襲名
代表取締役社長 七代目 大井永吉(旧名 建史)
このたび令和四年十一月一日 七代目永吉を襲名いたしましたことを謹んでご報告申し上げます
コロナ禍中の六代目死去から一年半が過ぎ 業界を取り巻く環境が一段と厳しさを増す折からその責務の重大さを痛感いたしております。
大井家では初代永吉が文政十三年(一八三〇年)八月十六日分家創業以来代々永吉を襲名して参りました。二代目は羽後町佐藤平治家から婿入りし由利本荘矢島の地に根付かせました。酒蔵に布団を持ち込み奮闘した三代目、山形県大山で修業し酒蔵三軒の酒造りを請け負った四代目、東京滝野川醸造試験場で研鑽し酒質を大幅に改善した五代目、長男戦死により突然跡取りとなり広島大醗酵工学部・滝野川醸造試験場を経て約一万石まで大きくした六代目と、代々酒造りを生業とし、地域と共にその発展を目指し様々な活動に積極的に参画して参りました。
私も当家仏壇横にある「積善の家に必ず余慶あり」を精神に地域活動に勤しみ、社長就任以来二十三年目六三歳となり、環境の激変の荒波にもまれながらも、「酒屋の出来る事は良い酒を造る事」「この地で出来る最高の酒を造る事」を目指し、天寿酒米研究会を拡大し、原料米全量を契約栽培米とし、酒造り全工程を見直し品質の向上を図って参りました。
二年前に三女の婿として八代目予定者も迎える事が出来、家を継ぐ事の手応えを感じられる事が何とも有り難く、希望と力が沸いて参ります。
つきましては一九三年目の酒造りを迎えた本年も、 弊社一丸となって、社業発展のためさらに専心努力いたす所存ですので、なお一層のご支援を賜りますようお願い申し上げます。
W受賞
杜氏 一関 陽介
嬉しいことがありました。令和四年度秋田県清酒品評会にて、「秋田県産米の部」「吟醸酒の部」両方の部門で優等賞を受賞することができました。吟醸酒の部では昨年まで三年連続で知事賞受賞、特に一昨年は首席をいただくなど、ここ数年は好成績が続いておりましたので優等賞だったことは少し残念ではありますが、秋田県産米の部においては杜氏就任十年目で悲願の初受賞となり感激しております。以前にも書いたことがありますが、県内の酒蔵の品評会出品酒のレベルは非常に高く、特に純米酒の技術は全国でもトップクラスだと思います。ですから私にとって入賞への門は遠くて狭いものでありましたが、ようやく辿り着くことができました。
秋田県産米の部の出品規格は「秋田県産米を使用した純米酒」であること。今回受賞したお酒は秋田県が独自に新しく開発した酒造好適米「百田」を使用した純米大吟醸酒で、現在弊社の商品ラインアップには無いお酒ですが、技術向上や他商品との比較を目的に試験醸造し続けてきたお酒です。出来上がったものは、現行スペックで造った出品酒と比較しても甲乙つけ難いものであった為、どちらを出品するのか非常に迷いましたが、社長から「良いと思った方で勝負したらどうだ?」という後押しをもらい、出品を決めました。
また「吟醸酒の部」では、今まで山田錦仕込みのいわゆるアル添大吟醸を出品酒として選んできましたが、三年前から同スペックでの純米仕込みに取り組んでおり、今年はその純米大吟醸酒で出品し入賞することができました。本当は一番になりたい私ですが、どちらも今まで取り組んできた成果が形となり、杜氏就任後初の県鑑評会二部門ダブル受賞は非常に感慨深いものがあります。
弊社では毎年試験醸造が様々あり、今まで話してきた鑑評会出品酒に限らず、仕込み方法の変更や新しい酵母菌を試してみるなど様々な事に取り組み、最良の酒を生みだす為のスキルアップをし続けています。
今期の酒造りも既に始まり順調に進んでおりますが、契約栽培農家さんが丹精込めて育てたお米を少しでも良いお酒にして皆様へ届ける為に、いただいた賞を糧に蔵人一丸となって頑張ります!