挑戦する企業を目指して
代表取締役社長 大井建史
先日、酒造組合を通じて、今流行の小泉純一郎氏揮毫の『国酒』という、色紙が届きました。実は歴代の首相がお書きになり、私共に届くようになっているようです。一説にはこれは誤字で正しくは「酷酒」と書くと言う説も有りますが…
清酒の販売量は25年以上減少し続けていますが、特に、ワインブーム・焼酎ブーム・スーパードライ・発泡酒と影響を受け、この56年の減少には大変厳しいものが有ります。もちろんグローバル化により、世界中のアルコール飲料が益々入って来ている訳ですが、私達も生き残りをかけて、日本の食文化の一翼を担うものとして、誇りを持って努力しております。しかし、国産アルコール飲料で、輸入原料を使用していないのは日本酒だけだと言う事はご存知ですか。しかも原料米価格は国際価格の810倍で世界一高価なのです。又、どの国でもその国固有の酒、所謂「国酒」(イギリスのスコッチウイスキーやフランスのワイン等)は、その国では酒税が一番安いのですが、日本の場合何故かワインの方が安いのです。おまけに消費税がありますので、米税・酒税・消費税のトリプルタックスだと思ってしまいます。(昔サッチャーがスコッチの売り込みをした時は、日本のウイスキーの税が下がり、焼酎の税が上がったのもその影響だとご存知ですか。何故かついでに日本酒の税も上げられましたが)又、「国酒」と一国の首相が言っていながら、国賓を迎えての晩餐会になると、ワインを使うのはどうしてでしょう。ワイン購入には国家予算が随分使われる様ですが、外務省は昔から首相の言う事を聞かなかったのでしょうか・・・。
我々は自由競争と言われながら原料高のハンデを背負い、保護されていると言われながら税は高く、消費量激減の中で必死にがんばっているのに、テポドンを発射した北朝鮮にポンと差上げた米の代金は、清酒業界の一年分の酒税に匹敵するものでありました。全く気前の良いお人もいたものだ。
挑戦します。米からこだわって作って行きます。一つひとつを見詰め直し、この地で出来る最高を目指します。蔵開放・やしま駅の市 酒蔵の市・水源探索・天寿を楽しむ会等皆様に楽しんで頂く為にイベントを致します。何を目指しているのかご理解いただき、親しみを持って頂く為に酒蔵通信を出し続けます。そして何よりも、ご愛飲頂いている皆様に誇りを持ってお勧めでき「美味しい!!」と言って頂く事を最大の目標とし、力の限り挑戦し続けます。
蔵のページ
田圃・収穫の秋に向けて
お盆前の8月上旬は、一面緑に被われた田圃が出穂により劇的に変化する時期です。
田植え後、すくすくと伸びた美山錦の稲は十分に分けつ(茎が増えること)し、稲株としての姿を呈して来ています。その茎の一つひとつを良く観察すると、丸々と太った中に幼穂が育っています。満を持していよいよ出穂です。この時、必要十分な水を与えることが出来るか否かが、お米作りのひとつのポイントでもあります。
今年は各地で雨が少なく、一部で取水制限も話題に上りましたが、矢島町は天然のダム、町のシンボルである鳥海山に抱かれているため、水不足の心配はありません。今なお、中腹には万年雪を抱え佇んでいます。
鳥海山の豊かな自然の恵みは、時として意外な一面も見せます。
無農薬田のフェンスの中で一生懸命泳ぎ回るアイガモ達に、今年は異変が起きました。何者かがフェンスを破り侵入し、アイガモ達の一部が餌食にされました。それも一度や二度ではありません。フェンスが破壊される度に補強し、最後には有刺鉄線まで張り巡らせ、彼らを守る努力をしました。
犯人は野生の動物です。水を恐れず、網をくぐり抜ける事ができるキツネの仕業でした。
出そろった稲穂が実り、頭を垂れ無事収穫される事を信じ、「台風よ、来ないでくれ!」と願うのは私だけでは無いでしょう。
製造課 佐藤俊二
蔵人の紹介
杜氏 村上嘉夫(むらかみよしお)
昭和19年生 平成3年杜氏就任以来、全国新酒鑑評会 金賞3回、銀賞5回を受賞。秋田流・花酵母AK‐1の特徴を十分に活かした吟醸酒造りを実践。
昭和40年全国青年会相撲大会個人二位の成績を修めたスポーツマン。力強く強靱な肉体と同じく酒も相当に強い・・・。料理にも探求心が強く、特製の馬肉料理は天寿の隠れた名物である。最近はIT革命の影響を受け?、パソコン操作に興味を持つ現代的杜氏。
杜氏のコメント
酒造りは子供を育てる事と似ている。素直に醸したもろみが必ずしも狙い通りの酒になるとは限らない。思い通りにはなかなか育たないものだ。だからこそ奥深さをしみじみ感じている。