会社のアンチエイジング
代表取締役社長 大井建史
秋田も梅雨入りをしましたが、今年も異常気象で田植え後日照時間が少なく低温、かと思うと平年より7度も高い天気が続いたりと、出穂前の農家には厳しい判断と迅速な行動が求められる状態です。
この度秋田県とトヨタ自動車東日本株式会社様の共催で県内企業の指導企画があり、弊社では5月から5S活動を中心とした改善活動を開始いたしました。
トヨタ自動車東日本株式会社様は東日本大震災以来地域への貢献を目指し、相互研鑽活動と称して共に活動しながら問題点を探し、共に解決の為の活動をするという形で、私共の会社の土俵に降り肩を並べて進めて頂ける、本当に身になる形のご支援を頂いております。
思い起こせば、私が社長になりたての頃、焼酎ブーム・ワインブームのあおりを受け、日本酒の消費状況が激減期で会社の存亡をかけての改革に挑まざるをえませんでした。同時期に廃業した製材所の債務も抱えメンタル的にも大変厳しい時期でしたが、未だ到底及びませんが曾祖母の「垂涎の的となる酒を造れ」との教えに向かう事。解雇をせずに適正人数になるまで耐える事。給料制度の改変。人事制度の変更。能力給制度の導入。製造方法の研究・改変。農大花酵母の研究・導入。1.8L3千円以内でどこまで良い酒が出来るかへの挑戦・新商品開発・5Sなど、コンサルタントも導入しながら必死に駆けずり回りました。
改革は一人ではできるはずもなく、右腕・左腕と必死に力を合わせ、また、社員全員がやめる事もなく協力してくれたのだと、今つくづく思います。
瓶詰ラインが老朽化し、コロナ前に計画を練っておりましたが、コロナ禍やウクライナ戦争等で見積もりが狂い売り上げも変わり、計画が二転三転しております。
コロナ禍で近年経験した事のない地球全体が非常時となる中、高度成長期以来なかった品不足、この日本でこんなに急に物が作れない様な事に成ると誰が想像したでしょう?
創業以来193年目に突入を前に、次代を担う社員たちが、自ら考え自分の仕事に対する姿勢を正し、能動的に会社の総点検をトヨタ自動車東日本株式会社様のご指導の下進められる事に心から感謝申し上げます。
さて、今年パリで開催された日本酒のコンテスト 「クラマスター2022」で「生酛仕込純米酒鳥海山」が生酛の部でトップの審査員賞を受賞いたしました。5部門のトップのみパリで発表される表彰式に招待されました。国内出張も控えてきた中パリまでの出張は腰が引けましたが、1.000点以上の出品酒のトップ5の蔵として参加して参ります。更に授賞式では、最高賞となる「プレジデント賞」が発表されます。乞うご期待です。
楽しさを見出す
杜氏 一関 陽介
八月九日に山形県の酒造業界の若手の皆様を対象に講演させていただく機会をいただきました。私が入社した時の気持ちや、今現在杜氏として仕事ができていることの喜びの話、会社の方針や目指す酒の事、自分達が取り組んでいる事など、二時間に亘り話をさせていただきました。秋田県内では講演の経験はあったものの、他県では初めての経験でしたので慣れない場所でもあり非常に緊張いたしましたが、なんとか務めることができたように思います。若輩ながらこの数年、講師依頼をいただくことがあり、我ながら少しずつ要領を得てスムーズに人前で話ができるようになったように感じています。
どんなに経験年数が長くなろうが生涯勉強中の身であると思いながらも、杜氏歴も十年を超えてきますとただ人の話を聞いているだけではダメで、自分が経験してきたことを業界の為、次世代の方々の為に伝えていくことも必要になってくるのでしょう。
私は人前で話をすることに緊張しますし、極度の責任感から毎回物凄い覚悟の上で臨みます。また、自分の語彙力に自信がないので、相手に伝わらないのではないかという恐怖感が抜けません。それでも最近は、話が上手でなくても気持ちが相手に伝わると、有難いことにそれを聞いた相手が更にいろいろな話をしてくれるという楽しさも感じることができるようになりました。
相手が何を聞きたいのか、どう話したら分かりやすいのか。また相手に問うことも内容に必要な気がします。そんなことを考えていると、復習になるのと共に、自分に今足りない事が見えてきたりします。相手に伝えようと努力することが実は自分の為になっていることにようやく気が付きました。
話す内容が一番大切ではあるのですが、伝わらなければ意味がないので、最近は如何に伝えるかに重点を置いて話をするように心がけています。これは何も講演に限ったことではなくて、お客様へのお酒の説明であったり、酒造りの現場での指示や連絡、相談においても同じで、自分の発言における相手の理解度が深いほど仕事の質や効率にも影響しているように実感します。表に出るより、黙々と作業する事の方が好きな私ですが、苦手だと思っていてもいざやってみると上手にできなくても勉強になる事がきっとまだあるので、酒造りに支障がない範囲でいろんなことにチャレンジしてみたいと思います。
まもなく収穫の秋を迎えます。八月は大雨にみまわれるなど天候に恵まれず、弊社酒米研究会の原料米の質も心配されるところです。自然には勝てませんが、研究会メンバーそれぞれの努力で良質の米が一か月後に蔵に入って来ることを願い、それを万全の態勢で受け入れられるように社員一丸準備をしていきたいと思います。