今後当たり前になっていくのだとしたら、当然原材料の品質も厳しいものになり、酒造りにおいてもその品質に合わせた造り方がめられていくのは必然でしょう。未来の事など、あくまで予測に過ぎません。ただ今確実に出来ることは目の前の酒造りに取り組み、その時怒ったことを記録し記憶することを怠らないようにすること。きっとその中に未来役に立つことがあると信じて取り組むことだと思います。
さて、少し話は逸れますが、昨年末毎年恒例ではありますが、私の後輩にあたる東京農業大学の学生3名が遠路遥々、醸造実習に来てくれました。毎年この期間は自分が実習で天寿に来た時のことを思い出しますが、約20年前の自分は、今の自分の姿を想像できていなかったと思います。未来のことを考えて毎日生きることはなかなかできることでは無いと思います。だからこそ今を精一杯に生きることが未来の自分のために大事だと思います。
2週間ではありましたが、学生たちには「自分の未来のために今を精一杯に」という想いが伝わっていれば良いなと思うのと同時に、私もさらに日々研鑽を積むことで未来の自分のために立ち止まってはいられないという気持ちにさせられました。
酒造りは人生と同じなのかもしれない。きっと経験値が増えれば円熟味が出てくるのでしょう。杜氏12年目の酒造りも蔵人メンバーと共に最後まで事故なく怪我なく終えられるよう、「一意専心」春まで頑張ります。





