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蔵元通信

日頃お世話になっている皆様に、私ども天寿酒造が何を考え・守り・求め・挑戦しているのか、その思いをお伝えしご理解いただくために、「蔵元通信」を発行しています。
お酒はどのような狙いで造られたものなのか、季節や旬の食べ物に合うお酒、また飲み方、そして鳥海山の登山口であるこの矢島町の様子などをお届けいたします。

酒蔵の心意気
2002-01-01

酒蔵の心意気

代表取締役社長 大井建史

あけましておめでとうございます。

新体制となった弊社もお蔭様で三年目を迎えました。

この間の社会情勢の変化は大変激しく、それに伴い各業界や会社も、生き残りをかけてそのスピードを追い越そうと必死です。

弊社も、それに対応すべくこの天寿蔵元通信の発行や、様々なイベントを行う事で、私どもの「思い」をご理解頂きたいと努力して参りました。

また、昨年は更なる品質向上のため、壜貯蔵用冷蔵倉庫(一・八リットル×二万本)を完成させ、東京農大の中田久保教授による、撫子や日々草から分離した新酵母での醸造にも取り組み、「雪ごよみ」「天寿純米吟醸」「清澄辛口鳥海山」生貯蔵酒等の新製品を発売いたしました。

今年は、秋田県酒造組合で十年以上の年月をかけて開発し、山田錦以上の酒造好適米にと期待されている「秋田酒こまち」を県内で一番早く試験醸造しており、1月上旬には上槽致します。また、麹造りもさらに研究を重ね、一味向上した酒質になると期待しております。 吟醸ばかりでなく、純米や本醸造でも新商品をご提案させて頂く予定です。

私は、本来経済活動は挑戦する事だと思います。弊社の目指すところは「世界に通用する銘醸蔵」になる事。「お客様に感動を持って味わって頂けるお酒」を造る事。

現在一二八年目の酒造り真っ盛りの「天寿」は、その伝統を守りながらも、目標に向かって益々挑戦するべく、社員一丸となって進んで参ります。

本年もご愛顧の程、よろしくお願い致します。

「パッケージデザイン賞」受賞

おかげ様で、天寿の新商品、完全無農薬米仕込「純吟 天寿」が、第21回秋田県特産品開発コンクールにて「発明協会秋田県支部長賞」と「パッケージデザイン賞」を受賞致しました。

鳥海山の麓、生活廃水の一切入り込まない南向きの田んぼで、弊社自慢の「天寿酒米研究会」が、アイガモ無農薬農法で丹精こめて育てた、酒造好適米「美山錦」を一〇〇%使用いたしました。

箱やラベルに古紙と大豆インクを使用したエコ商品でもあります。 是非ご賞味ください!

蔵のページ

秋、田んぼから収穫された原料米は乾燥、選別され玄米の形で天寿の精米所に入ってきます。

天寿では美山錦栽培(酒米研究会)をはじめとする米作りも酒造りと位置づけていますが、文字通りの酒造りは精米から始まります。精米とは玄米の表面を、削り取って白米にする作業です。

玄米の表層部や胚芽には微生物の増殖や発酵を促進し過ぎる灰分やビタミン類が多く含まれています。又、香りや味、色択を悪くするタンパク質や脂肪分も多く、これらを取り除く為に精米します。

通常、我々が食する飯米は玄米重量の7%8%程度を削る軽微な精米ですが、酒造りに用いる白米はさらに削ります。これ以降は米の組織が固く脆い部分にさしかかるので割れや砕けをおこさない様に丁寧な操作が要求され、専用の精米機と時間が必要です。天寿の酒造りで使用される白米は目的とする酒種によって30%65%を削り連続で最大6昼夜もかかります。それ故、酒造りで精米する事を「米を磨く」とも呼びます。又、残った白米の重量割合を精米歩合と呼び、精米歩合が低いほど高度に精米された白米となり、米でんぷんの割合が高まります。

一般に精米歩合75%程度までは、精米が進むにしたがいタンパク質、脂肪、ビタミン等は少なくなっていきますが、これ以降はそれほど変化が無くなるので米の素質が問われる様になります。天寿が原料米の栽培にこだわる理由がここに有ります。田んぼでの育て方次第で基本となる酒質が左右されると言っても過言ではありません。

もう一つの鍵は米の品種です。最良の栽培方法を行ったとしても根本的な品種特性に勝るものはありません。この為、全国の鑑評会に出品される吟醸酒の大半が山田錦という品種を採用しているのが現状です。これは醸造特製の良さと何よりも仕上がった吟醸酒の香味の点でこれまで山田錦を越える米が無かったという事です。

そんな中、米どころ秋田の威信を懸けて長年開発を続け、今年本格的に試験醸造が行われる「秋田酒こまち」が開発されました。

その開発段階で「西の横綱が山田錦ならば東の横綱は秋田酒こまちである」と専門家をして言わしめ、数ある試験品種の中で初めて山田錦を越える米として期待されています。

天寿ではこの米を使用した吟醸酒仕込みを県内一番乗りで行いました。この酒蔵通信が届く頃、新しいお酒が生まれます。ご期待下さい。

製造課 佐藤俊二

蔵人の紹介

(こめや)

精米師 佐藤栄一(さとうえいいち)

酒造技能士 矢島町出身

昭和30年生 昭和51年入蔵 製麹せいきく、酒母しゅぼ、上槽じょうそう助手の頃から、吟醸酒用の精米時期になると必ず杜氏の指名を受け、精米を担当していた。

平成2年精米担当、平成11年、前任木村から精米主任を引き継ぐ。

精米師のコメント

原料米の受け入れ時点から米の目利きは始まっている。平成15年から農産物検査法に基づく玄米検査が完全民営化されることから、受け入れ側も確かな検査基準を持つことが必要となる。

今年は新しい米「秋田酒こまち」の精米も県内一番乗りということもあり、泊まり込みで杜氏の望む通りの白米に仕上げた。品質を追求するこの仕事に誇りを持っている。

128回目の酒造りが始まりました
2001-11-01

128回目の酒造りが始まりました

代表取締役社長 大井建史

秋の味覚本番の季節になりました。日本酒の美味しい季節です。秋田でも、稲刈りが終わり新米が食べられるようになり、秋の恵みによる様々な野菜や果物、そして山の幸・海の幸。あふれんばかりです。

世間のニュースは、暗い話ばかりで心が沈みがちですが、くよくよしても始まらない。こんなときは家族や友達みんなと一緒に、美味しいものを楽しみましょう。

お酒も、暑い夏を越えしっかりと熟成されて、今が飲み頃になりました。ピカピカの秋刀魚を焼いて、なめこや舞茸の酒蒸しにおろしをのせて、純米の燗酒を一杯。心やすらぐ瞬間です。

お酒をおいしく飲むには?とよく聞かれます。ポイントをまとめてお話させて頂きます。

●品質管理の良いお店で

日の当たる所にお酒を置いている様なお店は、お酒の知識が無いところです。常温でも三ヶ月位は品質変化が小さいですし、冷蔵庫に入っているところはそれ以上でも大丈夫です。日本酒は生酒を除いて、開栓せずに冷暗所にある限り、熟成は進みますが悪くはなりません。(お好みの酒質に成るかどうかは別ですが)

●飲む時の温度は

たとえば、大吟醸を飲むときに温度で味比べをされた事はありますか?10度・15度・20度と味わいがぜんぜん異なる事に気が付きます。一つのお酒で三倍楽しむ事が出来ます。お燗も同じ。人肌の40度・50度・60度は熱すぎませんか?外での熱燗の温度に慣らされてはいませんか?昔はお燗番として人ひとりを専門に置いたほど重要な事なのです。

●おいしく飲む為の酒器

昨年の七月号で、ワイングラスのリーデル社で大吟醸グラスを造った話をさせていただきましたが、吟醸などの香りのあるものは、ワイングラスが結構合います。(酸の少ない白ワイン用が良い)その他のお酒も、ぐい呑み型・朝顔型等色々ありますが、値段や素材よりも形と薄さが大きく影響するのです。味にうるさい人に薄い杯と厚い杯に同じお酒を入れて、いたずらしてみて下さい。必ず「薄いほうが断然美味しい」と言うはずです。

●吟醸・純米は燗してはいけない?

そんな事はありません。確かに香りの高い吟醸は燗には向きませんが、香りの少ない古酒系のものはぬる燗の良く合う物があります。純米・本醸造はお燗の合わないものの方が少ないのです。その発見が美味しさと楽しさをひろげてくれます。

天寿酒米研究会の米の出来は順調でした。(無農薬の10a当たりの収量は5.5俵と悪かったが)10月22日には蔵人もそろい、眠っていた蔵に活気が戻りました。今年も張り切って酒造りに励みます。12月の中旬にはしぼりたて生酒も出荷出来る予定です。ご期待ください。

蔵のページ

10月11日、蔵に新米の美山錦が入庫しました。いよいよ今年の酒造りが始まります。

今年の美山錦の作柄は上々です。極端な干ばつ、低温等の変動要因がありませんでしたし、台風の影響も受けませんでした。(前号でのお祈りが通じた為?)只、全般的に気温が高めに推移した為か、収穫期が平年より1週間程早まった感があります。「地球温暖化」と云う言葉が思い浮かびますが、自然を相手にしているだけに説得力があります。

原料米が順調であるとつい油断をしがちですが、この様な年ほど身を引き締めながら酒造りに向かわなければなりません。何故ならば、酒造りの技そのものが酒質に現れる年となるからです。とりわけ昨年以上の酒質を目指す為、課題は山積となります。例えば、香り高く華やかな酒をより澄んだ形にするには?。丸くなめらかな質を求める酒に、よりふくらみを持たせるには?。又その両方を重ね持つ酒には、さらに後味の余韻を付加する為にはどうするのか?。これら思い当たる点に一つずつ工夫を加え、向上を目指していくのです。

天寿では「酒造りは米作りから」を理念として酒造りを行っています。私も他人まかせの米作りではなく、自ら米作りに関わって「天寿酒米研究会」の一員となっています。栽培過程が明らかな良質原料米の安定供給が酒質向上の大前提であると考えます。

そして大切なことは、これら私共の行動をお客様へお伝えし、共感される内容でなければならないと言うことです。その為一年を通じて酒蔵見学を受け入れています。冬は酒造りを、夏は酒蔵と田んぼとをです。

今年の秋、田んぼにお客様がお見えになりました。歓声をあげながらの稲刈りを通じて、手にした稲穂の一粒ひとつぶから天寿の酒が生まれることを体験していただきました。※写真上

今年はこの米を使用して仕込むものを含め、109本の仕込みを行います。

その1本1本に工夫と情熱を込めて醸します。新酒の仕上がりを楽しみにお待ち下さい。

製造課係長 佐藤俊二

蔵人の紹介

頭(かしら)高橋重美(たかはししげみ)

昭和19年生 昭和38年入蔵以来麹造りを専任。麹の品質に徹底的にこだわる典型的職人肌。既成概念に囚れず、常に製麹方法の向上を目指す。酒造技能士一級 山内村出身。

疑問に思った事は納得するまで没頭する。以前、機械からの軽微な感電を経験し電気回路に興味を持った。この時以来電気トラブルにはテスターを片手に原因を探し出す特技を持つ。自作で麹品温監視機まで作製する。息子さんの名は「幸司」(こうじ)。こだわりの人である。

頭のコメント

新しい手法は取り入れながらも、伝統のある天寿の味を変えることなく酒造りを続けていきたい。

挑戦する企業を目指して
2001-09-01

挑戦する企業を目指して

代表取締役社長 大井建史

先日、酒造組合を通じて、今流行の小泉純一郎氏揮毫の『国酒』という、色紙が届きました。実は歴代の首相がお書きになり、私共に届くようになっているようです。一説にはこれは誤字で正しくは「酷酒」と書くと言う説も有りますが…

清酒の販売量は25年以上減少し続けていますが、特に、ワインブーム・焼酎ブーム・スーパードライ・発泡酒と影響を受け、この56年の減少には大変厳しいものが有ります。もちろんグローバル化により、世界中のアルコール飲料が益々入って来ている訳ですが、私達も生き残りをかけて、日本の食文化の一翼を担うものとして、誇りを持って努力しております。しかし、国産アルコール飲料で、輸入原料を使用していないのは日本酒だけだと言う事はご存知ですか。しかも原料米価格は国際価格の810倍で世界一高価なのです。又、どの国でもその国固有の酒、所謂「国酒」(イギリスのスコッチウイスキーやフランスのワイン等)は、その国では酒税が一番安いのですが、日本の場合何故かワインの方が安いのです。おまけに消費税がありますので、米税・酒税・消費税のトリプルタックスだと思ってしまいます。(昔サッチャーがスコッチの売り込みをした時は、日本のウイスキーの税が下がり、焼酎の税が上がったのもその影響だとご存知ですか。何故かついでに日本酒の税も上げられましたが)又、「国酒」と一国の首相が言っていながら、国賓を迎えての晩餐会になると、ワインを使うのはどうしてでしょう。ワイン購入には国家予算が随分使われる様ですが、外務省は昔から首相の言う事を聞かなかったのでしょうか・・・。

我々は自由競争と言われながら原料高のハンデを背負い、保護されていると言われながら税は高く、消費量激減の中で必死にがんばっているのに、テポドンを発射した北朝鮮にポンと差上げた米の代金は、清酒業界の一年分の酒税に匹敵するものでありました。全く気前の良いお人もいたものだ。

挑戦します。米からこだわって作って行きます。一つひとつを見詰め直し、この地で出来る最高を目指します。蔵開放・やしま駅の市 酒蔵の市・水源探索・天寿を楽しむ会等皆様に楽しんで頂く為にイベントを致します。何を目指しているのかご理解いただき、親しみを持って頂く為に酒蔵通信を出し続けます。そして何よりも、ご愛飲頂いている皆様に誇りを持ってお勧めでき「美味しい!!」と言って頂く事を最大の目標とし、力の限り挑戦し続けます。

蔵のページ

田圃・収穫の秋に向けて

お盆前の8月上旬は、一面緑に被われた田圃が出穂により劇的に変化する時期です。

田植え後、すくすくと伸びた美山錦の稲は十分に分けつ(茎が増えること)し、稲株としての姿を呈して来ています。その茎の一つひとつを良く観察すると、丸々と太った中に幼穂が育っています。満を持していよいよ出穂です。この時、必要十分な水を与えることが出来るか否かが、お米作りのひとつのポイントでもあります。

今年は各地で雨が少なく、一部で取水制限も話題に上りましたが、矢島町は天然のダム、町のシンボルである鳥海山に抱かれているため、水不足の心配はありません。今なお、中腹には万年雪を抱え佇んでいます。

鳥海山の豊かな自然の恵みは、時として意外な一面も見せます。

無農薬田のフェンスの中で一生懸命泳ぎ回るアイガモ達に、今年は異変が起きました。何者かがフェンスを破り侵入し、アイガモ達の一部が餌食にされました。それも一度や二度ではありません。フェンスが破壊される度に補強し、最後には有刺鉄線まで張り巡らせ、彼らを守る努力をしました。

犯人は野生の動物です。水を恐れず、網をくぐり抜ける事ができるキツネの仕業でした。

出そろった稲穂が実り、頭を垂れ無事収穫される事を信じ、「台風よ、来ないでくれ!」と願うのは私だけでは無いでしょう。

製造課 佐藤俊二

蔵人の紹介

杜氏 村上嘉夫(むらかみよしお)

昭和19年生 平成3年杜氏就任以来、全国新酒鑑評会 金賞3回、銀賞5回を受賞。秋田流・花酵母AK‐1の特徴を十分に活かした吟醸酒造りを実践。

昭和40年全国青年会相撲大会個人二位の成績を修めたスポーツマン。力強く強靱な肉体と同じく酒も相当に強い・・・。料理にも探求心が強く、特製の馬肉料理は天寿の隠れた名物である。最近はIT革命の影響を受け?、パソコン操作に興味を持つ現代的杜氏。

杜氏のコメント

酒造りは子供を育てる事と似ている。素直に醸したもろみが必ずしも狙い通りの酒になるとは限らない。思い通りにはなかなか育たないものだ。だからこそ奥深さをしみじみ感じている。

さけの話
2001-07-01

さけの話

代表取締役社長 大井建史

酒の話と申しましても、造り方とか味わいの話ではありません。なぜ「さけ」と日本では言うのかという話です。ご存知の方がいらしたらごめんなさい。私自身はつい先日聞いたばかりの話です。

古事記や日本書紀より昔、日本に漢字が伝わる前の事になります。それ以前は日本には文字がありませんでした。慶応大学人文学の西岡先生のお話ですが、日本人はモンゴル・中国・ポリネシア・アイヌ等北方民族・アメリカインディアン等色々な人種の雑種だとのこと。調べるとそれぞれの民族の特徴が出ており、神話にも各地と同じような話があるようです。

ところで、歴史上人間が集まると、すぐ神様が出来るようです。日本でも、仏教や漢字伝来前の神を「さがみ」または「さのかみ」と言っていたそうです。今でも新潟から山形・秋田では山の神を実際にその様に言っているとの事? さの神=しゃの神=さい(才)の神。ハハナルホド。

このように、古代語?に類する言葉に漢字を当てていますので、ひらがなで考えるとかえって解かり易くなります。ここまでで思いつくことはありませんでしたか?相模の国は神の国と言う意味になるようです(さつま・とさ)。さか(坂)とは神のおりてくるところ。さかいは神と人間のいる所を分ける境。さいわい=さに祝ってもらう・さち=さの神に千も集まってほしい・さつき=さの神に降りてほしい時・さなぶり=さぬぶり=さのぼり(神の帰るとき)・さおとめがさなえを植える。その他にも、さばき・さかずき・さかき・さとり・さかえる・さまよう・さみだれ等色々ありました。さらに、さくらはさの居るくら=神の座と言うところだそうで桜の花が咲くのを見てお酒を飲みたくなるのは日本人だけ(日本人の証拠?)。それはさけと言うのは神(さ)への一番のおみやげ(け)と言う意味だからとのことでした。へ~

全国新酒品評会で入賞

去る五月三十日に全国新酒品評会の一般公開がありました。平成9年の金賞以来、毎年入賞する事が出来、大変うれしく思いました。

前にも一度品評会について少し書かせて頂いた事がありましたが、出品酒を一生懸命醸す事の重要な点は、半年間の酒造りの間に、杜氏の持つ尺度の最高の出品酒醸造のために、本人は勿論、蔵人全員が一丸となり、すべてにおいて今現在の最高を必死に造ろうとする、その目的と緊張感がベテランの蔵人の、さらなる技術向上と気合充実につながるからです。現在の入選酒のタイプが、味わう時に本当に良い物なのか、又入選する為のブレンド出品等、色々物議をかもしておりますが、その様な中でも、天寿らしく頑なに醸し続け、一つの達成感を得る事が出来る貴重な機会であるからこそ、杜氏を始めとする蔵人達と共に、嬉しく思うのです。

蔵のページ

無農薬田について

5月の半ばを過ぎる頃、「天寿」のお膝元、矢島の地では田植えが盛んに行われ、健やかに伸びた美山錦の苗達も無事デビューを果たしました。

これに先立ち、田起、代掻きといった農作業が行われ、乾いた田んぼが満々と水を張った水田となります。今年は春先の天候が良すぎるぐらいで、代掻きには例年よりも多くの水を必要とした程です。

又、この頃、いつもの年のように空と海からのお客さんがやって来ました。トンビ、ムクドリ、ウミネコなどの鳥たちの事ですが、今年は何故かカラスの集団も出没しました。鳥たちの目当ては、土の中から掘り出された虫達(ミミズ、カエル、オケラ等)です。特に代掻き直後にはオケラが追い出されて水面に浮く為、鳥たちの格好の餌食となります。鳥たちは、この餌を求めてトラクターに乗っている私の周りを常に旋回したり、間近で待っています。鋭い眼力を放つウミネコなどは、あまり近くを飛ばれると少々恐怖感を覚えます。

5月20日、無農薬田を管理していただいている、天寿酒米研究会会員、佐藤近美氏も美山錦の田植えを行いました。今後、水管理のし易さが雑草の繁茂を左右するため、前作業の代掻きは念入りに行われていました。一見どの田んぼも平らに見えますが、田んぼには少なからず高低差が有ります。田んぼに水を張ることにより、高いところは水面から露出し雑草が生えやすくなります。逆に低い所は水が深く、苗が水没してしまい、窒息又は藻に囲まれてしまいます。代掻き作業は、単に田んぼの土を捏なすばかりでなく、田んぼ全体を水平に修正出来る、一年の中で唯一の機会なのです。

通常栽培の場合、代掻き後と田植え後に除草剤を散布して雑草の繁茂を防ぎます。しかし、この無農薬田には除草剤や殺虫剤等の農薬は一切使用しませんから、田植え後2週間を経過した今、雑草が顔を覗かせてきました。雑草は生え始めるともの凄いスピードで成長し、すぐに稲を追い越しますので除草のタイミングとしては今頃が適期です。除草方法は人間の手でむしり取る方法で行われて来ましたが、それは筆舌に尽くしがたい重労働です。その除草作業の手助けをしてくれるのがアイガモ達です。田んぼの中を掻き回る事で、雑草の繁茂を防いでくれます。

これから田んぼにフェンスを張りアイガモ達を放す訳ですが、このフェンスは逃亡を防ぐだけではなく、外敵から守る為でもあるのです。アイガモを田んぼに放つとすぐに、上空にはタカが旋回し始めます。アイガモ達が溺れない事を祈りつつ、美山錦が成長し、アイガモ達が身を隠せるようになるまで心労は絶えることがありません。

製造課 佐藤俊二

127回目の酒造りを終えて
2001-05-01

127回目の酒造りを終えて

代表取締役社長 大井建史

前号をお送りした頃から、急に春めいてきました。気温が少し上がると、蔵の周りの雪が急速に融け始め、屋根の雪が雨だれとなって軒下の雪を溶かし、窓から光が入り始めます。この頃には雪室氷温貯蔵用の雪を確保する為、雪を高く積み上げシートを掛けておきます。空にも明るい青空が続くようになると、北国にも春がきた事を実感します。

3月24日には甑倒し(こしきだおし・蒸し米作業の終了の事)4月15日には皆造(かいぞう・酒造り全作業が終了する事)となり、良い酒を無事造り終えられた事を神に感謝し、全社員でお祝いを致しました。

前号でご案内させて頂きました、「大吟醸鳥海しぼりたてにごり生酒」は如何でしたでしょうか?お陰様で予定本数を完売する事が出来、そのうち何人かの方にお褒めを頂き大変嬉しく思っております。また、品切れでお送り出来なかった皆様には大変申し訳ございませんでした。

現在、五月のイベントで記念発売する雪室貯蔵純米生酒や生酒以外のお酒は、火入れ(第一回熱殺菌・ 醗酵を停止させ熟成を促す)の真っ盛りです。この号が着く頃には蔵人も家に帰り、田植えの準備で忙しい時を過ごしている事でしょう。

酒蔵は静かな熟成の

時を迎えました。

麹の造り方を変えた大吟醸・純米酒、新酵母ND‐4・NI‐2で醸したお酒等、今年の進路決定は総て終わりました。後は熟成の環境作り以外できる事はありません。待望の冷蔵倉庫も完成し、大量のびん貯蔵も可能になりました。

今後は、タンク一本一本について、どの子がどんな育ち方をしてくれるか、親ばか話?をさせて頂きたいと思っています。

五月三日はイベントです。

さて、昨年初めての試みで地域共創イベント「やしま駅の市・酒蔵の市」を開催してから、早一年が過ぎました。今年もまた、駅前活性化実行委員会のメンバーと力を合わせ、楽しい一日を過ごして頂けるイベントにしようと、張り切って企画を出し合っております。

皆様と直接お会いできる大切な機会です。社員全員、どうやって日本酒をご理解いただき、天寿に親しみを持って頂こうかと一生懸命です。是非、声をかけて頂き、色々なご意見や質問などをぶつけて見て下さい。上手くお応え出来るかはさておき、私共の精一杯の「思い」をお伝えできる事と思います。

五月三日の「やしま駅の市・酒蔵の市」へ是非お出かけ下さい。

蔵のページ

酒造りが終わり

そして始まる。

4月に入ると今年の酒造りは終盤を迎えます。昨年よりも仕込み本数で17本多い119本目のもろみを搾り上げると皆造となります。

今年の造りは特に純米酒の仕込みが増えました。又、純米吟醸酒「雪ごよみ」もおかげさまで当初計画より2本多い仕込みとなりました。お客様の「美味しいお酒を楽しみたい」という声の高まりと、酒蔵開放を始めとするイベントやこの酒蔵通信を通じて、「蔵には今、こんなに美味しい酒があります」という発信が、直接伝わった結果でもあると考えています。

お客様の生の声が励みになったせいか、村上杜氏も、いつもの年にもまして目を光らせていました。出来上がった純米酒は、ふくらみとキレのある天寿らしい仕上がりと成っており、自信を持ってお薦めできるものとなりました。氷温熟成の雪室酒もその仕上がりが楽しみです。

さて、皆造が近づくと、蔵では今年使用した道具類の手入れと後かたづけを始めます。その後、新酒の殺菌と熟成促進を兼ねた火入れ作業が最盛期を迎えます。そしてこれが終了すると蔵は秋まで眠りにつきます。今年の酒造りが終了するのです。

しかし、実はすでに来年の酒造りは始まっています。酒造りは米作りから始まるのです。4月はもう次年度の原料米を育てる準備の月なのです。

一日の仕事を終えた蔵人は、自宅に戻ると農家の顔に戻り、これからの種蒔き準備に余念がありません。

初めに種籾を水に浸け十分に吸水させます。美山錦は他の品種と比べて発芽率があまり良く無いため、水温と日数を種蒔き日に合わせて調整しています。そして今、苗を育てる培土の調整を行っている処です。

「苗作り八作」と昔から呼ばれます。育苗は米作りの8割を占めるという意味です。従って培土の調整は苗の善し悪しを左右する第一の関門です。昨年の苗の状況を脳裏に浮かべながら肥料の配合を検討し、土に馴染ませ、種まきのタイミングを見計らっています。

4月中旬には種蒔きが始まり、約1ヶ月の育苗期間を経て、健全な苗だけが田んぼにデビューし、来年度の酒造りに使用される美山錦となります。

自ら育てた美山錦を蔵に持ち込んでより良い酒造りをするという事は、1年の最初の仕事として、品質向上を目指した米作りから始まると言う事です。「天寿」の蔵人は酒造りのプロであり、米作りのプロでもあります。

その年の気候や稲の成長過程を知りつくし、原料米に合わせた酒造りを行える蔵人は天寿の誇りです。

酒造りも終盤に・・・・・
2001-03-01

酒造りも終盤に・・・・・

代表取締役社長 大井建史

今年の雪は、北陸や山形のニュースにも関わらず例年並だと申し上げていたのですが、ドカ雪(集中的な大雪)こそ在りませんでしたが毎日のように降り続き、気が付くと蔵が壊れないように皆で一生懸命雪下ろしや雪よせをしておりました。お陰で蔵はすっかり〝かまくら〞状態になり、外気温に関係なく低温で安定し酒造りに適した状態にはなりました。

そんな三月初旬、大吟醸「鳥海の雫」を筆頭に純米吟醸・大吟醸等上級酒の搾りが相次ぎ、全力疾走しながらもその出来具合に息を潜め、頭の中もぶんぶんヒートさせながら、ホッとしたり、ニンマリしたり、顔をしかめたりしながらも、充実した時を過ごしました。

天寿では毎年目的を持って色々な試験醸造をいたします。その中の新酵母への取り組みとして、今年は私の恩師である現在東京農大短期大学部の中田久保教授から頂いた、花(撫子・日々草)から分離した二つの酵母で6本仕込みました。その中から誕生した一つが純米吟醸「雪ごよみ」です。全体に非常に面白いものが出来ましたが、続くものをどのような商品にするべきか検討中です。今だけ屋企画で出させて頂きたいと思いますので、その際には皆様のご意見・ご感想を是非お寄せ下さい。

さて、今年も2月3日に蔵開放イベントを開催いたしました。昨年は午後1時からとした所、700名を超えるお客様が短時間に集中してしまいご迷惑をおかけした反省から、午前10時の開場、会場も分散したレイアウトにして当日を迎えました。ところが、JRの秋田〜本荘間が止まってしまう程の凄まじい寒波が襲い、社員全員大変心配致しました。しかし、開始早々からお客様が見えられ、それも集中することなく良い流れでゆっくりと、最終的に600名を超えるお客様にお楽しみいただくことが出来ました。築百七十年を超える座敷で、今年もお茶席を準備させていただきましたが、はす向かいの「原田栄泉堂」の息子さんが和菓子の修行をして帰られたのでご協力頂き、又ひとつ趣を加える事が出来ましたし、お祖母さんから引き継いだばかりで奮闘している仁賀保の「ダイマル五十嵐商店」さんのハタハタ寿司や鳥海町の新特産品にと頑張っている百宅そばの「ももや」さん等のご協力を得ながら盛会裏に終える事が出来ました。誠に有難うございました。

天寿酒造では、皆様とのつながりを大切に、私の酒・私の蔵と思っていただけるようこれからも精進して参ります。今年はタンクが潰れない様工夫をした上で、雪室貯蔵酒を封印し氷温熟成させており、5月3日地域共創イベント「やしま 駅の市・酒蔵の市」を開催し封印を解く予定ですので、是非ご期待ください。

蔵のページ

1月から3月にかけては酒造りのピークです。寒造りと称されるように、一年の中で最も厳寒期を選んで吟醸酒や純米酒等の上級酒を仕込みます。

酒造りは、外部から雑菌の侵入が無い閉鎖された空間で行われる訳ではありません。空気中には常に雑菌が浮遊していますし、仕込み水、米麹も特に殺菌されていません。

この様に雑菌の侵入が容易な状態で発酵が行われることを開放発酵といいます。

では、酒造りの際、雑菌に侵され発酵が失敗することがあるのでしょうか。答えはNoです。何故なら、酒母に含まれる乳酸の雑菌抑止作用や、三段仕込みの手法が雑菌のつけ入るすきを与えないからです。

この事に加え、寒の時期は気温と湿度が下がり、降り積もる大量の雪は空気中のチリや埃を押さえ込み、菌学的に一年で最も清澄な時期になります。また、その雪が蔵をかまくら状態にし、気温の変動を最小限に抑えて品温管理を容易にしてくれます。

もちろん、蔵の中や道具類は全て清潔でなければなりません。仕込みに使用する道具類は、使用するたびに釜で煮沸消毒しています。

日本酒の醸造の大きな特徴は、糖化とアルコール発酵が仕込みタンクの中で同時に進行する独特の発酵形式を持つ事です(併行複発酵)。ご存じのように清酒の原料は米、米麹、水です。米はデンプンの固まりです。酵母菌は糖分が無いと発酵できません。そこで米麹が蒸米に作用してデンプンを分解し、ブドウ糖に変化させてくれます(糖化)。蔵開放でお飲み頂いた一〇〇%米麹の、あの甘酒を思い出して頂けばお解かりになると思います。次に、酵母菌がそのブドウ糖を食べてアルコールや華やかな香りに変化させてくれるのです(アルコール発酵)。

この様に酒造りは麹菌と酵母菌という2種類の微生物を巧く利用して、糖化を追いかけるようにアルコール発酵が併行に進行し、醸造酒の中で最高の20度までアルコールを出す事が可能です。この事でも世界の醸造酒の中で最も高度な醸造技術であると言えるのです。

さて、2月3日酒蔵開放の際には大寒波の中、大勢のお客様にご来場頂きありがとうございました。私ども6名の蔵人が案内役を務め酒造りの行程を説明させていただきましたが、いかがだったでしょうか。酒蔵開放の目玉は酒造りを間近で体感できることだと思います。天寿では毎日1本(1升びんで約3000本位)の〝もろみ〞を仕込んでいますので、もろみの日々の変化が非常に分かり易くなっています。今日仕込んだもろみが次の日どの様に変化しているかは隣のタンクを覗くことで理解できるのです。

言葉では上手く説明できませんが興味を持たれた方は是非蔵に足を運んで下さい。きっとその日々の変化に感動し、お酒への興味が湧くことは間違いありません。私もその一人なのです。

製造課係長 佐藤俊二

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