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蔵元通信

日頃お世話になっている皆様に、私ども天寿酒造が何を考え・守り・求め・挑戦しているのか、その思いをお伝えしご理解いただくために、「蔵元通信」を発行しています。
お酒はどのような狙いで造られたものなのか、季節や旬の食べ物に合うお酒、また飲み方、そして鳥海山の登山口であるこの矢島町の様子などをお届けいたします。

金賞を受賞しました
2003-07-01

金賞を受賞しました

代表取締役社長 大井建史

お陰様で、本年度全国新酒鑑評会で金賞を受賞いたしました。

これまでもお伝えして参りましたが、若い新杜氏の下で、酒造りの工程を一つひとつ見直し、良かれと思う方向に改善して参りました。杜氏も勇気のいる事でしたし、蔵人も創意と工夫を発揮し、大変良い雰囲気で推移しておりましたが、この様な良い結果を得る事が出来、一同励みがついたところです。

もちろん、これで全てが良かったと言うことでは有りませんし、方向が間違いなかったという結論を得た訳でもありません。しかし、弊社の鑑評会出品酒はブレンドを致しませんので、模索の中で一つの光が差してきた事には間違いないと思います。

これも一重に、皆様方に暖かく見守って頂いたお陰と、心から感謝申し上げます。

農大花酵母研究会

6月12日に農大花酵母研究会の設立総会と発表試飲会が行われ、私が初代会長に就任いたしました。これまでも、弊社の商品を通じてご案内して参りましたが、この酵母は東京農大短期大学部酒類学研究室の中田久保教授が、長年の研究の結果自然界から新しい清酒酵母の分離方法を確立され、優良清酒酵母を次々と分離しております。花から酵母を分離しているのは、花の蜜に糖分があるため酵母が集まりやすいからです。(果物にはワイン酵母が多いようですが)花酵母と言うと花の香や特徴があるように聞こえ、色物的な印象を持つ方もあるようですが、そのような事は全く無いのです。これまで、個性化をより促進する為、各県の工業試験場等で精力的に開発された新酵母には、既存の酵母の変異種が多いのですが、中田先生の酵母は天然の新種の清酒酵母なのです。

昔は、家付き酵母と言われる蔵の中にいる酵母が生モト酒母に自然に落ちてくるのを醗酵させましたが、野生酵母も多く、大正時代に腐造が大発生し、沢山の酒蔵が倒産しました。これの防止策として優良蔵から優良酵母を純粋分離したものが、現在の協会酵母です。これにより、野生酵母の繁殖を防止し腐造を防げ大変大きな成果をあげましたが、少数の酵母を広く全国で使用するようになり、個性が弱くなった一因とも考えられます。

酵母は、アルコール発酵の主役の微生物ですが、清酒では特に酸の生成に大きく寄与し、その性質が清酒の個性を形成する微生物なのです。中田先生は、「非常に大変な時代だが、まずお前たちが造り酒屋としてがんばれ!」と教え子たちにのみご好意で酵母を無料で分けてくれました。これまでの配布酵母とは違った味・香を持つ天然酵母ですので、使いこなすまでにはまだ時間がかかるかも知れませんが、先生のご好意を最大限に有効活用させて頂く為、研究会を立ち上げ会員全体の品質向上を図り、他の酒類と比べても負けない、個性のある高品質の清酒を醸していきたいと思います。

おかげさまで平成15年度全国新酒鑑評会金賞受賞 蔵の歴史

来期に向けて

杜氏 佐藤俊二

間もなく平成14酒造年度が終了します。一般的によく用いられる暦年(1月12月)や会計年度(4月〜翌年3月)を用いると造りの途中で年度が変わってしまう不具合が生じるため、酒造業界では7月〜翌年6月を酒造年度として使用しています。

本酒造年度も押し迫った5月、多くの蔵元が今年度の出来映えの確認と、その技術向上を目指して製造技術研究会(いわゆる全国の一般公開 於 広島県)へ集まりました。きき酒により自社の酒質の現状と動向を掴み、来期へ向けて新たな設計図を描く為に不可欠な事です。本年度の造りに関しては、蒸し米のグレードアップによる酒質向上が目標でした。品質向上の鍵は原点に立ち返り、基本を磨くことと位置づけたからです。狙いは成功でした。これまでの「天寿」の味わいに透明感が加わったと確信しました。

この事を実現するために蔵の中では各工程の担当者が総力を注ぎました。例えば、割れにくい精米方法への取り組み、新たな浸漬方法への挑戦、蒸し方法の変更、新しい蒸し米冷却方法の発見等、数多くの事例が挙げられます。しかし、これらの成功には蔵人同士の職責をこえた自由な意見の応酬がありました。そしてこの中から湧き出たアイデアをすぐ「へばやるべ!」※1と実行したのでした。皆造(かいぞう)※2の日、社長と蔵人全員で課題を持って造った新酒をきき酒し、酒質の確認を行った上で今年の反省会を行いました。反省会は社長の前で今年の取り組みを説明、検証する場でも有りますから少なからぬ緊張感が走ります。

説明後、社長から「各担当者の努力はもとより、一つの目的に対して蔵人全員が一丸となって取り組んだことが好結果を引き出したと思われる。」と講評があり、今年の取り組みに対して蔵人一同に社長賞を頂きました。そして今回さらに「全国新酒鑑評会」で金賞を受賞出来たことを蔵人全員が喜んでいます。

大吟醸酒に限らず、一つひとつ今の「天寿の思い」を込めて醸しあげました。けれども我々蔵人にとって重要なことは、この今年の「天寿の思い」をお客様に味わって頂き、その声を来期の造りに反映させることなのです。出来上がった酒が天寿らしい質を持ち、それがお客様と共感できる味わいであることが何より素晴らしいことであり、天寿の目指している事なのです。蔵は今年の造りを終え、しばしの眠りについていますが、お客様からの生の声を率直に受け入れ、来期はより精度を高めた造りを実現したいと思っています。

※1「それじゃやってみよう」の意

※2酒造りが全て終わる事の意

今、桜が満開です
2003-05-01

今、桜が満開です

代表取締役社長 大井建史

鳥海山の麓、矢島町もようやく杉花粉が終わり、桜が満開になりました。四月七日には皆造(仕込みや搾りが全部終わる事)となり、蔵内では後片付けや機械器具のメンテナンス、火入れ作業が忙しく続けられております。今日は鳥海山の五合目から雪を運び、雪室の補修・化粧直しをしました。25日には蔵人が長い造りを全て終え家路につく予定です。

二月から四月にかけて、多くの新酒を楽しむ会がもようされ、私も参加させていただきましたが、新酒に対するご評価も色々と頂いており、いよいよ身の引き締まる思いがしております。天寿も然ることながら、すばらしいお酒が世の中にはたくさんある事に、今更ながら、さらなる向上心を掻き立てております。

そんな会のなかで、お酒の楽しみ方の話になりました。

お酒の楽しみ方…

①「私は日本酒に興味を持って日が浅いので、飲み比べの仕方がわからない」という方へ。

こんなにたくさんお酒があるのに、飲み比べで楽しまない手はありません。お酒を言葉で表現すると言う事は後回し。まず自分の好きなお酒を一つ準備します。最初はそれを基準にして他の酒と飲み比べましょう。それによって似たタイプのお酒でも違いが良くわかります。出来れば吟醸タイプに一つ、純米・本醸造タイプに一つの羅針盤になるお酒がほしいですね。天寿は食事の時にいろんな料理がある中で、必ず毎日食べられる「ご飯」のようなお酒になりたいと思っています。

②いつも冷蔵庫の温度でお酒を飲んでる方へ

なんてもったいない事でしょう。もちろん駄目だとは申しませんが、冷蔵庫は保存には良いのですが、810度では味や香りが広がりません。冷たすぎや熱すぎは厚化粧と同じで、本当の所が見えなくなります。(それが良い場合もあるでしょうが?)私は15度位から上だと思います。温度にちょっと気をつけると、一つのお酒で何種類ものおいしさが楽しめますよ。

③いつも酒屋さんでもらったビールのコップで飲まれる方へ

私は、20年前に帰ってきた時、某酒蔵の社長に「これ、どっちが良いかな」と、落としても割れないような厚いぐい飲みと、白磁の薄い盃のお酒を見せられました。「まったく…」と、少し緊張してききましたが、あっさりと確信を持って白磁の方を選びました。「同じ酒だよ」とうれしそうに言われてその時は「コンチキ…」と思いながらも、器による味の違いに、いたく感心した記憶が鮮明にあります。(基本的に薄い物が美味しく頂けます。)今は深く感謝しながら、うれしそうに「どっちが…」とやっている、いやな親父の自分を時々発見します。ですからリーデルの大吟醸グラスの開発に携わるのもすごく面白かった訳です。胴のふくらみや口にあたる角度の違いで、こんなに?と思うほど味や香りの感じ方が変るのです。吟醸用や吟香のない酒用・燗酒用と用途に合わせて、是非ご自分の「これで飲んだら美味しいグラス・盃」を見つけてください。

お得意様の声

頑張れ天寿!!

東急東横店 和洋酒 岡野高幸

『日本酒が売れない!売れてない!』と言う声を皆様よく耳にすると思いますが、そんな事は決してありません。少なくとも東急東横店フードショウ日本酒売場については過去五年間毎年10%以上の伸び率で売上を拡大してきました。日本酒不況の中、なぜ渋谷の東横店だけが日本酒の売上が伸びているのか?場所がいいのか?立地条件はどこの百貨店もいいはずです。では何だ?大きなポイントは二つ。一つは『魅力、商品力』、もう一つは『売る人、造る人の情熱』です。これは全ての小売業に言える事だと思います。

今、雑誌等で紹介されている日本酒だけが注目されがちな傾向があります。

これらの日本酒全てが商品力、魅力を備えていると言えるでしょうか?一部の人が評価する酒が本当にいい酒なのでしょうか?評論家の方々の意見は確かに重要かもしれませんが、日本酒の需要を支えているのは一般消費者なのだと言う事を忘れてはなりません。

3月に当店で試飲販売会を行いましたが、初回でありながら好成績を収めることが出来て安心致しました。特に純米吟醸「鳥海山」無濾過生原酒については非常に評判が良く、女性をはじめ若い客層に人気が有りました。ある飲食店の方が試飲されて気に入れられてその後、取引を開始した実績もあります。

大井社長をはじめ従業員皆様の酒に対する情熱がこの様な結果をもたらしたと思います。

蔵人の魂が酒に映し出されます。ですから人柄がよくなければいい酒は出来ません。

私の持論ではありますが、水の豊富な地域に住む方々は総じて人柄がいい人が多いと思います。天寿の近くには水が豊富にあります。天寿の酒はうまい、蔵の酒造りに対する姿勢もいい。

6月9日12日には「父の日」をターゲットとした試飲販売会、7月3日〜9日は御中元ギフトとしての試飲販売会を実施致しますので是非お立ち寄り下さい。日本酒好きのお父さん達に『天寿』をプレゼントすればきっと素敵な笑顔を見せてくれるでしょう!

聞こえますか?
2003-03-01

聞こえますか?

酒蔵の思い

代表取締役社長 大井建史

今年の甑こしき倒し(蒸米の終了=仕込みの終了)は三月十四日です。お蔭様でここまで様々な新しい取り組みをしながらも無事に過ごす事が出来ました。今年の最重点の取り組みは、麹の造り方を原点に帰ってやり直した事です。結果は上々で、酵素力価も予想以上で良い酒となり、呑み切りの結果を楽しみにしているところです。更に、新しい仕込みの純米と本醸造を仕上げましたので、どうぞご期待下さい。

この造り期間中にも、同業者・流通業・飲食業・一般と沢山の方々が酒蔵の見学に来られました。私共も天寿の酒造りをご理解頂く為、心を込めて説明させて頂きました。その中で気になりましたのが、ベルトコンベアーやホースを見て「随分機械化されてますね」とおっしゃる一般の方が、意外に多かった事です。良く聞いてみますと「手造りの酒屋」のイメージは藍染めの半天と前掛けをした蔵人が、甑から蒸米を掘り出し、その蒸米を木桶に入れ、肩に担いで走って運ばなければならない様です。大手のメーカーがイメージ戦略でお使いの映像を、小さい酒蔵の手造りイメージにされるのは尤もの事とは思いますが、すべて自動化され、プログラムとセンサーにまかせきりで醸造し、搾られるのでは無いのです。機械のセンサー任せになったら造り酒屋はそれで終わりだと私は思います。今、手造りの最も重要な事は職人が目で見、香りを嗅ぎ、手で触り、口で味わう等の五感(センサー)を十分に働かせる事なのです。

それが肉体労働で疲れ果て、一本一本の酒母やもろみの状態を見る事がおろそかになる様ではとんでもありませんし、蔵人の労働環境としても良くありません(毎日2トンの蒸米を掘ったり、その蒸米を30キロ位に小分けにして肩に担いで何回も運ぶ事が貴方の毎日の仕事だとしたらどうですか?物を上げたり下げたり運んだりの肉体労働は、出来るだけ機械化して行く努力をするのも蔵元の仕事だと私は考えております。)

町の河川工事の為に弊社には土蔵が残っておらず、古さはありませんが、蔵にご訪問頂いた際に少し耳を澄ませてくだされば、天寿の酒蔵の「思い」をお伝え出来るものと思います。

そんな私共の「思い」をお伝えし、皆様に天寿の酒蔵にさらに親しみを感じて頂きたく、今年も二月九日に酒蔵開放をさせて頂きました。お蔭様で一,三〇〇名を超えるお客様をお迎えする事が出来ました。ご参加頂きました皆様に心から御礼申し上げます。又、今年は更に多くのボランティアの皆様にご協力頂きました。本当にありがとうございました。

しかし、反省点が多々ありました。事前にお申し込み頂いたのは三〇〇名弱で人数の予測が付けられず、更にお昼直前にお客様が集中した為、蔵内が満員状態になり、ご案内した食べ物も昨年より随分増やしましたがすべて品切れしてしまいました。楽しみにして来て頂いたお客様には、誠に申し訳なくお詫び申し上げます。冬場の事で外も使えず、限られたスペースと人数での運営ですので、今後の解決策に苦慮しているところでございます。社員一同、皆様からのアドバイスを切望しております。是非ご意見をお寄せ下さい。

蔵のページ

精米師(こめや)から釜師(かまや)へ

精米によって磨かれた白米は通常2週間程、紙袋に入れたまま白米置き場で静置されます。これは、精米工程で摩擦熱により米粒の品温が上昇し水分が蒸散され、表層部と内部に水分含量のムラが生じる為、品温を下げ、米粒内の水分が均衡するまで待つのが目的です。(この事を白米の枯らしと呼んでいます)枯らしを行わずに水洗いをすると表層側が過吸水し、白米が割れてしまい軟弱な蒸し米になってしまいます。これは通常我々が食する飯米にもあてはまります。巷では新米、擦きたてのお米が美味しいとされていますが、軟らかすぎて炊き方が難しいと思った経験はありませんか?

そして、適度に枯らした白米が精米師から釜師へと引き継がれます。

釜場は白米を酒造りに適した蒸し米に仕上げる場所であり、蔵の仕事の中心です。ここでの責任者が釜師(かまや)です。

酒造りの極意として、「一、麹、二、もと(酒母)三、造り」という言葉が有名ですが、高名な杜氏さん達が揃って口にする極意は「一、蒸し、二、蒸し、三、蒸し」という言葉です。前述の極意を達成するためには何を於いても良い蒸し米を得ることが絶対条件である事を指しています。

釜師は最良の蒸し米を得る為、手早く米粒に付着した糠分を洗い取り、どの位白米に吸水させるかを推し量ります。酒造好適米程、又、高度に精米される程、吸水し易く、浸漬時間が短縮されます。特に大吟醸用の白米を洗米するときは秒単位での処理となります。そして、仕込一本の原料米は非常に高価なので、毎回が失敗の出来ない真剣勝負となるのです。

こうして適度に吸水させた白米を蒸し上げ、出来映えを手で握り、或いは指で押し伸ばしながら、蒸し米の弾力や米粒が均一に広がり粒が残らないように確認し、わずかな差違を見きわめ、翌日の蒸し米へとフィードバックされるのです。

製造課 佐藤俊二

蔵人の紹介

(かまや)

釜師 佐藤 直千代(さとう なおちよ)

昭和22年生 昭和53年入蔵以来一貫して釜を担当。掘り出した蒸し米で「ヒネリモチ」を造り、出来具合を確かめ、微妙な硬軟を見分ける。

酒造技能士一級 矢島町

入蔵前、航空自衛隊に所属。特技の卓球は航空自衛隊千歳大会で優勝する程の腕前。蔵での機敏な動作はこの時に培われたと思われる。出身は隣町の由利町であるが柔和な性格を見初められ佐藤家に婿入り。この事が天寿酒造入社のきっかけになる。

釜師のコメント

酒造りは一つひとつの行程が最高の状態で次行程へと渡す事が出来るようにする事が重要だ。常に次の人が最善を尽くせる様に思いやる酒造りはチームワークに尽きる。

今、桜が満開です(編集中)
2003-03-01

今、桜が満開です

代表取締役社長 大井建史

2月15日の酒蔵開放には、お陰様で一,二〇〇名を超える方々にご参加いただきました。本当にありがとうございました。

少しづつではありますが、新企画や改善を行っているつもりですが、如何でしたでしょうか。中には「もっとジックリ酒造りを見てみたい・やってみたい」「一部の体験だけではなく、全工程の体験をしてみたい」などのご意見もあるようです。天寿だけの企画では人数を集める事が難しいですが、熱いご要望があるのでしたら、三十人位の「じっくり酒蔵見学・きき酒懇親会付」とか「酒仕込みを自分たちで行って飲む会」などできるのですが…。(そうすると二十人集まれば一人一・八リットルで約40本?ちょっと多いかな?でも、しぼりたて・夏の生酒・ひやおろし・冬の熟成酒というように、一本の仕込みで四つの味を楽しめるかと…。)

甑倒し

今年は3月14日が甑倒し(米の蒸しが終わり仕込みの終了を指す)です。弊社にとって129回目、佐藤新杜氏にとっては初めての仕込みが終わります。本当に色々有りました。色々やりました。しかし、結果は皆様に飲んで頂いた時に初めて出てきます。皆様の声を受け、検討し、次の酒造りに向かうのです。ですから今は、天寿新時代の始まりでしかありません。これから造り上げて行くのです。

天寿では「感動を持って味わって頂ける酒造り」を目指しておりますが、それは、どんな酒でしょう?世界中からアルコール飲料が雪崩れ込んでおり、ワインブームがあり、焼酎ブームがあり、その多様な嗜好品の中で飲まれる量が激減している清酒の中、天寿を好みとして飲んで頂けるには?経済状況が悪化し、低価格な物にどんどん流れていく中で、世界で一番高価な米を使用して醸す清酒、その中で天寿を指名して頂く為には?

深い混沌の中でもみくしゃになりながらも、思いを実現するためには、「原点に立つ」事しかありませんでした。蔵での造りの見直しも全て「原点・基本」の忠実な実現です。今売れている酒質を真似ても意味は無く、雑誌で珍重がられる家族で造る500石の蔵になることも出来ません。しかし、造りの一本一本を精米歩合とは関係なく、芸術品のように心血を注いでいく事は出来ます。

「原点」とは本当に厳しいものだと思います。目指して初めてその厳しい現実にぶつかります。目指して初めてその高さに気が付きます。結果は全て酒に現れるものだと実感します。造る者の「姿勢」と「思い」がそのまま現れるのです。(恐ろしい事に…

今年の酒が今の天寿です。まだまだ努力が足りないとは思いますが、「思い」は沢山つまっています。

一人でも多くの方にお楽しみ頂ければ幸いです。

蔵のページ

天寿気質

杜氏 佐藤俊二

「ええ酒(良い酒)造りたい」。毎年造り前に思っていますが、杜氏一年目の今年は尚一層その思いが強く、又、責任の重さに緊張感を持って臨みました。

酒造りは、精米、釜、麹、酒母、もろみ、槽(ふね)全ての工程で最善を尽くします。

蔵人は職人(プロ)ですから良いものを目指せば目指す程、どの様に最善を尽くすかを真剣に考えます。その為、酒種毎の何をどの様に向上させるのか?明確な目標を提示し、各担当が理解した上で一丸となって取り組むことが重要です。曖昧な指示など出来ませんでした。

一般的に、仕事にこだわりがあると自分の職責にのみ固執する場合が有りますが、「天寿」の蔵には柔軟性が有ります。

酒造りの一日に各工程の仕事の繁閑は存在します。その時、蔵の中では互いに時間を融通し他工程へ出かけます。そこで気づいたことや行き詰まった事など、職責を超えて気軽に話し合える雰囲気があるのです。

今年、秋田県立大生二名がインターンシップ研修で蔵を訪れ、一週間寝食を共にしました。吟醸酒の搾りを含め、普段通りの仕事をいつものように行い、彼らの希望もあって特別扱いは一切有りませんでした。実習の感想文に「各工程で香りを嗅いだり手で触ったり直接ふれることで勉強になった(中略)本当にチームワークの良い蔵だと思った。その良さが酒に表現されていると思う。改めて人間関係の大切さを実感させられた(後略)」とあり、最大級の褒め言葉を頂いた感がありました。学生に仕事を教えた蔵人共々喜びを分かち合いました。

この様に天寿の蔵人は単に働きに来るのではなく、皆でええ酒を造り、互いに教え合うという気構えを伝統的に持っています。これは天寿の杜氏代々の賜です。私も蔵人と同じ仕事をし、天寿気質を身に付けてきました。

間もなく造りも終盤です。出来上がった酒が「天寿」の蔵を想像させる「ええ酒」であることを願ってやみません。

社員の紹介

総務課

佐藤 玲子(さとう れいこ)

昭和?年十月九日生れ

天寿の窓口である総務課の大ベテランです。女性陣のリーダーとして、チーフを務める、んめものや・イベント等に先頭に立ってアイデアの捻出に余念がない。いつも明るく若々しい声で応対しています。天寿にお電話頂いた方はきっと話をしていらっしゃると思います。

玲子の独り言

まだまだ若い?人達には負けてられないわ!。

お客様が「何をお求めか」「どうしたら一番喜んでいただけるか」を考えて頑張れば、厳しい時代ではありますがきっと女神が微笑んでくれると思っています。お電話をお待ちしております。

大吟醸新酒の香が蔵内に
2003-01-01

大吟醸新酒の香が蔵内に

代表取締役社長 大井建史

新年おめでとうございます。

この冬は、早い時期にドカ雪が降ったり、その後雨が続いたりと、根雪になるのは早かったのですが、中々安定した寒さにならず、11月から装着したスタッドレスタイヤが、随分減ってしまいました。

そんな中でも、この正月は寒波の中で迎えました。楽しみにしていた年賀状を眺めながら、「あれっ?」私の名前の建史はパソコンの辞書に載って無いので健史と良く間違われますが、なんとパソコン出力の半分以上がこの間違いでした。「なんだお前さんもか・・」と親しい友人の年賀状を眺めながらがっかりしてしまいました。ふっと弊社の名簿は大丈夫かと考え、落ち着かない状態になっております。良く見ると中には苗字のみの名簿もあり汗顔の至りでありました。自分の名前を間違われる事は本当に不愉快なものです。失礼を省みず申し上げます。是非名簿の不備なものはご指摘ください。すぐに対処致したく、よろしくお願い申し上げます。

前置きが長くなりましたが、1月6日から美山錦大吟醸の上槽が始まりました。これにつきましては、杜氏からの説明もありますが、精米後の調湿・洗米・浸漬・蒸し・放冷と原料処理のやり方を全て変えました。経験的な蒸米の見方をすると、非常に良くなったと思います。

麹造りの温度経過も、もっとキレイなふくらみにしようと変えました。が、全ての結果は搾った大吟醸に出ます。

新杜氏はめずらしく同じ話を繰り返し報告し「経過は順調なんですが…香がおとなしくて…アミノ酸が何時もより低くて…」とぶつぶつ。「そうだなぁ。」と私。「胃の調子が…」と杜氏。原料処理の提案や改善で「これは社長賞出さなきゃいけませんね!」と蔵人と一緒に元気一杯の時とは別人のようです。「大吟醸は思うとおりにやれと言った。結果は杜氏の責任。責任を持つとはそう言う事。」と偉そうに私。(そして、その最終責任は俺だぞ!こっちだって具合が悪くなりそうだよ…)そんな時に「味は良くなって来たが、香がおとなしいなぁ。粕と共に去りぬにならないだろうな。」と会長の一言。「グッ…」と二人。

そんな中でドキドキしながら、見守り・搾った佐藤俊二杜氏作「美山錦1号大吟醸」や翌日雫取りをしながら杜氏ニヤリの「秋田酒こまち大吟醸」前半の地元米大吟醸の搾りが続きます。

新しい試みがこれからの常識となるように、今年もよりご満足頂けるお酒造りに邁進致します。

本年もご愛顧の程よろしくお願い申し上げます。

蔵のページ

酒蔵は今...

杜氏 佐藤俊二

「和醸良酒」という言葉があります。これは、蔵人が自分の仕事を確実に仕上げ、各工程の役割を尊重し合い、皆が一丸となって取り組む事が良い酒を醸す秘訣である事と理解しています。

ところが、昔から『麹師(こうじや)と釜師(かまや)は仲が悪い』というのが酒造業界の隠れた定説でした。これは、毎日最良の蒸し米を麹師に渡したつもりの釜師に対して、麹師が「今日の蒸し米は柔らか過ぎる」とか、或いは「硬過ぎる」と注文をつけます。一方、釜師は「今日も昨日も水加減、火加減は同じだ。それなのに柔らかい?硬い?何故」と両者なりの主張が対立するわけです。

この様な麹師と釜師の意見の食い違いは、洗米前の白米水分が大きく影響します。同じように見えても、白米毎に微妙な水分差異は必ずあります。白米水分が少ないと洗米後、吸水量は多く、逆に白米水分が多いと吸水量は少なくなります。この事が、蒸し米が柔らかくなったり、硬くなったりの主な原因です。

今年の造りにあたっては、蒸し米のグレードアップを目標としました。品質向上の鍵は蒸し米に有るという基本を忠実に実践したかったのです。

今年度設備更新した精米所と調湿白米タンクは、水分の管理精度を高める事を可能にしました。併せて洗米方法を一から見直し、十分に濯げる様に改めました。そして、麹用蒸し米の冷却方法を新たに考案しました。これら品質向上に繋がるアイデアは全て蔵人同士の対話から生まれました。チョークで図を書きながら輪になって皆でアイデアを出し合い、良いと思われることは即実行してみたのです。

今日も釜師が蒸し米を手に取って仕上がりを確認しています。釜師と麹師の笑い声が響く「天寿」です。

蔵人の紹介

※もろみを搾り、新酒を生み出す道具を槽(ふね)と言います。この槽の担当を船頭と言います。天寿ではその責任者を船長と呼んでいます。

船長 豊島昭一(とよしましょういち)

昭和二十一年生 昭和六十年蔵入以来、槽担当。

矢島町出身 酒造技能士、林業士

物静かで、誠実な性格の豊島さんは、背中で仕事を語る典型的な「日本のお父さん」です。

こよなく山を愛し、二十年後、三十年後を見据えて木々を育てています。

船長のコメント

『搾りは酒造りの最終段階。皆が手をかけて醸したもろみを生かすも殺すも槽次第。特別な事は無い。やるべき事をキチンとやることが「ええ酒」造る事だと思うよ』と、申しておりました。脱帽

伝統に新しい 感性をプラスして…
2002-11-01

伝統に新しい 感性をプラスして…

代表取締役社長 大井建史

129回目の酒造り

今年の秋は駆け足で過ぎ去り、十月の下旬から今にも雪が降りそうな天気続きで、冬があっと言う間にそこまで来てしまったという感じです。

酒蔵では佐藤俊二新杜氏のもと、新しい体制での酒造りが始まりました。設備更新をした精米所では、半月前から試運転が始まり、サンプリングと微調整の繰り返しで、これまでよりもかなり偏平精米がやり易く、枯らし期間の調湿能力は抜群に向上しております。又、調整と今年の米の傾向が確定すると、大幅な省力化が可能になる予定なので、毎日期待にドキドキしながら立会っています。

残念ながら今年の米は七月〜八月のとてつもない長雨と低温の影響で、米質は良いとは言えません。抵抗を思い切り下げ、長時間かけてやさしくやさしく精米しても砕け易く、新精米機の性能比較がしづらくて困っています。

しかし、調湿白米タンクの機能は上々で、その後の洗米・浸漬等の原料処理の新しい試みは、今のところ、新杜氏のもくろみ通り、順調に推移しています。

今年も、絶対に一歩でも半歩でも品質の向上を図りたく、全力で取り組んでいるところです。

蔵元通信発刊四年目に

一九九九年私が社長に就任した11月に創刊以来、これまで号外を含めて19回発行し、今回が20回目となりました。

長い伝統と情熱を持って一生懸命酒造りに取り組んでいる私どもの「 思い」を、この秋田の片田舎から、皆様に熱くお伝えしご理解頂く為には…と社員だけで作成し、インクジェットプリンターで1000枚印刷したら、途中からキーキー音がしてきて…笑ってしまいますよね!その後は中古の輪転機で印刷していますが、写りが悪くて読みづらく申し訳ございません。この蔵元通信はホームページにも掲載されており、メールマガジンの配信もさせていただいております。(これも自社制作で、当然ですがカラーです。)

通信を郵送させていただいている方は、弊社から直接お酒を買って頂いた方・蔵見学に来られた方・イベントにご参加頂いた方・私を含む社員と名刺交換をさせて頂いた方です。今では6000人を超える方々に送られて頂いておりますが、稚拙な作りでもあり、何人の方々に読んで頂いているものか、かなり不安ではあります。(折り込み封入作業は社員総出で二日掛かります。メールマガジンでよろしい方は是非お申し出下さい。ご協力宜しくお願い致します。)

今、これこそが私どもの「思い」をお伝えする最善の術と、これからも皆で知恵をしぼりながら続けてまいりますので、益々のご指導・ご鞭撻のほどよろしくお願い申し上げます。

蔵のページ

杜氏就任にあたって

杜氏 佐藤俊二

前任の村上杜氏から天寿の酒造りを引き継ぎ、杜氏に就任いたしました。これまで村上杜氏と共に二人三脚で酒造りを行ってきたという自負が有りましたが、いざ酒造期に入り実務に直面している今、仕事量の多さに驚いています。

私の酒造りの実経験はさらに一代前の中野杜氏時代に遡ります。 酒母助手から始まりました。酒母の育成を通じて、米が溶ける、酵母菌が増えるという現象を目の当たりにし、酒造りの面白さ、好奇心が養われたと思っています。又、酵母菌の種類によって細やかに育成法を変えている点も発見でした。

しかし、酒母を担当して得た一番大きな収穫は「酒」に対して畏敬の念を持つことが出来た事だと思っています。これは、酒母助手数年の未熟な時期、酒母師が急病で長期療養が必要となり、酒母育成を責任持って行う様、中野杜氏に言い渡された時の事です。

指示通りの育成操作を行うのではなく、自ら判断しその時々に適切な操作を行う事の難しさを実感し、自分の仕上げた酒母がもろみで順調に発酵する様に祈りました。もし、自分の未熟さの為に失敗してしまったなら、全てがダメになってしまう。と、酒造りの怖さを知りました。それでも事故もなくその年の酒造期を終えられたのは、もちろん私の知らない内に杜氏やもろみ師が上手く調整してくれたためでした。

又、事ある度に「酒見ろ!」と出品酒やろ過した酒を利き酒させてもらいながら「どれえ?(どの酒が良い?の意)」と訓練を積ませてもらいました。杜氏は口癖に「ええ酒lこしぇねばダメなもんだ(よい酒を造らなければダメだ。の意)」と説き、その事は蔵日人全てに浸透し、又、蔵人の誇り、気質でもありました。

中野杜氏から村上杜氏へ天寿の酒造りに対する姿勢は迷うことなく引き継がれ、そして今期から私も蔵人も共々、より「ええ酒」を目指して造りに入ります。今後とも美酒天寿をよろしくお願いいたします。

蔵人の紹介

杜氏 佐藤俊二(さとうしゅんじ)

矢島町出身 昭和三十九年生、

昭和六十一年 東京農大卒業

同年入社

平成五年 二級技能士試験合格

平成十一年 一級技能士試験合格

平成十二年 杜氏試験合格

村上杜氏の下で杜氏補佐を経て

平成十四年 杜氏就任

学生自体はスピード狂でオートバイレースで活躍。

急死に一生の大怪我にも懲りず、郷里に帰っても、レーシングカート(競技用ゴーカート)に熱中していた。

生来の人柄の良さ(?)に加え、仕事に向かえば時間も忘れトコトン追求。若いながら信頼も厚く今年の酒の出来栄えが楽しみだ。

(蔵人 談)

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