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蔵元通信

日頃お世話になっている皆様に、私ども天寿酒造が何を考え・守り・求め・挑戦しているのか、その思いをお伝えしご理解いただくために、「蔵元通信」を発行しています。
お酒はどのような狙いで造られたものなのか、季節や旬の食べ物に合うお酒、また飲み方、そして鳥海山の登山口であるこの矢島町の様子などをお届けいたします。

襲名
2022-11-08

襲名

代表取締役社長 七代目 大井永吉(旧名 建史)

このたび令和四年十一月一日 七代目永吉を襲名いたしましたことを謹んでご報告申し上げます

コロナ禍中の六代目死去から一年半が過ぎ 業界を取り巻く環境が一段と厳しさを増す折からその責務の重大さを痛感いたしております。

大井家では初代永吉が文政十三年(一八三〇年)八月十六日分家創業以来代々永吉を襲名して参りました。二代目は羽後町佐藤平治家から婿入りし由利本荘矢島の地に根付かせました。酒蔵に布団を持ち込み奮闘した三代目、山形県大山で修業し酒蔵三軒の酒造りを請け負った四代目、東京滝野川醸造試験場で研鑽し酒質を大幅に改善した五代目、長男戦死により突然跡取りとなり広島大醗酵工学部・滝野川醸造試験場を経て約一万石まで大きくした六代目と、代々酒造りを生業とし、地域と共にその発展を目指し様々な活動に積極的に参画して参りました。

私も当家仏壇横にある「積善の家に必ず余慶あり」を精神に地域活動に勤しみ、社長就任以来二十三年目六三歳となり、環境の激変の荒波にもまれながらも、「酒屋の出来る事は良い酒を造る事」「この地で出来る最高の酒を造る事」を目指し、天寿酒米研究会を拡大し、原料米全量を契約栽培米とし、酒造り全工程を見直し品質の向上を図って参りました。

二年前に三女の婿として八代目予定者も迎える事が出来、家を継ぐ事の手応えを感じられる事が何とも有り難く、希望と力が沸いて参ります。

つきましては一九三年目の酒造りを迎えた本年も、 弊社一丸となって、社業発展のためさらに専心努力いたす所存ですので、なお一層のご支援を賜りますようお願い申し上げます。

W受賞

杜氏 一関 陽介

嬉しいことがありました。令和四年度秋田県清酒品評会にて、「秋田県産米の部」「吟醸酒の部」両方の部門で優等賞を受賞することができました。吟醸酒の部では昨年まで三年連続で知事賞受賞、特に一昨年は首席をいただくなど、ここ数年は好成績が続いておりましたので優等賞だったことは少し残念ではありますが、秋田県産米の部においては杜氏就任十年目で悲願の初受賞となり感激しております。以前にも書いたことがありますが、県内の酒蔵の品評会出品酒のレベルは非常に高く、特に純米酒の技術は全国でもトップクラスだと思います。ですから私にとって入賞への門は遠くて狭いものでありましたが、ようやく辿り着くことができました。

秋田県産米の部の出品規格は「秋田県産米を使用した純米酒」であること。今回受賞したお酒は秋田県が独自に新しく開発した酒造好適米「百田」を使用した純米大吟醸酒で、現在弊社の商品ラインアップには無いお酒ですが、技術向上や他商品との比較を目的に試験醸造し続けてきたお酒です。出来上がったものは、現行スペックで造った出品酒と比較しても甲乙つけ難いものであった為、どちらを出品するのか非常に迷いましたが、社長から「良いと思った方で勝負したらどうだ?」という後押しをもらい、出品を決めました。

また「吟醸酒の部」では、今まで山田錦仕込みのいわゆるアル添大吟醸を出品酒として選んできましたが、三年前から同スペックでの純米仕込みに取り組んでおり、今年はその純米大吟醸酒で出品し入賞することができました。本当は一番になりたい私ですが、どちらも今まで取り組んできた成果が形となり、杜氏就任後初の県鑑評会二部門ダブル受賞は非常に感慨深いものがあります。

弊社では毎年試験醸造が様々あり、今まで話してきた鑑評会出品酒に限らず、仕込み方法の変更や新しい酵母菌を試してみるなど様々な事に取り組み、最良の酒を生みだす為のスキルアップをし続けています。

今期の酒造りも既に始まり順調に進んでおりますが、契約栽培農家さんが丹精込めて育てたお米を少しでも良いお酒にして皆様へ届ける為に、いただいた賞を糧に蔵人一丸となって頑張ります!

夏の思い出
2022-09-01

夏の思い出

代表取締役社長 大井建史

コロナ禍で出張できない日々が三年近く続いていたが、この夏二つのイベントが有りました。

一つはフランスで開催された日本酒コンテスト「クラマスター」生酛部門最高賞・審査員賞を受賞し、去る七月六日表彰式出席の為パリの日本大使公邸まで行ってきた事。

受賞したのは大変光栄なのですが、正直還暦を超えた私には「コロナ禍の今か!!」感もありました。しかし、百九十三年目を迎える七代目蔵元として参加すべきと社員に勧められ、これまでは無かったワクチン接種証明等出・入国手続きに必要な数々の手続きをこなし、六十三歳の肝試しに行って参りました。

パリのホテルは古い建物をDIYで改装したような部屋で、一人しか乗れない様なエレベーターとすれ違いギリギリの螺旋階段の建物でした。一日目の午前三時頃に火災報知機が鳴るアクシデントが有り、時差ボケの上に眠れない一夜を過ごしました。その後はポケトーク使いに度胸が付き、グーグル翻訳も併用し現代の利器に感謝しながら、審査員のパリソムリエ協会メンバーの方々と日本酒の将来性や鳥海山生酛純米とのマリアージュの幅広さや評価等をお聞きする事が出来ました。ホテルクリヨンのタラのムニエルやチーズソムリエチャンピオンお勧めのチーズ「オッソー・イラティ」との相性は最高でした。言葉の壁でお相手にはご難儀をおかけしながらも有意義に楽しく過ごしました。

パリソムリエ協会の名誉会員になれたことや、パリのユネスコ大使館の尾池ユネスコ特命全権大使を始めとする皆様の日本酒へのサポート体制も素晴らしく、日本酒が世界遺産になれる日もそう遠くはないのではと感じました。

二つ目は「護衛艦ちょうかい」を訪問する機会に恵まれた事。

秋田と山形の県境に聳える麗峰鳥海山の麓に創業以来百九十三年目を迎えた弊社は、この母なる山に守られて酒造りを続けて参りました。

旧海軍の重巡洋艦鳥海からの伝統を受け継がれ、海上自衛隊のイージス護衛艦ちょうかいとして日本国の安全を守る為、日夜ご尽力されている乗り組みの皆様に感謝申し上げると共に、弊社の主力商品鳥海・鳥海山と同じ山を仰ぐものとして何かしら繋がり応援できないものかと思っておりましたが、この度ご縁が有り母港の佐世保市に機会を作ってくれた婿の将樹君と共に行って参りました。

ちょうかいでは乗艦に際し濵本先任伍長に大変お世話になり、艦長の小圷(こあくつ)一等海佐だけでなく飯ケ谷第八護衛艦隊司令にもご挨拶出来ました。

乗艦時はあいにくの雨で、海上で遮るものがなくずぶ濡れになりましたが、これも海上自衛隊ならではの体験と楽しませて頂きました。

艦の神棚には鳥海山大物忌神社のお札が有り、我が母なる山とのかかわりは感慨深いものが有りました。護衛艦への興味津々の私は艦橋の高さに感動し、艦長席に座らせて頂いたおりには感激のあまり大変興奮致しました。

長い航海の合間に弊社のお酒を通して、鳥海山の息吹をお届けすることで、心身ともに癒しを感じて頂く事が出来れば、醸造する我々も酒屋冥利に尽きるのですが…

楽しさを見出す

杜氏 一関 陽介

八月九日に山形県の酒造業界の若手の皆様を対象に講演させていただく機会をいただきました。私が入社した時の気持ちや、今現在杜氏として仕事ができていることの喜びの話、会社の方針や目指す酒の事、自分達が取り組んでいる事など、二時間に亘り話をさせていただきました。秋田県内では講演の経験はあったものの、他県では初めての経験でしたので慣れない場所でもあり非常に緊張いたしましたが、なんとか務めることができたように思います。若輩ながらこの数年、講師依頼をいただくことがあり、我ながら少しずつ要領を得てスムーズに人前で話ができるようになったように感じています。

どんなに経験年数が長くなろうが生涯勉強中の身であると思いながらも、杜氏歴も十年を超えてきますとただ人の話を聞いているだけではダメで、自分が経験してきたことを業界の為、次世代の方々の為に伝えていくことも必要になってくるのでしょう。

私は人前で話をすることに緊張しますし、極度の責任感から毎回物凄い覚悟の上で臨みます。また、自分の語彙力に自信がないので、相手に伝わらないのではないかという恐怖感が抜けません。それでも最近は、話が上手でなくても気持ちが相手に伝わると、有難いことにそれを聞いた相手が更にいろいろな話をしてくれるという楽しさも感じることができるようになりました。

相手が何を聞きたいのか、どう話したら分かりやすいのか。また相手に問うことも内容に必要な気がします。そんなことを考えていると、復習になるのと共に、自分に今足りない事が見えてきたりします。相手に伝えようと努力することが実は自分の為になっていることにようやく気が付きました。

話す内容が一番大切ではあるのですが、伝わらなければ意味がないので、最近は如何に伝えるかに重点を置いて話をするように心がけています。これは何も講演に限ったことではなくて、お客様へのお酒の説明であったり、酒造りの現場での指示や連絡、相談においても同じで、自分の発言における相手の理解度が深いほど仕事の質や効率にも影響しているように実感します。表に出るより、黙々と作業する事の方が好きな私ですが、苦手だと思っていてもいざやってみると上手にできなくても勉強になる事がきっとまだあるので、酒造りに支障がない範囲でいろんなことにチャレンジしてみたいと思います。

まもなく収穫の秋を迎えます。八月は大雨にみまわれるなど天候に恵まれず、弊社酒米研究会の原料米の質も心配されるところです。自然には勝てませんが、研究会メンバーそれぞれの努力で良質の米が一か月後に蔵に入って来ることを願い、それを万全の態勢で受け入れられるように社員一丸準備をしていきたいと思います。

会社のアンチエイジング
2022-06-29

会社のアンチエイジング

代表取締役社長 大井建史

秋田も梅雨入りをしましたが、今年も異常気象で田植え後日照時間が少なく低温、かと思うと平年より7度も高い天気が続いたりと、出穂前の農家には厳しい判断と迅速な行動が求められる状態です。

この度秋田県とトヨタ自動車東日本株式会社様の共催で県内企業の指導企画があり、弊社では5月から5S活動を中心とした改善活動を開始いたしました。

トヨタ自動車東日本株式会社様は東日本大震災以来地域への貢献を目指し、相互研鑽活動と称して共に活動しながら問題点を探し、共に解決の為の活動をするという形で、私共の会社の土俵に降り肩を並べて進めて頂ける、本当に身になる形のご支援を頂いております。

思い起こせば、私が社長になりたての頃、焼酎ブーム・ワインブームのあおりを受け、日本酒の消費状況が激減期で会社の存亡をかけての改革に挑まざるをえませんでした。同時期に廃業した製材所の債務も抱えメンタル的にも大変厳しい時期でしたが、未だ到底及びませんが曾祖母の「垂涎の的となる酒を造れ」との教えに向かう事。解雇をせずに適正人数になるまで耐える事。給料制度の改変。人事制度の変更。能力給制度の導入。製造方法の研究・改変。農大花酵母の研究・導入。1.8L3千円以内でどこまで良い酒が出来るかへの挑戦・新商品開発・5Sなど、コンサルタントも導入しながら必死に駆けずり回りました。

改革は一人ではできるはずもなく、右腕・左腕と必死に力を合わせ、また、社員全員がやめる事もなく協力してくれたのだと、今つくづく思います。

瓶詰ラインが老朽化し、コロナ前に計画を練っておりましたが、コロナ禍やウクライナ戦争等で見積もりが狂い売り上げも変わり、計画が二転三転しております。

コロナ禍で近年経験した事のない地球全体が非常時となる中、高度成長期以来なかった品不足、この日本でこんなに急に物が作れない様な事に成ると誰が想像したでしょう?

創業以来193年目に突入を前に、次代を担う社員たちが、自ら考え自分の仕事に対する姿勢を正し、能動的に会社の総点検をトヨタ自動車東日本株式会社様のご指導の下進められる事に心から感謝申し上げます。

さて、今年パリで開催された日本酒のコンテスト 「クラマスター2022」で「生酛仕込純米酒鳥海山」が生酛の部でトップの審査員賞を受賞いたしました。5部門のトップのみパリで発表される表彰式に招待されました。国内出張も控えてきた中パリまでの出張は腰が引けましたが、1.000点以上の出品酒のトップ5の蔵として参加して参ります。更に授賞式では、最高賞となる「プレジデント賞」が発表されます。乞うご期待です。

楽しさを見出す

杜氏 一関 陽介

八月九日に山形県の酒造業界の若手の皆様を対象に講演させていただく機会をいただきました。私が入社した時の気持ちや、今現在杜氏として仕事ができていることの喜びの話、会社の方針や目指す酒の事、自分達が取り組んでいる事など、二時間に亘り話をさせていただきました。秋田県内では講演の経験はあったものの、他県では初めての経験でしたので慣れない場所でもあり非常に緊張いたしましたが、なんとか務めることができたように思います。若輩ながらこの数年、講師依頼をいただくことがあり、我ながら少しずつ要領を得てスムーズに人前で話ができるようになったように感じています。

どんなに経験年数が長くなろうが生涯勉強中の身であると思いながらも、杜氏歴も十年を超えてきますとただ人の話を聞いているだけではダメで、自分が経験してきたことを業界の為、次世代の方々の為に伝えていくことも必要になってくるのでしょう。

私は人前で話をすることに緊張しますし、極度の責任感から毎回物凄い覚悟の上で臨みます。また、自分の語彙力に自信がないので、相手に伝わらないのではないかという恐怖感が抜けません。それでも最近は、話が上手でなくても気持ちが相手に伝わると、有難いことにそれを聞いた相手が更にいろいろな話をしてくれるという楽しさも感じることができるようになりました。

相手が何を聞きたいのか、どう話したら分かりやすいのか。また相手に問うことも内容に必要な気がします。そんなことを考えていると、復習になるのと共に、自分に今足りない事が見えてきたりします。相手に伝えようと努力することが実は自分の為になっていることにようやく気が付きました。

話す内容が一番大切ではあるのですが、伝わらなければ意味がないので、最近は如何に伝えるかに重点を置いて話をするように心がけています。これは何も講演に限ったことではなくて、お客様へのお酒の説明であったり、酒造りの現場での指示や連絡、相談においても同じで、自分の発言における相手の理解度が深いほど仕事の質や効率にも影響しているように実感します。表に出るより、黙々と作業する事の方が好きな私ですが、苦手だと思っていてもいざやってみると上手にできなくても勉強になる事がきっとまだあるので、酒造りに支障がない範囲でいろんなことにチャレンジしてみたいと思います。

まもなく収穫の秋を迎えます。八月は大雨にみまわれるなど天候に恵まれず、弊社酒米研究会の原料米の質も心配されるところです。自然には勝てませんが、研究会メンバーそれぞれの努力で良質の米が一か月後に蔵に入って来ることを願い、それを万全の態勢で受け入れられるように社員一丸準備をしていきたいと思います。

春爛漫
2022-05-18

春爛漫

代表取締役社長 大井建史

ゴールデンウィークも終り、今は田植えの真っ盛りです。新緑が一斉に力強く広がりながらも、その色に幼さや若々しさ、生命の息吹を感じる一年で最も魅力的な季節であり、酒造りにたずさわる私共には、やり遂げた解放感を感じる時でもあります。

東京で生まれ育った家内も田植えされたばかりの稲を見ると「水を張った田んぼの風になびくちょぼちょぼの植たばかりの苗が一番好き」と毎年言いますし、秋田でもこの地域しか食べない早春の山菜〝さし〟を食べると「秋田に嫁に来て良かったと思う」と言います。東京で過ごした期間の倍近く秋田で過ごして来たのに「そこ?」と思いながらも、芽吹く季節が好きと言っているのだなと理解しております。

4月23日の「花見酒まるしぇ」は、前夜の大雨・朝からは雨はほぼ止みましたが、風と低温で前日が桜満開を迎えた矢島でしたが、二割がた花は散ってしまいました。

にもかかわらず400名ものお客様にいらして頂き、共創開催して頂いた飲食店の皆様もコロナ禍での皆様のお買い上げと沢山の笑顔に大変感謝しておりました。天候の悪い中本当にありがとうございました。

六代目が亡くなってからちょうど一年が経ちました。

遺された物を一挙に整理し片付けるのは、中々難しく遅々として進みません(歳のせいも有りますが…)代を重ねた物・思い出のある物が多く、使えない物・使わない物として処分するのか、歴史的な物として保存するのか等々気力を貯めて立ち向かう日々が続きそうです。六代目に引退後たっぷり時間があったのだから等と思うのですが、同時に根気仕事は思いはありながらも進まなかったのだろうと同情したりで、家内と顔を見合わせながらまぁ頑張ります。

七代目となって最初の酒造りが5月2日に皆造(全ての酒を搾り終わる事)となりました。

1830年秋に初めての酒造りが始まり、1831年春に一回目の酒造りを終えて以来192回目の酒造りが滞りなく終わりました。

コロナ前と比べると製造量も減り、私が家に帰って以来37回目で一番少ない造り量となりました。それでも一関杜氏には十回目の記念すべき年であり、その分一本一本への思いと集中度も高まり、火入れもすべて終了し、冷蔵貯蔵用の冷蔵庫もパンパンでハチキレそうな状態です。今年の酒にもご期待ください。

コロナ禍に始まり、悲惨極まりないウクライナ戦争、独裁国の脅威、中国のロックダウン等々世界の平和や経済の安定は予断を許さない状況ではありますが、我々庶民が出来る事は明るい毎日を支える生活を自分達で守って行こうと意識し、何か出来る事を一つでもと思いをはせながら、大切な方と共に心を満たす一杯を傾ける事ではないでしょうか?

LET,S TRY IT!

杜氏 一関 陽介

四月十一日に今季の仕込み作業が終わり、冬期間一緒に酒造りをした蔵人チームも解散となりました。それから残るもろみの管理、搾り作業は製造社員で行い、五月二日に無事皆造を迎えることができました。とはいえ搾って終わりではなく、できるだけ早く火入れを行い商品特性に合わせた貯蔵管理が完了して本当の終わりを迎えます。

毎年大型連休前は商品の出荷量が多く、そこに皆造の時期が重なり、作業予定に変更が生じることもしばしば。注文をいただけることが有難い事と分かってはいても、搾りあがった新酒の瓶詰め・火入れ作業がなかなか思うように進まない事に、私にとっては非常にもどかしく頭を悩ませる時期なのです。

瓶詰めが遅れればタンクで低温貯蔵しておくことも可能ですが、お酒は時間の経過と比例して熟成が進んでしまいます。その為少しでも新鮮な状態で瓶貯蔵したいという想いから休日も交代制で作業をすることがここ数年の通例となっていましたが、今年は計画通りに作業が進み、ゴールデンウィークまでに搾り上がった全てのお酒が全工程終了することができました。お酒にとって良い事なのは当然ながら、何年振りか分かりませんが私もお酒の状態を深く心配することなく休暇をとることができました。

私の事はさておき、前号で少し触れましたが、「生酒は翌日・火入れ酒においても一週間以内に瓶詰めし、出来る限り早く火入れを行う」という搾った後の管理基準を定め、コロナ禍で消費が落ち込んでいる厳しい状況であるからこそ品質向上の為に自分達ができることを迅速に進めてきました。結果として予定通り終えることができたのは、その考え方が社内全体に伝わり、少しでも酒質を良くしようと社員各々が役割を果たした成果であるように思え、非常に嬉しく感じています。

今後この努力が酒質にどのように影響していくのか経過観察していきながら、来年度に向けて何ができるのかを今から考えていきたいと思います。

お酒の処理が終わり、蔵の作業はもろみ蔵と上槽室の清掃、道具類の後片付けを残すのみとなりました。どれも非常に重要な作業であり、物への感謝を込めて手入れする事と、来季の酒造りがスムーズにスタートできるようにする為の点検の意味も兼ねています。ゆっくりはしていられませんが、最後の最後まで気を抜かず次につながる丁寧な作業を心掛けたいと思います。

最後になりますが、六月に何年振りかで百貨店(東京都)での試飲販売に立たせていただくことになりました。あまりにも久々過ぎて緊張しておりますが、直接お客様にお酒をご紹介できる貴重な機会をいただきましたので、是非お立ち寄りください。沢山の方とお会いできるのを楽しみにしております。

飲食店・天寿 共に頑張ろう企画「天寿 花見酒 マルシェ」
2022-03-15

飲食店・天寿 共に頑張ろう企画 「天寿 花見酒 マルシェ」

代表取締役社長 大井建史

2月末の今冬最後かと思われる寒波が過ぎると、久々の青空と共に春を思わせる風を初めて感じました。

192回目の酒造りも昨秋の米の出来もよく順調に推移し、お陰様で新酒の評判も上々です。

コロナ禍は二年の長きにわたり猛威を振るっており、三密を避ける事を必須とされる我々飲食業界も、大変な状況の中何とか乗り越えようともがいている最中です。

「天寿蔵開放」は秋田県下で最初にイベント化し、お陰様で参加者が2千名を超えるまでになりましたが、オミクロン株のパンデミックにより二年連続開催を断念いたしました。

しかし、この様な環境下でも、人が健全に生きて行く為にはイベント等の人間同士のかかわりは大変重要な事と考えます。

また、地元飲食業界は蔓延防止法措置も無く補助機会の少ない大変な状況ですが、天寿が何か出来る事、協創する事で相乗効果が期待できる事はないかと考え「天寿 花見酒 マルシェ」をご提案させていただきました。

例年桜が咲くころに雪室に氷温貯蔵した純米酒を開封するイベントへ、飲食店の皆様のテイクアウト販売のブースを出していただき、参加店皆様の強みと力を合わせ発信力を高めて実施したいと思っています。

初めての試みで何人の方にご来場頂けるか、桜は咲くのか、天気は良いのか判りません。しかし、魅力ある参加店皆様と弊社とで力を合わせ、桜咲く季節に明るい話題を発信・実施する事で、地元の皆様の元気を作り出すことに挑戦したいと思います。

企画詳細はこれから磨きをかけますが、鳥海山麓線矢島駅横の天寿精米所近くの広場で、天寿の酒売り場(雪室氷温熟成純米酒・今季最終の搾りたて生酒等の限定酒)と、飲食店ごとの美味しくお得な限定テイクアウト料理の売り場を密や滞留を避けるため一方通行で設営し、出来るだけ安全な販売に務めます。

料理とお酒をもってお好きな花見スポットへGO!! 『アウトドアで安全ですよね』が狙いです。よろしくお願いいたします。

開催予定は4月23日土曜日

午前10時~午後2時

詳細は4P・ホームページ・SNS・ポスター等で

選択される酒造り

杜氏 一関 陽介

年が明けてから大吟醸の仕込みに没頭しているうちに2月立春を迎え、ここからは少しずつ暖かくなっていくのだろうと思っていた矢先。一日に30cmを超える大雪が2度もあり、暦の上では春でも、積雪は150cmを超え、今冬最高積雪になりました。もろみが発酵中の酒蔵にとっては、蔵が雪で覆われる品温は低温で安定しますが、少し寒すぎるかな・・というのが正直な感想です。私も早朝の自宅の除雪に始まり、出社し仕込み水をタンクに移動する頃には既に疲れ果てていることもしばしば。それでも、酒造りにしようする道具や設備が昔と比較できないほどよくなっているとはいえ、この寒さと雪があるからこそ安定した今の天寿の酒造りができるのだと考えれば、この地に蔵があることに感謝しなければならない部分もあるのだろうとも思います。

さて、肝心の酒造りですが、鑑評会出品クラスの大吟醸の上槽も無事に終わり、中盤~後半戦に差し掛かってきています。令和3年度産の米は比較的溶けやすく味乗りの良いお酒が出来やすい年であると言われていますが、米の特性をしっかりと見極め、商品それぞれが持つコンセプトを実現すべく緊張感をもった酒造りができているのではないかというのが今季中間での自己評価です。お客様の口に入るまでが酒造りですから、もろみを搾ったら終わりではなく、その後の管理(これから)が非常に大切になってきます。年明けからコロナウイルス感染第6波がやってきて、非常に厳しい2022年幕開けではありますが、それに負けてたまるかと、生酒は翌日・火入れ酒においても1週間以内に瓶詰めを行うなど、搾った後の管理をしっかりすることで少しでも品質を向上させよう、またこれからどんな状況になろうと耐え得る品質の向上を目指そうと社員一丸となって努力しています。

新しい年に
2022-01-07

新しい年に

代表取締役社長 大井建史

謹んで新年のご挨拶を申し上げます。

本年も変わらぬご愛顧を、お願い申し上げます。

今年は安心して暮らせるウィズコロナ体制が確立することを心から祈っております。

「人と会ってはいけない」と言う人生の根本に関わる事態が起き、人生の岐路にある人達に大きな影響を及ぼした二年余になりました。研修が出来ない。授業が出来ない。部活が出来ない。留学できない。結婚式・披露宴が出来ない。イベントが出来ない。

時代が変わった。新しい生活様式になった。その変化に対応する必要が有るという事は私にも理解できます。

しかし、それと同時に「人に寄り添うおもてなし」日本のお家芸が危機に瀕していると言う事実にも目を向ける必要が有ると思うのです。確かにWEBを使用して顔を見ながらの会議・商談・宴会まで可能とはなりました。禁酒法だと騒がれた飲食店へ行かないお願い。感染防止装備の導入を指導しパーテーションや殺菌・換気設備の投資を義務付けておきながら、営業自粛のお願い。飲食店やそれに関連する皆様、観光・宿泊関係の皆様のご努力と我慢には本当に頭が下がります。

その大変な影響下に在りながら、営業にも出歩けない私たちに出来る事は、「地元で出来る最高の酒」を目指して、一つ一つ改善を積み上げる事。

吟醸系のお酒の管理は品質向上の為全量冷蔵貯蔵となりました。この二十年間こつこつ作り続けた貯蔵用冷蔵庫の在庫は、売り上げ不振となると抱え込みが大きくなり、新酒醸造の縮小調整が必要となります。そんな中でも酒造りは順調に進み、続々と新酒が生まれ、その出来に一喜一憂しながら原料米・酵母・醸造方法の比較醸造を繰り返し、一歩前へ進む努力を続けております。

昨年もお陰様で、全国新酒鑑評会金賞・秋田県知事賞三年連続受賞・ワイングラスでおいしい日本酒アワード最高金賞・クラマスターコンクール金賞・フェミナリーズコンクール金賞・全国燗酒コンクール金賞等々を受賞する事が出来ました。杜氏以下社員が一丸となっての成果に感謝の気持ちでいっぱいです。

蔵開放のイベントは残念ながら今年もドライブスルー販売とさせて頂きます。多くの賞を獲得した実力のある蔵人たちが醸し出す、その日だけの味わいを皆様と酌み交わしたく、今私たちが出来る皆様との絆をつなぐドライブスルー販売会購入特典の、「WEB乾杯イベント」にも是非ご参加ください。

更なる高みへ

杜氏 一関 陽介

令和四年、今年も私の文章を楽しみに読んでいただいている方がいると信じて、酒造りの事や今考えている事などを書かせていただきます。乱文をお許しください。

さて、昨年はコロナウイルスへの感染拡大によって皆様にとっても一年を通して行動自粛を求められる息苦しい年だったのではないかと思われます。私も「県外旅行は自粛」「バーベキュー禁止」など大好きな事が全くできない年でした。年末になってやっと行動制限が緩くなったとはいえ、肉眼では見えないウイルスがいつ自分の身に襲い掛かるかと思えば自粛せざるを得なく、忘・新年会は行わなかった企業や二次会は控えるなど各自で対策をとられた方も多いのではないでしょうか。

また、日本酒に限らず愛飲家の皆様の中には「外飲み」が減り「家飲み」が普段化し、家で飲む安心感からつい酒量が増えている方もおられると思います(笑)。その傾向はこの一年間に蔵から出荷されたお酒の商品構成見ても、多くを飲食店様にお届けしている一升瓶の量が減少している一方で、家の冷蔵庫に入るサイズの四合瓶商品の中には増加しているものもあり、家飲みスタイルが定着しているように推察されます。飲食店様の困難な状況を考えればただ喜ぶことはできないのですが、出荷量が伸びないこのコロナ禍において、直接お店で弊社の酒を選択購入してくださるお客様には感謝しかありません。

そんな状況で始まった今期の酒造りも三か月が過ぎ中盤を迎え、まもなく鑑評会出品酒の造りに入ります。昨年度は大吟醸鳥海が全国新酒鑑評会四年連続金賞受賞に加え、秋田県清酒品評会では三年連続の知事賞受賞。また、純米大吟醸天寿は東北清酒鑑評会で優等賞とインターナショナルサケチャレンジ2021において純米大吟醸の部では最高賞のトロフィー賞を受賞するなど、その他沢山の賞をいただきました。様々なコンテストにおいて受賞すればする程にもっと高い位置に登りたいという欲が出るもので、どうすれば自分達の酒が更に良くなるのかを常に考え、仲間と試行錯誤する毎日です。

私にとって数あるコンテストに出品を続けさせてもらえる事は全国の酒蔵から出品される商品の中で自社の酒の位置をいろんな観点から知ることができると共に、受賞すれば私達蔵人のモチベーションにも繋がる大事な意味を持ちます。受賞したから売れるとは思いませんが、お客様には是非購入時の指標の一つに入れていただければ有難いですし、そこから「美味しい・また買おう」と思っていただけることが何よりも私には最高の賞に値します。

残念なことに一昨年からコロナ禍の影響で製造量はやや減少しておりますが、その分仕込み一本一本に集中することができている良い面もあります。昨年末に発売したしぼりたて生酒四商品についてはフレッシュ感をできるだけ瓶内に残すことを目標に、上槽後二十四時間以内に瓶詰めすることで爽やかな炭酸ガスと華やかな香りを逃さない努力をしました。一緒に酒造りをする蔵人頭と、利き酒勉強中の総務課の後輩は初槽純吟生酒が美味しかったと言っておりました。まだ飲んでいない方は是非お試しください。

早く世の中が平穏を取り戻し、令和四年が皆様にとって酔い年になりますように。私も健康に気を付けながら美味しい酒を春まで造り続けます。今年もどうぞよろしくお願いいたします。

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20歳未満のアルコール類の購入や飲酒は法律で禁止されています。